第9話 初めての死は皆一緒なのかもしれない
「ちょ、なんで出てきたのよ!?」
「その場のノリですね!」
驚いた顔をするユリアの顔を見てドヤ顔で答えた。
あっ……呆れられている……気が……。
オーノーやっちまったな……俺。
「下がって。あいつは本気の私と同じぐらい強い。今のはす……君(きみ)の剣じゃまだ勝てない」
何で名前を言いかけて止めたんだ。
まぁ、今は気にしなくていいか。
「大丈夫です。確証はないけど何とかなる気がするので」
「マリアは君が死ぬ事を望んでいない!」
「それはユリアに対しても同じだと思います」
もし、マリアが本当の意味で妹と似ているのであればきっと今の蓮心と同じ事を思っていたと思う。マリアと妹の性格はやっぱりどこか似ている気がするから。
「ほう。お前もしかしてこの俺と戦うつもりか?」
「そうだ。それに探していたんだろう? この俺を?」
「うん?」
「城壁は不可抗力だったと言い張りたいが……マリアに異世界から呼ばれた転移者のことを」
「ほう。お前がそうか。ならば死ね!」
カルロスが剣を構え突撃して来る。
――ちょ、タイム!
こうなったら目覚めろ! 俺のなにか!
その場の勢いで後は検問で戦った時と同じくスキルに全てを託し身を委ねる。
――キーン!
――シュパァ!
自分でも驚いた。まさかユリアの『スキル獲得:剣豪の型(剣士)』を装備しただけで本当にカルロスの一撃を防ぎ反撃まで出来るとは。
「お、お前一体何者だ?」
カルロスが一旦距離を取った。
「嘘? 何で?」
マリアが驚いていた。
この時、「安心しろ。カルロス、ユリア、お前達以上に本人(俺)が一番驚いている!」と言いたかった。だがそんなことを言えばカルロスの怒りを買うことになりそうなので喉まで出てきた言葉を飲み込む。この世界は魔法(別名スキル)が全てに影響を及ぼしているのだと確信した。
そうと分かればやる事は一つしかない。
何一つ思い通りにならず、勝手にフラグを立て回収されたり、物語が進行してしまう元凶となりマリアを苦しめているカルロスを倒す事である。
「お前を倒す為だ。ユリアごめん。後で説明するから」
後ろにいるユリアを見ると頷いてくれた。
行くぜ! これが俺の剣士としての戦い!
メニューから「スキル一覧」を素早く開く。
『スキル発動:隕石召喚使用しますか? YES/NO』
YES。
今回は検問の時より大きめにして、力の差を見せてやる!
『連続スキル発動:隕石誘導使用しますか? YES/NO』
勿論YES。
剣士として気持ちだけは正々堂々と今こそ戦う。
上空に隕石が出現する。ようやく全ての元凶である倒すべき相手が現れた。
これでクリア。
俺の異世界転生生活も終わりを迎えることになるだろう。
長くてとても短い異世界生活だった。
だけど悔いなんて一欠片もな……いや待て。
ここでカルロスを倒したらどうなる?
ユリアともう会えなくなるのではないか?
だとしたらあの大きなおっぱいは誰のものになるんだ?
俺は……触れる事すら……できない!?
クッ……。
心の中で強い葛藤が続く。
元居た世界に帰りたい。
だけどあのおっぱいを触らずして帰るなど男として……。
あー、俺はどうすればいいんだぁーーーー!
カルロスが突如上空に出現した隕石を見て急に足を止め何かを口にするが隕石が落ちてくる音が煩くてよく聞こえなかった。
今も徐々に落下してくる隕石は比較的に小さいがそれでもここに落ちれば辺り一面焦土となるような破壊力を秘めていた。
どうやらキャンセルはできないらしい。
「俺はどうすれば……いいんだ?」
「お、おおおおまえ剣士としての誇りはないのか!?」
「そんなのあるに決まってるだろ!」
「なら剣で戦わずして、何で戦うというのか! これでは全員死ぬぞ?」
「ふっ、愚問だな。俺は剣士であって剣士じゃない。魔法剣士だ! 故に魔法を使って何が悪い! お前が正義を語るのならこの隕石をどうにかしてみろ! それが正義の役目。ならば俺はお前のために悪となろう。そして悪とは大勢に恐怖を与える者! さぁ、後先考えずやっちまったと絶賛後悔中の俺を止めてみろ! 正義の味方ぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
これでなんとかなってもらわないことには。
この世界で俺はおっぱいを触らずして散る事になってしまう。
それでは困る。男として。
せめてこの世界では死ぬ前に触っておきたい。
女の子の乳房を!
だから相手になんとかしてもらうことでこの窮地を乗り超えることにした。
その間俺は優しいので攻撃はしないであげる。
標的をカルロスにして後は自然落下を待つ。
これをどこか適当に飛ばしてもいいのだが、その先にもし人がいたら大量殺人犯になってしまい歴史に名を刻むことになる。それだけは嫌なので……どうかカルロスよ、後は頼んだぞ。
「これが愛の重さってやつだ。お前の愛が本物ならこれを乗り越えれるはずだ!」
「……理不尽な愛ね」
「てかこれ私達でなんとかできる大きさ超えてる気がするのは私の気のせいかしら?」
「えっ……?」
「まさか……これ考えなしに使ったとか言わないわよね?」
「…………」
(マジで?)
車は急に止まれないのと同じで魔法は途中でキャンセルできない。
のがどうやらこの世界の仕組みらしい。
気付いた時には背中が滝に打たれたようにびしょびしょに濡れていた。
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