プロローグ
七賢者の災厄 -1-
少女は村外れの丘にいた。
大きすぎる本を担ぐように抱え、小柄な少女は樹木の根に本を立てかける。ベルベットの本の表紙には金の糸で「ライランの賢者」と刺繍されていた。
少女は天を仰ぐ。木の葉の隙間から見えるのは青空――ではなく
「ねえホーローの追悼師さん。この本を読んでくれない?」
少女が呼びかけると、追悼師はゆっくりと頭を
「……あぁ、賢者の」
「うん。このご本、難しくて読めないの。でも追悼師さんなら分かるでしょ?」
「ライラン史の大事件だから。私が教えなくても、貴女はきっと知ることになるわ」
「それでも今知りたいのよ。ねえ、聞かせて?」
少女がせがむと、追悼師は苦笑を落として数秒、軽やかに木を降りて隆起した枝に腰掛けた。
「いい? これは二度と起きてはいけない――凄惨な冒険の記録。けれど、この賢者たちと共に……旅をしたいと思う私もいる。貴女はどう思うかしら?」
好奇心に爛々と目を輝かせた少女は、追悼師の
追悼師はフードを背に追いやり、ベルベットの表紙をそっと撫でる。白くしなやかな指は美しいのに寂しそうで、少女は不思議に思って追悼師の顔を見上げた。追悼師は
羊皮紙の文字を、細っそりとした指がなぞり、朱の唇が
――――――――――――
それは災厄の咎
愚かなる
血煙の舞う中に己を見失った
――――――――――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます