転生したら、ヤンキー漫画の主人公だった件。

茶々丸

第1話転生


「なあなあ。このマンガ、読んでみてくれよ」


…きっかけは、まあこんな感じだったと思う。


幼なじみの黒瀬くろせ 由良ゆらに手渡されたそれは、連載漫画の単行本化によくある、B5判サイズのヤンキー漫画だった。


「獅子の牙」と書かれた題名と、ガラの悪い少年たちの表紙。

好評につき重版化、と謳われ、厚い本に巻き付く赤い帯。


それらをまじまじと見つめる俺、小野おの 修也しゅうやに、アイツは「ぜってーハマるからよ」と白い歯を見せて笑うのだった。



…今になって思う。

俺は、後悔しているのだ。


何故、俺はあの時、ヤンキー漫画ではなくエロ本を受け取らなかったのだろうと。


アイツが毎日の様に、通学鞄にエロ本を忍ばせているのは知っていた。


当然だ。幼なじみなのだから。

男、なのだから。


そして俺はその時、何があってもアイツから、それを盗み取らなければならなかったんだ。


そう、そうしてさえいれば。

そうしてさえ、いれば。



俺は今、ヤンキー漫画の主人公・真瀬まなせ 幸助こうすけとして転生し、モブに恐喝されるのではなく、エロ本の中の美女に囲まれ、ハーレム生活を堪能できていたのかもしれないのだから。




















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