第14話 情報収集〜



 情報屋へ行った僕は、その人を見て思わず歓声をあげてしまった。


「ルベッカさん!」


 サンディアナの街で情報屋をしていた、男口調のカッコイイお姉さんだ。でも、髪の色が違う? ルベッカさんは赤毛だったのに、この人はピンクだ。紺色のミニスカポリスの制服がよく似合う。


「ルベッカはわたしの姉です。わたしはリベッカ」

「たしかシルバースターのギルドにもお姉さんのラベッカさんがいますよね?」

「よくご存じですね。わたしは三女です」


 うーん。リベッカさんは丁寧な言葉で、ルベッカさんたちとは、ちょっと印象が違うな。まあ、美人であることに変わりはないんだけど。いったい、何人姉妹がいるんだろう?


「あの、情報が欲しいんです」

「どんな情報ですか?」

「えーと、まず小さな情報で、この街にあるギルドが資金提供してる王立研究所っていうのは、どこにありますか?」

「五十円」


 そうだった。情報屋の情報はタダじゃないんだよな。地図を買って自分で調べてもよかったんだけど、僕はミャーコの背中に手をつっこんで五十円玉をとりだした。


「はい。これ」

「ありがとう。研究所はエレキテルの街の南東にあります。でも行くのなら、乗り物があったほうがいいですね。街を出たあと、少し遠いから」


 そうなんだ。街のなかにあるわけじゃないのか。馬車を呼びよせよう。


「ほかに聞きたいことはない?」と、リベッカさんが言うので、

「さっき、僕らが捕まえた列車強盗の話なんですが」

「あら、熱々のネタね」

「もう情報が入ってますか? ボスが逃げだしたんです。どこへ逃げたのか、行くさきが知りたいんですけど」

「…………」


 あれ? だまった。

 さては知らない情報だったか。まあ、そうだよね。ついさっきの話だ。僕らだって見当つかないのに。


「すいません。知りませんよね。ちょっと聞くのが早すぎました。明日にでも、また訪ねて——」


 すると、だ。リベッカさんはいきなり立ちあがり、カウンターの上にダン! と革靴をはいた足をのせる。

 ギャー。見える。見えるから。お姉さん、見えるからぁー!


「ハアッ? あたしを誰だと思ってんの? なめてんじゃないよ?」

「は、はい。すいませんです」


 ああ、やっぱり血は争えない。ルベッカさんにそっくりだ。かっ、カッコイイ。


「千円だよ」

「はい。千円!」


 千円は情報としては、なかなか高額。これは期待できる。


「じつはこのところ、エレキテルの街で誘拐や強盗が流行ってるんだよ。困ったことにね。車掌が見たっていう男の人相が、その強盗団のボスに似てる。だとすると、街を出て西に行ったところにあるカミナリ山の洞くつが怪しいね。盗賊団のアジトなんじゃないかってウワサがある」

「おおっ、さすが!」


 そうか。情報源は車掌さんか。熱々のホットニュースをありがとう。


「このくらい、わたしにかかれば大したことではありませんよ。ほかには何かありますか?」


 あっ、ご満悦のリベッカさんは、もとに戻った。見えそうで見えないミニスカから伸びた足が、カウンターの下にお行儀よくおろされる。


 ざんね……えっ? いや、違うよ? 残念とか言わないよ? ははは……。


「えーと、このへんで最近、謎のキャラバンを見たって話があるんですが、どこらへんで見たんでしょう?」

「百円」

「はい。百円」

「それなら街の北側ですね。貴族区の近くだそうです」

「貴族区……」


 なんだか、悪い予感がするなぁ。何事もなければいいけど。

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