第2話 Sランクになっちゃった
冒険者ギルド。
名簿に登録された冒険者たちのために情報や武器防具など、必要なものをそろえ提供し、仕事を
ギルドはまだボイクド国にしかないんだけど、僕らはこのギルドの最初のSランク者なんだ〜
なぜかって? 前回の旅で、魔王の四天王の一匹(匹だよ、匹)を倒したからね。めちゃくちゃ卑怯でサイコなゲス魔物だったけど、なんとか僕らと王城の近衛騎士隊が力をあわせて完全勝利することができた。
その功績で、僕らのパーティーはSランクに!
「ふふふ。さっきの車掌さんの顔、見ましたか? 目玉がとびだしそうでしたね」
蘭さんが鈴をころがしたような声で笑う。
「そげだねぇ。なんてて、Sランクだけんね。初めて見るだない?」
あっ、これはアンドーくんだ。アンドーくんは奥出雲の松潤と言われるほどのさわやか美青年なんだけど、ものすっごく
「へへへ。見てよ。このゴールドパスナンバー。00000001だよ? 僕が最初の一人〜」
「よかったですね。かーくん」
「ロランがパーティーリーダーなのに、一番じゃなくてよかったの?」
「僕はみんながいてくれることが嬉しいんです。だから……」
はうッ。照れ笑いする蘭さんはどこから見ても絶世の美女!
でも、男なんだよなぁ。僕らのパーティーの慢性的女性不足は、いまだに解消されてない。いや、むしろ、スズランさんがいなくなったぶん、減少してる。
「みんなで旅するのひさしぶりだねぇ」
「そうですね。ヤドリギを倒してから、そろそろ一ヶ月ですからね」
僕にとっては一年ぶりなんだけど、蘭さんたちにはほんの一ヶ月ぶりだったようだ。やっぱり、蘭さんやアンドーくんは、まだここが夢の世界だと気づいてないみたい。
夢の世界って言うか、睡眠中の意識を召喚されて、異世界につれてこられるっていうか? そこらへんが僕もよくわからない。
さてと、改札をぬけて列車のなかへ入る。汽車は三両編成。一両めが人間を運ぶ客席。二両め、三両めは貨物用だ。汽車のチケットは高額なので、一般人にはなかなか乗れないからね。言っても五百円だけど、この世界では市民の平均月収くらいの価格に相当する。
なので、汽車の座席には、僕らのほか誰も…………誰?
優しげなおばあさま風の高齢のご婦人と、身なりのとびきりいい小さな男の子と女の子が乗っていた。
たぶん、あれは貴族だろうなぁ。ストレートの金髪にグリーンの瞳の男の子。巻毛の銀髪にブルーの瞳の女の子。どちらもお人形みたいに可愛い。
貸し切りじゃないのは残念だけど、まあいいや。上品な人たちなので、列車の端から端まで走りまわって、僕らを困らせたりはしないだろう。
あとは……なんか座席によこたわってボロボロのマントみたいなものを頭からかぶり、足だけ見せたおじさん(?)だ。
あれは、たぶん、かかわりあいにならないほうがいいタイプだ。僕らは無視して離れた席に乗りこんだ。すると、そのとたんだ。窓の外で手をふる超絶美形が!
ああっ、あの麗しき金髪碧眼は、僕のあこがれの英雄。ワレス隊長だー!
僕は思いっきり尻尾をふった。いや、人間だからね。獣人なんかでもないし。尻尾はないよ? ないけどね。心の尻尾はちぎれんばかりにふりきった。
「ワレスさん! ど、どうしたんですか? あなたも汽車に乗るんですか?」
ワレスさんは窓のすぐ外にまで近づいてきて、僕らに袋を渡してくれた。なんだろ? 駅弁かな?
「いや、見送りに来たんだ。おまえたち、旅に出ると、なかなか戻ってこないだろう?」
「えーと、今回はそこまで長くなる予定はないんですが。スマホのバッテリーを充電したいだけなので」
「あの写真とかいうものを撮る不思議な機械だな? それなら、ギルドから研究資金を出している王立研究所がエレキテルにある。ついたら、そこを訪ねるといい」
「ありがとうございます!」
ああ、ウットリ。
やっぱりカッコいい。
世界には絶世の美女とか、絶世の美男がいる。
僕の知る二大超絶美青年は、このワレスさんと、蘭さん。どっちも美しいけど、巻毛のブロンドのぶん、華やかさは、ワレスさんのほうが上かな?
蘭さんのほうが、より美女だけどね。
僕が僕の英雄に見とれていたときだ。視界の端で、こっちの会話に反応したように何かが動く。
ん? ああ、あのかかわらないほうがいいおじさんだ。
なんだろなぁ? なんか気にさわったのか?
まさか、また陰謀っ?
さっそく冒頭から、まきこまれちゃうのか?
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