第6話 トレインジャック戦1



 僕たちが武器をかまえると、目の前にテロップが流れる。



 野生の盗賊が現れた!

 野生の大盗賊が現れた!

 野生の戦士が現れた!

 野生の武闘家が現れた!



 へえ。みんな野生なんだ。

 テロップで『野生の』って出るのは、魔王軍の兵士じゃないっていう意味。

 そっか。ただの列車強盗か。魔王軍だったら裏に怪しい陰謀がからんでたかもしれないけど、まあ、その点は安心。あとぐされがない。

 でも、手間取ると機関車に走っていった連中が戻ってくるだろうから、早めにやっつけないとね。


「ああっ、なんかひさしぶりで緊張するぅ。じゃ、ぽよちゃん。いつもみたいに聞き耳してねぇ」

「キュイ〜」


 ウサギ型モンスターのぽよちゃん。ぽよぽよのぽよちゃん。可愛いなぁ。


 ぽよちゃんは白ぽよだ。長いお耳にハート形の黒いもようがある。その耳をピクピクさせて聞き耳を立てると、あ〜ら不思議だ。敵のステータスや特技、使えるマジックなんかを見ることができる。聞き耳なのに聞くんじゃないんだよね。見るんだよね。


 さて、見えたかなぁ?

 えーと、盗賊と大盗賊は基本、同じ職業だね。盗賊の上級職が大盗賊。

 レベルは盗賊が20で、大盗賊が25。行動パターンは通常攻撃、盗む……盗む? イヤな予感。


 ちなみに僕も盗賊はもうマスターしたんだよね。だけど、盗むって言っても、なんでも自由にドロボーできるわけじゃない。モンスターがドロップするアイテムを、通常攻撃したときに、まれに手に入れることがあるだけだ。それも戦闘が終わるまで盗めたかどうかわからない。


 けど、じゃあ、盗賊が敵になったとき、僕らから何をとってくんだろう?

 ドロップアイテム?

 僕のドロップアイテムって何?


 そういえば、これまで、まだ無敗なんだよなぁ。戦闘で負けたことない。でも、そうだ。全滅すると所持金の半額、モンスターにとられちゃうんだっけ。

 金か。お金なんだね?

 まあ、今は所持金一億しか持ってないからいっか。


 ……ん? 一億?

 ああーっ! そうだった。こっちの世界での僕はとんでもない大金持ちだったっけ。半額五千万か。五千万もとられるのヤダなぁ。気をつけないと。


 あと戦士は、まあ、ためるからの攻撃だよね。武闘家は回避率高めで素早くクリティカル。たまにカウンター。


 戦士も武闘家も盗賊も基本職だから、できることはたいてい想像がつく。


「よし。武闘家のカウンターがやっかいかな。それ以外はこれって攻撃はなさそう」

「ですね。じゃあ、武闘家は魔法で倒すことにしましょう」と、蘭さん。

「うん。僕が魔法使いだから、やるよ」

「じゃあ、お願いします」


 戦闘は素早さ順だ。

 とくに理由がないかぎり、パーティーの素早さ平均値の早いほうが先攻だ。当然、僕らがさきね。


 で、パーティーのなかで今一番早いのは、僕。

 蘭さんのほうが資質的には素早さ伸びるんだけど、なんと言ってもレベルがね。蘭さん、まだ28だから。


 と言うわけで、僕はいきなり火属性最強魔法を放つ。魔法使いなりたてのくせに、金に物を言わせて、すでに魔法の秘伝書でおぼえちゃったんだよな。


「燃えつきろ〜」


 マッチョなおじさんは燃えつきた。早かった。一瞬の出番だったね。ごめん。

 髪の毛アフロになって、おじさんは失神。


 残るおじさんは三人ね。

 僕はつまさきをパタパタ。風神のブーツについてる装備品魔法で素早さがガンガンあがってく。これは戦闘中、ブーツの底面が地面に接するたびに、素早さが上がるっていう神アイテムだ。


「ああ、どうしよう。まだまだ動けそう」

「ええ、かーくん。ひとりじめするつもりですか? ひさびさなんだから、僕にもやらせてくださいよ」

「わかった。しょうがないなぁ。じゃあ、やっていいよ」


 蘭さん、ニッコリ。

 笑顔はそりゃもう可愛いんだけどねぇ。

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