第81話 グレートマッドドクターの最期



 チャラララッチャチャ〜!

 グレートマッドドクターを倒した。ガーゴイルA、Bを倒した。経験値5700を手に入れた。2500円を手に入れた。

 グレートマッドドクターは宝箱を落とした。



「…………」

「…………」

「な、何? なんでみんな、僕を見るの?」

「また『かぱっ』て言うのかなぁって」

「もう言わないよ!」

「そう? それならいいんですけど」



 もういいですか?

 テロップ流しますよ?



「えっ? 誰?」

「テロップが待ってくれてたみたいです」

「ごめん。テロップにまで気をつかわせて」



 いえいえ。では続けます。

 宝箱にはオークの紋章2が入っていた。オークの紋章2を手に入れた。

 ガーゴイルA、Bは宝箱を落とした。ガーゴイルの羽を手に入れた。



 ガーゴイルの羽は合成素材みたいだ。合成すると器用さ数値をあげられるみたい。

 数値はスマホさえなおれば、いくらでも書きかえられるんで、できたら『羽ばたき』が使えるようになるガーゴイルの魂が欲しかったなぁ。職業特性で仲間を自動で守るのも便利だし。そしたら、バランにガーゴイル職をおぼえてもらうのに。



 …………。



 ん? なんか、テロップが悩んでる?



 ……ガーゴイルAは『ガーゴイルの魂』を落とした。ガーゴイルの魂を手に入れた。



 テロップが去っていく気配。

 今さ。絶対、最後の魂、つけたしたよね? まあ、ありがたいんだけど?


「わ〜い。勝った。バランにすぐガーゴイル職についてもらおうよ。前に合成した無職のツボあるから、アレに魂を入れたら職業のツボになるよね」

「そうですね。あとでマーダー神殿に行きましょう。ところでオークの紋章ってなんでしょう?」


 僕はアイテム欄で確認した。


 オークの紋章2

 装備中、オークに変身できる。


「いらない!」


 そこそこ苦戦して手に入れたのに、オークに化けることができるだけのアイテムか。


「あっ、ちょっと待って。かーくん。オークに化けることができるってことは、化けてるあいだ、オーク職につけるんじゃ? もしそうなら、死毒の霧おぼえられますよ?」

「そうか」


 たしかに一回の攻撃で敵全体のHPを1にできる技は強力。しかも敵のターンに移った瞬間に毒のダメージで全滅に追いこむって、やっぱり極悪非道な技だ。


「オークになってるあいだ、姿がブタになったりして」

「うッ……」


 蘭さんは黙りこんだ。

 強力な技をおぼえるか、ブタになるか、究極の二択だ。


「そ、それより、早く子どもたちを助けましょう。制限時間が迫っています」

「そうだね」


 子どもたちは僕らより長いあいだ捕まってる。この洞穴のなかに隠されていたなら、命に危険がおよぶ可能性も……。


 すると、グレートマッドドクターがヨロヨロしながら口をひらいた。


「ふん……お、愚か者めが。子どもたちはとっくに、港に…………お、オーク族に栄えあれ! ブヒーッ!」


 叫ぶとグレートマッドドクターは立ちあがり、猛毒を煮つめたナベに突進した。


「あっ、何するんですかっ?」

「わあっ、やめろよぉ!」


 僕らの言うことなんて聞いてない。グレートマッドドクターは大ナベにタックルして、盛大に中身をぶちまけた。あたり一帯、すさまじい毒の匂いで満ちる。


「ブッヒッ……ヒッ。人間どもに……悲惨な末路を……」


 ああッ、自分でまいた毒かぶって死んだ! ヤバイやつじゃないかー!


「これじゃ、街の人たちが全員……」

「水神さまと水守も危ないよ」

「ど、どげすう?」


 うろたえる僕らに、ホムラ先生が告げる。


「ロラン。君の特技を使いなさい。虹のオーロラだ。勇者の気合で毒を浄化するのだ」

「でも、虹のオーロラは戦闘中しか使えないんじゃ……」

「迷ってるヒマはない。君にしか、街の人々を救うことはできないのだ!」

「わかりました」


 蘭さんが両手をあわせて祈ると、ピカーッとあたりが光って、毒の匂いが消え失せる。

 よかった。助かった。

 大事件が一瞬で解決したけど、僕らには時間がないんだ。よって、ここは、はしょらせてもらう。早く、さらわれた子どもたちを助けないと。


「さっき、グレートマッドドクターが、子どもたちは港にいるって言ったよね?」

「言いました。とっくに港に……って」

「大変だ! 外国につれだされる前に救出しないと」

「急ぎましょう」


 エレキテルに港があったっけ。ここから一番近い港だ。

 僕らは急いでエレキテルへむかった。

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