流れ星に軽い気持ちで願ったら異世界ならぬゲームの世界でレプリカの恋が始まった
光影
第1話 軽い気持ちと異世界転生? 転移?
ある日、蓮心と呼ばれる少年は不思議な夢を見る。
夢の中の世界はとても幻想的な世界で夜空が綺麗だった。
沢山の星が輝いていた。
そして、視線を空に向けるとオーロラがあり、その中を流星群が流れる。どうせならと思いお願い事をしてみる事にした。
「異世界って物を体験してみたい」
そこに深い意味や理由はなかった。ただよくアニメ、小説、漫画等でよく見る異世界転生と呼ばれる物が存在するなら体験してみたいそんな軽い気持ちだった。それにこれは夢の中で本物の流星群でもなければ流れ星でもない。だから実際にお願い事が叶うとか思ってもいない。ただやって見たかっただけ。
……そう、夢の中のはずだった
……いや、これ夢だから
……うそだよね
「えっ?」
幾ら夢とは言え、軽いノリでお願い事をしたら叶うなんてそれはそれで最悪だ。
蓮心は困っていた。
逃げるにも夢の中では何処に逃げたらいいのか分からないし目の前にいる突然現れた女神らしき人? 女神様? がそんな事をさせてくれるとも思えない。
白い翼に金色の長い髪、満面の笑みで一見とても美人な女神様だった。男ならば多くの者が一目惚れしてしまう美貌と言っても過言ではないだろう。
しかし今の蓮心からしたらそんな事はどうでも良かった。
このタイミングで流星群の一部が女神様の姿に変わりこちらに飛んで来た時点で何となく嫌な予感がしていたしその嫌な予感が本人の意志を無視して実際に進行を始めていた。
違う。“嫌な予感”と言う言葉の定義がそもそも間違っていた。
気づかぬうちに自ら立てたフラグを女神様が回収しに来た気しかしなかった。と訂正しておく。
「勘弁してください」
蓮心は女神様に頭を下げて謝罪する。
「まだ何も言ってないけど?」
「本当にすみませんでした。めっちゃ軽いノリで言いました」
女神様は頭を下げる蓮心を見て首を傾げていたが、何故頭を下げたのかがようやくわかったみたいだ。『流石女神様! お察しがいい』と心の中で安堵し蓮心が恐る恐る下げていた頭を上げる。
「ねぇ、私を助けると思って」
「断る!」
女神様の言葉を遮る。このまま最後まで聞けばどうなるかぐらいは現状をよく理解出来ていない蓮心でも予想がつく。このままでは蓮心の穏やかな人生がメチャクチャになる可能性がある。
蓮心はアニメ、小説、漫画等でよく見る異世界転生した主人公達と同じ轍を踏まぬようにここは心を鬼にして強気に出る。どんなに美人で可愛い子からお願いされても人生が掛かっていれば断るぐらいの信念を持って放った言葉に女神様の表情が笑顔から不敵な笑みに変わる。
「人の話しを最後まで聞かないならココで殺すわよ?」
女神様が使ってはいけない言葉が蓮心の耳に聞こえてきた。笑みが素敵で優しそうなオーラを醸し出しながらのその言葉はある意味恐怖という名の棘しかなかった。
「……人ではない気がするけど」
羽が生えている人間を蓮心は知らない。羽が生えている女神様つまりは人間を超えた存在ならば、神話の話しや空想の世界等でよく見るので知っている。大抵そう言った存在は万能の力を持っていたり、個性が強かったり、癖があったりと存在感が強い。
『後、最後まで聞かなくても何となくわかるから』
言いたくても言えない言葉。
「何か言った?」
少し不機嫌になったのか女神様の口調が少しばかり変化した気がする。原因は考えるまでもなかった。心当たりがあるとは流石に言えないが蓮心は全力でこのピンチを回避する方法を全力で模索する。現実世界では寝ているであろう脳をフル回転させる。流石に起きると言う手は使えない。もし使えたら今頃そうしている。
「いえ、何も言ってません」
「そう。それでね。私を助けると思って」
「嫌です!」
思わず口から出た言葉に女神様だけでなく蓮心自身も驚く。
慌てて口を両手で塞ぐ。
そして笑って誤魔化す。
『三連コンボ、ゲームならある意味ラッキーパターンだがこの状況本当に笑って誤魔化せるのか……心配だ』
そんな蓮心に女神様から冷酷な視線が向けられる。
あまりの迫力に笑うのを止めて黙る。
「そう、死にたいのね」
どうやら冗談ではないようで、蓮心に向かって流星群の一部が流れ星ならぬ隕石として落ちる。もしここで死んだら現実世界の身体にどう影響が出るのが分からないのでとりあえずガムシャラになって飛んでくる隕石から逃げる。
「やっぱり駄目かぁ~」
ここで飛んでくる隕石の一つを躱せないと判断し生きる覚悟を決める。
「話し最後まで聞きますから待って下さい!」
すると、上空より飛んできた隕石が蓮心の身体に触れる数十センチ手前で急に止まり、そのまま運動エネルギーが零になった隕石が地面に落ちる。実際に近くで隕石の落下を見た事がない蓮心は初めて目の前で見る隕石に好奇心ではなく恐怖を感じていた。
『助かった……てか隕石操る時点でやはり人ではないな』
蓮心の心の声を全て無視し女神様が話しを元に戻す。口に出していない時点で伝わるはずもないのだが、この場合話しが戻ったと言うよりかは強制的に進行したと言った方が蓮心的には納得が出来た。
「私を助けると思って異世界ならぬ私がいる世界に来てくれない?」
異世界とは自分たちが生活している世界ではない別の世界の事である。
女神様は少し頭が弱いのかそれとも自分を中心に話しているのか良く分からないが蓮心からしたら別の世界に来いと言われた時点でそこが異世界となる。
一応説明しておくと、異世界では現実とは違った法則や常識に従っていることが多い。その為、全てが全てというわけではないのだが、世界の住人も人間ではない別の種族例えばエルフやドワーフ、魔物、魔女だったり、現実とは違った時代背景や技術体系を持っていたりと、千差万別である。小説やアニメ等を見て異世界に憧れる事は合っても、実際に行くか行かないかの選択肢を与えられればそれでも行きたいと言う人間とやっぱり行きたくないと言う人間は半々ぐらいだろう。下手したら食べ物、言語と言った生活環境そのものが違うかもしれない。それに異世界に行っても人間でいられるとは限らない。
だが選択肢は一つしかなかった。
地面に落ちた隕石と流星群を一瞬見て覚悟を決める。
隕石の残弾は一、二、三、……
数えたらキリがなく、これは躱せるだけの運動能力がない人間の末路にも思えた。
まぁいい。何とかなると信じて、
「わかった。けど次の世界でも人間にしてくれ」
と、答える。
「勿論よ。でないと私が困る。流石に人間以外とは一緒になりたくない。それと職業と能力はこちらで適当に決めておくわ」
「え?」
「何か不都合でも?」
女神様が首を傾げる。
不都合、以前に問題が多すぎた。職業と能力を適当に決められたあげく知らない世界に放り投げられた日には生死に関わる。
ここは慎重に対応する。
「その職業と能力って俺が決めれないの?」
「決められるけど……それだと私が面倒くさいのよ」
何処まで我が儘お嬢様なのだと思っていいだろうか。いやお嬢様ではなく我が儘女神と思う事にする。自分の都合で異世界に呼んでおいて最後まで自分の都合だけで進行されては俺の人生がメチャクチャになる事は必然。
しかし、ここで文句を言ってもさっきみたいに黙らされるのは目に見えていたのでここは慎重に最低限の要望だけを伝える事にする。そして、ため息を吐いてこのイライラした気持ちを落ち着ける。
「なら、せめて能力はその世界での平均値でお願い。職業は能力に合った物にして欲しい。それなら大丈夫?」
よくゲームとかである能力値が足りないから何も出来ないみたいな展開だけはないようにしておく。後は、言語の壁とか異世界について聞きたかったがそれは向こうに行ってからでも何とかなると信じておくことにした。
「まぁ、それでも面倒だけど仕方ないわね。私を助ける為にも最低限は働いてもらわないとだから適当にしといてあげるわ」
「助かる」
最後に適当と聞こえたが本当に大丈夫なのだろうか。
とても心配になった。
すると、急に視界が真っ暗になった。
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