第21話「連携クエスト」

 連携クエストを受領して蓮は12階層へ向かう事とした。


――タワー11階層


「葵! そっち頼んだ!」


「分かった! はぁっ!」


 葵はレベルが40になり新しく習得したスキル《一閃》を使いオークを一撃で仕留めていった。


 一閃はカウンタースキルの類で相手の攻撃に反応してスキル未使用時の2倍のダメージを相手に入れるものである。


 葵は一閃と連撃を同時に使用してオークを確殺していった。敵の数にもよるが単体を相手にする場合は絶大な効果を発揮する。


「葵! いいぞ! それがあればじゃんじゃん倒せるな!」


「うーん、でも複数が一気に来ると厳しいね。一閃は納刀状態からじゃないとスキル発動できないみたいだし」


 しかし、オークは多くても3体ほどしか群れを成さないので葵はここぞとばかりにスキルを試しながら12階層へ続く扉へ進んでいった。


 12階層への扉が見えたところで手前にレストエリアが見えたのでそこで一旦休憩を取り上層へ挑むことにした。


「なんかこのレストエリア広いね」


「確かにいつもの部屋より広いよう……な」


「……!?」


 部屋に入ると入ってきた入口が塞がり周りにオークが複数出現した。


「ここってレストエリアじゃなかったのか!?」


「確かトラップエリアも極低確率で存在するとか……」


「前もあったけど、そーゆー大事な事は前もって言ってくれー!」


 部屋に現れたオークは12体。


 部屋の狭さも相まって敵が多方向から一斉に攻撃を仕掛けて来た為、葵は一閃を発動するタイミングが取れないでいた。


「葵さん! お兄ちゃん! 私に少しの間敵を近づけない様にして!」


「わかった!」


 百合は新調した弓を上方へ向けると矢を1つセットする。


「弓撃 エリアレイン!」


 弓から放たれた矢は天井に届きそうなところで発光して何本もの光の矢になりオークが出現した一帯に降り注いだ。


『ぐぁぁぁっ!』

『がぁっ!』


 天から打ち下ろされた矢にオーク達の動きは止まり、矢を複数発受けた半数以上のオークは消滅していった。


「二人とも残りはお願いっ!」


「分かった! 任せとけっ!」

「ありがと! 百合ちゃん!」


 残りのオーク達は瀕死状態ではあるものの最後の力を振り絞り蓮と葵に襲いかかった。


 二人の斬撃が薄暗い洞窟の中にいくつもの軌跡を描いて繰り出された。


 蓮は敵の攻撃を硬質化のスキルを使った左手で弾きながら白剣による攻撃で仕留めていった。


「ふぅ、これで終わりか?」


「みたい……だね」


 一通り敵を倒すとそこからはモンスターも湧かなくなり通常通りのレストエリアとしての機能を取り戻した。


 宝箱くらい出してくれよと思いながらも休息を取り、上の階へと足を進めた。


――タワー12階層


 12階層の扉を開くと目の前にはゴツゴツとした少し大きめの鉱石が広がる場所に出た。


 これまでとは違い洞窟というよりは鍾乳洞の様な見た目をしている。


「おお、なんか雰囲気変わったな」


「そうだね! あ、こっちに凄い綺麗な石がある!」


「お兄ちゃん達! こっちには水が流れてるよ!」


 鉱石は様々な色をしており、そのどれもが恐らく武器などの材料になる。

 取って持って帰りたかったが、今ある装備では叩き壊す事は難しそうだった。


 (このツルハシ使うわけにもいかない……よな)


「どんなモンスターが出てくるかも分からないから気を付けてデュラムさんを探そう」


 扉から出て少し歩いた水辺に三叉の矛を持ったモンスターが3体いた。こちらにはまだ気付いていない。


「モンスターがいる! どんなモンスターか分からないから慎重にいこう」


「分かった。けど鑑定スキルが使えればどんなモンスターか分かるのにね」


 確かにモンスター識別スキルがあれば相手の特徴が分かって攻めやすい。スキルをトレースできれば早いんだが、中々鑑定スキルを持ったホルダーに会わない。

 そもそもそいつが寝てないとトレース出来ないんだからかなり難しい。


「まだ的に気づかれていないから私が攻撃仕掛けるよ」


 武器の効果で敵から認識されていない時のダメージが上がる為、初撃は百合に任せて矢が放たれると同時に蓮と葵は走り出した。


「集の矢!」


 百合はスキルを使い三発敵へ向かって矢を放った。矢は三発とも敵へ命中したが倒すまではいかなかった。


「はぁぁぁっ!」

「やぁっ!」


 矢が当たるとすぐ蓮と葵の攻撃が敵に繰り出された。しかし、敵は攻撃を受けるなり近くの水の中に入っていってしまった。


 攻撃が空を切った二人はそのままの勢いで水辺近くまで行ってしまった。


『サハァァァァ!!』

『ギィィィィン!』


 水の中へ入っていった敵に油断していると水の中からリーチの長い矛による攻撃を受けた。蓮は咄嗟に剣で受け流したが、葵は受ける時の体勢が悪かったせいか後ろへ少し飛ばされた。


 敵は攻撃をするとまた水の中へ姿を隠した。


 しかしこんな状況の中、蓮は別の事を考えていた。


 (絶対こいつのモンスター名はサハギンだよな……

 襲いかかってくる時めっちゃ自己主張してたし……)


 蓮は雑念を振り払い、倒す方法を模索していた。


「あ、そうだ! 葵と百合は俺の背後にいて直ぐに攻撃できる準備しておいてくれるか? 合図出すからさ!」


「うん、分かった、けど何する気………?」


 まあ見てろよと言わんばかりに気合を入れて蓮は水辺に近づいた。


 案の定勢いよく矛を伸ばして敵が攻撃してきたので硬質化した右手で矛の先端をがっしり素手で掴み、そのまま蓮の後ろへと叩き落とした。


「今だっ!」


 タイミングを合わせた百合と葵の攻撃で敵は一瞬で消滅した。


「これって……」


「必殺! 一本釣り!」


 はぁ。くだらないと呆れた顔の二人を尻目に蓮はその後も2体の敵を釣り上げた。


「っしゃー! そっち行ったぞ!」


 はいはい。と思いながら二人は敵を倒していった。


 敵を倒すと【サハギンの涙】というアイテムがドロップした。


 何に使うかより先に蓮は、やっぱりこいつの名前サハギンだったんだ。と思ってしまった。


 サハギンからドロップしたアイテムはサハギンの涙と使い古した矛の2種類だった。


 今後、何かに使えるかもしれないと思い大量の素材はストレージに保存して先へと進んだ。

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