第4話「タワー1階層」

――タワー1階層


 荷物が入ったリュックを背負った蓮達はタワーへ入った。


 リュックの中には戦闘で使えそうな物を程よく詰め込んできた。あとは万が一に備えて食料も。


「まずはこれからの目的だけど、とりあえず底層でレベルを10まで上げようかなと思う!」


「分かった!けどなんで10?」


「いや、ゲームとかだとキリのいいレベルでスキルとか成長するだろ? だから10まで上げればカスタマイズスキルがLv2になるんじゃないかなってね。」


「ふむふむ。それなら早速モンスターを倒さなくちゃね!」


 モンスターに対して恐怖とかが無いのは昨日俺が自分のスキルの説明をした所為だろう。


 (昨日は上手くいっただけかもしれないし、余裕で倒せる自信はまだ無いんだけどな)


 そう意気込みながら通路を歩いていると1体のゴブリンが目の前に現れた。


 蓮はどこかこの状況を楽しんでいるかの様だ。


 リュックから取り出したナイフを片手に持ちすぐさまショートコマンドを唱えた。


 「カスタマイズ[改変]ATK+をナイフへ!」


 全速力で突っ込んできたゴブリンの横をすり抜ける様にナイフを振った。


「はぁっ!!」


 すると昨日同様に一撃でゴブリンは跡形もなく消滅した。やっぱり昨日のはまぐれじゃ無い。そう確信した。


 しかし、AGIが低い事もあり、ゴブリンの攻撃でも気を抜けば直撃しそうな危うさはある。


 もし当たった場合、防御力が1の俺は昨日みたいに一撃で瀕死にもなるだろう。



「蓮! レベル上がったよ!!」


「え? 葵は特に攻撃もしてなかったのに?」


 ふと昔からやっていたゲームの事を思い出した。


 (あのゲームもパーティ全員に経験値が割り振りされてたような)


 しかし、このゲームにはパーティを組むと言うコマンドがある訳でもない。


 おそらく、同じタワーの入り口から同タイミングで入場した全員をパーティとする様な設定があるんだろう。


「多分、俺たち2人はタワーからパーティと認識されて倒した人以外にも少しの経験値が入るみたいだな!」


「ふーん……あっ! そーれーなーらー!」


 葵の考えている事は大体分かった。


「分かりました。俺が暫くは前線張るよ」


「さっすがー!」


 試したい事もあったし丁度良い。

 こうして2人は次々と1層のゴブリンを倒し続けた。この戦闘の中で分かった事がいくつかある。


 カスタマイズスキルで改変した効果は約2分ほどで切れてしまうと言う事。


 改変した複数の対象を同時に扱えるのかと言う事。これに関しては制限はおそらく現状2つまで。

 

 先程もATK+ナイフとDEF +のナイフを同時に装備した時は両方の効果が適用されていたが、3つ目の対象については無効となった。


 最後に1つの対象に複数の改変は行えるのかと言う事だが、これはスキル説明欄にも書いてあった様に1つまでしか改変効果は付けれなかった。


 (レベルが上がれば変わっていくのだろうか?)


◇◇


――タワーに入ってから数時間が経過した


「よしっ、あの2体を倒したら今日は終わりにしよう」


「そうだね!なら最後は私も!」


 葵は弟から借りてきたサバイバルナイフを手に取り、一瞬力を込めた。


「スキル 剣戟!」


 ナイフは青白く光を纏い、そのままゴブリンの顔面目掛けて突きを繰り出した。


「はぁぁぁっ!!」


 ゴブリンは一瞬よろめき、反撃しようとしてきたが、その隙を与える事なく葵の2撃目が喉のあたりに命中すると悲鳴と共に消えていった。


「よしっ! 案外やれるもんだね!」


「やるなっ!」


 その動きは俺とは比べ物にならないくらい速かった。


 ステータスのことまで聞いた事は無いが、恐らくAGI(素早さ)のステータスが相当高いのだろう。


 残されたゴブリンに視線を戻すと、蓮はナイフ2本を両手に取った。


「カスタマイズ[改変]ATK+をナイフへ! DEF +をナイフへ!」


 それぞれのナイフへ意識を変えながらショートコマンドを唱えると2つのナイフから紫のサークルが出た。



【並行改変】

 一回のコマンドで対象物への意識を変える事で複数対象に対して改変を実行可能。



 (これまでの戦闘の中で何度か試していたけど大体のコツは掴めたぞ。これは使える!まあ、並行改変ってのは俺が勝手につけたんだけど……)


 そしてナイフ2本を構える。


 相手からの棍棒による打撃をナイフでいなすと金属が弾けたような音が響く。


 相手が一瞬怯んだタイミングに合わせてもう片方のナイフで腹部を2度斬りつけた。


「よしっ! こっちも終わりだ!」


「大体試したい事も試せたし、今日はこれぐらいにしておこうか」


「そうだね! それじゃ、帰ろう!」


 2人はタワーの入り口へと来た道を戻る事にした。


 すると少し歩いた先に崩れかけの壁があった。


「こんなとこ来る時あったか?」


「ゴブリン倒すのに集中してて気付かなかったかもね。」


 2人は崩れた壁を調べると奥に少しひらけた小部屋があるのを確認した。そしてその中央にはいかにもな宝箱が置いてあった。


「うわ……怪しさしかないな」


「けど、開けたくなっちゃうね!」


 そう話しながら俺は箱に手を掛けて恐る恐る蓋を持ち上げた。


 すると中には鞘に収められた地面から腰くらいまでの長さの剣が入っていた。


「おお、ダンジョンっぽい!」


「蓮が使いなよ! 私はこのサバイバルナイフがあるし」


「ならお言葉に甘えて」


 剣を箱から取り出すとウィンドウが表示された。



 《ロングソード》

 ・何の変哲もないロングソード

 ・ATK+8


 タワー内で取得したアイテムに関してはアイテム情報が確認できる。


「何の変哲もないって…」


「けどATK+8は中々良さそうだな! 素のATKが上がれば属性付与の効果を付けたりと幅が広がりそうだし」


「それじゃ今度こそ本当に帰るか!」


 と、部屋を出ようとした時目の前に2体のモンスターが現れた。


「まあ、そうなるよな!」


 お決まりの展開に蓮はクスッと笑みを浮かべると入手したばかりの剣をさやから抜き取りスキルを発動した。


「カスタマイズ[改変]属性付与(火)をロングソードへ!」


 右手に持つ剣に赤色のエフェクトが表示された。


「葵!」


「OKー!!」


 2人は息を合わせて2体のゴブリンへ攻撃を繰り出した。


 葵は素早い動作から2体の横っ腹に鋭い攻撃連続でを入れ、すぐさま蓮はリーチを生かして2体をぶった斬るように並行に一撃を入れた。


 するとゴブリン達は体から火を上げながら消滅した。


「「よっし!!」」



 2人はレベルアップの文字と共に自分達の成長を実感しながらタワーを後にした。


◇◇◇

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【名前】

一ノ瀬 蓮

【レベル】

L v.4

【ステータス】

 ATK(力)  1     VIT(体力)  1

 DEF(防御) 1     INT(知力) 1

 SDEF(スキル防御) 1  AGI(素早さ) 1


【習得スキル】

 カスタマイズLv.1

 ‐特定の対象(自身の所有する無機物)に対して

  1つまで構造改変を実行可能

〔構造改変リスト〕

 ・ATK+

 ・DEF+

 ・属性付与(火)

※ショートコマンド例:

 カスタマイズ[改変]ATK+を〜へ!

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【名前】

吉川 葵

【レベル】

L v.3

【ステータス】

 ATK(力)  14    VIT(体力)  12

 DEF(防御) 12     INT(知力) 16

 SDEF(スキル防御) 12  AGI(素早さ) 24


【習得スキル】

 剣戟Lv.1

 ‐刀剣類(片手武器のみ)装備時に能力値が上昇する

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