第10話 こやつ・・・できるっ
(なんだこの状況、誰か教えてくれ‥‥‥)
そんな俺の切なる願いは誰にも届かない。
頼れる者がいなくなった俺は自力で情報を把握するため今この状況をつくりだした下手人を見る。
まず一番初めに入ってくる情報は顔だ(理由:目の前にあるから)
オールバック気味の青い髪、すべてを見通していそうな金眼、顔のいたるところには小傷の跡があり、歴戦の戦士を感じさせる。そして一際目を引くのは鼻の中盤にある両目尻ほどの幅の大きな古傷
(絶対に痛いだろうから俺はごめんだ、でもカッコいい~♪漢って感じ。イ〇カ先生みたい)
落ち着いてきた頭の中で考えつつ視線を下に落とす。
肌触りがよさそうな質の高いシンプルな長袖の白シャツ(ちなみにズボンにインしてない)。そしてそれを内側から押し上げる筋肉。見せ筋でないためか無駄がない。
そして、引き締まった印象を与えるこれまた質の高そうな黒いストレートパンツ、筋肉のせいでスリムパンツみたいになっているが違和感はない。
最後に見えた足にはローカット気味の茶色い革靴、程よいテカりは行き届いた手入れを表しており、それらすべてが合わさって着ている人物の魅力を引き出していた。
(超カッコいい…戦士の休日、みたいな?)
シンプルイズベストを体現していると言えよう。
そして、俺が気付いたことはもう一つ。
(まあでかい、尋常じゃないくらいでかい)
そう、この見知らぬおじさん 目算ではあるが2メートル近くあるのだ。そりゃデカいと思いもする。ただ―――
(みんなが静かにしてる理由、そこじゃないと思うんだよなぁ)
みんなが静かにしている一番の原因。
それは、
(このおじさん、なんかめちゃくちゃ強い気がする)
ということだ。
つまり、強者のオーラがにじみ出ているのだ。こやつ‥‥‥できるっ、みたいな?
これが周りの侍女たちに畏怖と緊張を与えている。ていうか、見えてる。なんかおじさんの周囲数センチがぼやけて見える。
何度も目をこすり、かっぴらく。
(おかしい、まだ見える)
ここで初めて見知らぬおじさんが口を開いた。
「ほぉ」
重低音がまだ小さい俺の身体に響く。しかし不快感はない、むしろ心地よささえ感じる。何故だろうか。
そして男が纏うオーラのようなものが消えたことと同時に発された言葉で疑問が晴れる。
「ばぁ~、おぬしのじーちゃんじゃぞ~♪」
何を隠そう、いま不気味な猫なで声を発しているこの大男こそが今世の俺アルテュールの祖父マクシムであった。
(おぇ、きもちわりぃ)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます