第86話 再会の……



 カタン。カタカタ……。

 やっぱり音がする!


 僕はぽよちゃんを抱きしめて、あとずさる。

 ヤダよ? それじゃなくても、少ない仲間の一人が火の玉なのに、これ以上、オバケキャラなんかいらないよ?


 キョロキョロすると、アレだ。室内に置かれた細長いタンスがかすかにゆれている。ウツボ兵士が寝るにしては変な場所。


 だけど、このままほっとくと、うしろから追いかけられるかもしれない。

 勇気だ。ここは勇気を出して……。


 そっと近づいて、僕はタンスの扉に手をかける。

 あ、あけるぞ。あける。

 オバケなんて、この世にいないんだからね。だ、大丈夫だ。いたとしても今のところ僕が呪われる覚えはない。

 あれ? まさか、グレートマッドドクターの霊か? ブタブタ言って怒らせたから? なら、謝るよぉー! オバケはイヤ!


「い、行くぞ」


 勇気をふりしぼって、扉をあける——


「ギャー! 出たー! オバケー!」


 全身黒いオバケだ。怖い! デカイ! ムダにデカイ!


「しィーッ。しッ。さわぐと敵が来るだろ。しィーッ」

「オバケが僕を説得しようとするよぉ! ぽよちゃん!」

「キュイ?」

「静かにしろって。かーくん。あいかわらず怖がりだなぁ」


 ん? オバケが僕の名前を呼んだぞ。それに、どっかで聞いたことある声だ。


「…………」


 チロリとタンスのなかを見なおす。黒く見えたのは、着てる服が黒だからだ。全身黒ずくめだなんて悪趣味だなぁ。


 でも、フードの下にあるのは——


「ああッ! 猛だ。兄ちゃーん!」


 兄のハンサムな顔がニカニカ笑いながら、こっちを見てる。

 オバケじゃなかった。生き別れのわが兄だ。


「猛ぅー。ひさしぶり。元気だった?」

「ああ。なんか、また夢の世界に来てしまったな」

「そうなんだよ。猛はなんで、こんなとこにいるの?」

「ちょっとな。四天王のことを調べてるんだけど、どうも気になることがあって……」

「ふうん?」


 猛はそれ以上、僕に教えてくれる気はないようだった。黙りこんで思案したのち、急に笑った。


「それより、かーくんこそ、どうしたんだ? これ、ゴドバの船だぞ」

「だよね。でも、ゴドバは乗ってないと思うんだけど」

「へえ?」


 僕はゴドバが片腕を切り落とされて、どこかへ逃亡したことを告げた。エレキテルから子どもたちがさらわれたことも。


「——ってわけだから、子どもたちを助けに行くとこなんだよね」

「じゃあ、兄ちゃんもいっしょに行ってやろうか?」

「えっ? いいの?」

「ああ。ヤドリギがいたころは、おれにもずっと監視がついてたけどな。アイツがいなくなってから、わりと自由に動けるんだよな」

「わ〜い」


 やったー。猛が仲間だ〜

 今度こそステータス、見れるかな?


 さっそく、のぞいてみた。

 うん。見れるぞ。


 猛のレベルは50。

 職業は竜王。


「ええーっ? 竜王って何? そんな職業あるの? 棋士きしじゃないよね?」

「棋士なわけないだろ。竜系のモンスター職を三種類マスターしたらなれるんだ。竜王になると、HPと力と体力に30%のプラス補正がかかる」

「30%プラスってスゴイね」


 モンスター職か。

 そういえば、僕、レッドドラゴンと火竜の魂持ってるな。あと一種類あれば竜王になれる。

 さてさて、肝心の猛の数値はっと。


 レベル50(竜王)

 HP13261『12520』[19228](24996)、MP2803『2558』[3223]、力5644『5139』[7337](9538)、体力4148『3748』[6014](7818)、知力3750『3400』[4312]、素早さ4692『4317』[4926]、器用さ4511『4207』、幸運3360『3257』


 な、なんじゃこりゃー!

 みなさーん、ここに化け物がいますよぉー!(前にも同じこと言った)

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