第12話 お誕生会・・・へっ?


 じいちゃんとの何とも言えない初対面を終えた俺はハッツェンにきちんとした貴族らしい服に着替えさせられて誕生月を祝う場所へと向かっていた。


 なお、今俺は爺ちゃんの肩の上にいる。


(こえぇ、こえぇよじいちゃん)


 背の高いじいちゃんの肩に乗っている俺の視線は床から高さ2メートル強。

 1年間視線が低いまま生活していたためか、より高く感じてしまう。

 俺が怖がりなわけではない・・・決してない、ないったらない!


「父上、アルが怖がっています。下ろしてやった方が良いのでは?」


 貴族らしい服をしっかりと決めたかっちょいい父上から援護射撃が飛んでくる。


(ナイス父上!)


「いいな~、わたしもやってほしぃ」


 俺の心中など何のその、赤のフリフリドレスでおめかししたリア姉が羨ましそうに俺を見つめている。


(代われるものなら代わりたい・・・リア姉かわいいけどなんか金魚みたい)


 と思ったところリア姉がシュバッとこちらを向き、睨んで「アル、めっ!」と言ってきた。


(なんで気づいたし)


 そんでもってさっきと全く同じ服のままのじいちゃんが父上とリア姉に一言ずつ

 前者には面倒そうに、後者にはあの甘ったる~い声で言う。


「わしは今孫成分を補給しているのだ、ベルトラン。邪魔するでない。ん~?どうしたオレリア、そんな怖い顔をするでない。せっかくのかわいい顔が台無しじゃぞ~。ほれっ、わしの肩はもう一つ空いているからなぁ♪よいしょっ」


「わ~い、おじいさまだいすき~」


 不機嫌そうだったリア姉はころっと変わって、嬉しそうにじいちゃんの肩に座った。

 肩の上できゃっきゃして、二次被害を引き起こしている。


(わっと、暴れないでくれ!こっちまで揺れる)


 俺はじいちゃんの野太い首にそりゃもう必死で捕まる。

 しかし当の爺ちゃんは孫二人に囲まれ「♪~」と有頂天。


(駄目だ、我慢するしかない・・・)


 そんなところに夜空色のイブニングドレスに身を包んだ母上が合流する。

 母上が着ているのはワンショルダーというタイプのもので片肩と背中は露出しているものの、その豊かな胸元は隠れている。これは煽情的になり過ぎないようにという気配りだろうか。


(きれ―――)


「きれいだよ、アナ」

「ありがとう、ベル。あなたも素敵よ」


 俺が思考し終える前に父上が感想を言う。

 さすが、イケメン。返答がPCなみに早い。そして母上もすぐに返し、なんだか甘ったるい雰囲気を醸し出し始めた。

 美男美女が綺麗な格好をして見つめ合っている・・・

 俺は絵になるな~と思いつつもそれが両親だと気づき一気に恥ずかしくなった。


 そんな何とも言えない雰囲気に嫌気が差したのかじいちゃん。


「やめんか、子供たちの前で―――やめんのであれば、お前が子供の頃侍女に―――」

「わかりましたっ、わかりましたから父上、それ以上は言わないでくださいっ、」


(えっ、何それ聞きたい)


 と俺は思ったが、止めに入った父上の顔がマジでガチでリアルにやめてほしそうだったので好奇心をゴミ箱の中へ捨てる。


「ベル?私その話聞いたことないわ?二人きりの時に教えて頂戴ね♪」

「・・・」

「ベル?」

「ああ、わかったよ・・・」


(父上情けねぇ・・・後なんかこの家の勢力図が少しずつ分かってきた気がする。

 そういえば、ばあちゃんっていないのかなぁ)


 俺が考えている間に一行は大きな扉へと着く。


(ん?これが食堂の扉?なんかでかすぎじゃね。ていうかここほんとに食堂?)


 ちなみに俺は生まれてこの方食堂に行ったことが一度もない。

 食事をする場所はというと、母上のおっぱいを吸っている時はもちろんのこと、離乳食になってからも基本俺の部屋だった。


(ハブられてんのかなぁ)


 そんな俺の悲しい思考をかき消すように扉の向こうから声が聞こえてくる。


「ヴァンティエール辺境伯様ならびに、御一族ご入場!!!」


(へっ?)


 扉がゆっくりと開く。

 そして見えてきたのは、複数のシャンデリアがぶら下がる大きな部屋と煌びやかな服に身を包んだ人間たちであった。


(―――思ってたんと違う・・・)

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