第15話 おねロリ?


 🖤の目をしたプパルに手を握られ、困惑するキロイ。

 ハァ・・・

 何なんじゃ?

 この状況は。

 ワシは呆気にとられておるが、キサラムとゲカエロルは呆然としておるぞ。

 大事な妹がよくわからない女に言い寄られているのを見ておるキサラムと、奇しくも欲しかった国をさらっと手に入れられそうになっておるゲカエロル。

 どちらも思惑はわからんが、二人が視線を送る相手はデレデレ顔のプパルじゃ。

 っというかキロイが嫌な顔をしておるぞ?

 そろそろ助けてやらんとな。

「これ、待つのじゃ。そなたは何を言っておる。今回のことは不問にしてやるから弟達を連れてとっとと帰れ。」

 ワシはプパルからキロイを引き剥がし、冷めた目で見ながら言った。

 『ああ・・・』とか切ない声を出したが気にせん。

 あまり娘にベタベタ触られるのはいい気はせんからの。

「あ・・・ありがとう、お母さん。」

 やっとプパルから離れることができたキロイはワシに感謝の言葉を言う。

 キロイがその気になれば自分でプパルを払うことは容易に出来たじゃろう。

 しかし相手の見た目がアオイ位の年齢で、しかも女じゃということもあってか、無理に振り払おうとはせんかったのじゃ。

 優しいのう。

 じゃがその優しさが相手を増長させてしまう場合もあるからの。

 今後はその辺を学ばせるとしようか。

「クロア様・・・いや、お義母様。私は帰りません!妻と一緒にここに住みます!」

 いい顔をしてワシに歯向かってくるプパル。

 本当に何なのじゃ?

 こやつは。

 そして誰が誰の妻じゃ。

 キロイはまだまだ結婚できる年齢では無いぞ。

 愛くるしいのは認めるが、こんな幼い娘を変な目で見るのは止めてもらいたいのう。

 まあ見た目はこの先も殆ど変わることは無いじゃろうがな。

 因みにキロイは残り半分の条件も達成した為、最早能力値的にはレベル10000位はある。

 しかもじゃ。

 完全解放された魂魄連動魔導兵器は、その段階から今のレベルの能力が反映されるのじゃ。

 つまり、レベル10000のステータスに今のレベルがプラスされるということ。

 最早キロイは原素の神達に届く程の力を持っておるのじゃ。

 まあ光と闇の神は他の原素の神達よりの更に上のレベルじゃがの。

 因みにじゃが、キロイがこの森やワシから離れても大丈夫になった条件はワシとの信頼に関係しておったのじゃ。

 そう。

 キロイは早い段階からワシのことを母として見ておった為、割と簡単に条件が達成できた。

 そして力を解放できた理由じゃが・・・

 それはキロイの身体のことじゃからな。

 あまり言えんの。

 ・・・

 まあそれはともかく・・・

 ハァ・・・

 もう仕方無いの!

「そなたにお義母様と言われる筋合いはない!先程は不問にすると言ったが、そなたには罰を与える。もう二度とこの森に近づくな!もしそれを破るようならそなたの国を滅ぼすでの!よいな!」

 ワシは前言撤回し、プパルにビシッと指を差しながら言った。

 こんな奴がおったらキロイもキサラムもおちおち安心して暮らせんじゃろうからな。

 っというかキサラムは未だに呆然としておるぞ?

 ゲカエロルに関してはやっと欲しかった国を手に入れられそうなのに、姉の言動次第では失ってしまうから慌てておるわ。

 じゃが・・・

 弟の気も知らずに、プパルはとんでもないことを言いだした。

「仕方ありません。国は諦めます。あっ、でも民達の命は奪わないで頂けますか?後は好きにしてもらって構わないので。」

 全く未練が無いような様子でプパルは簡単に国を諦める。

 おいおい・・・

 本当にこやつは何を考えておるのじゃ?

 ゲカエロルも流石に黙っておらん。

「姉上!何を言っているのですか!姉上にとってあの国はそんな簡単に捨てていいものだったのですか!」

 当然怒るゲカエロル。

 そうじゃよな。

 こやつは国が欲しいが故に今回のことを起こしたのじゃ。

 なのに国を持つ姉がそんなことを言い出してしまったのじゃから文句を言って当然じゃよな。

 しかし・・・

「私とキロイちゃんの愛の前では何者も敵わない!クロア様に一度国を滅ぼしてもらって貴方がもう一度建て直しなさい。」

 これまた訳のわからないことを言うプパル。

 いや、こやつだけじゃからな?

 キロイは別にプパルを好きでも何でもないぞ?

 寧ろ苦手じゃと感じておるじゃろう。

 なのに何でこやつはこんなに自信満々に好き合っておると思っておるんじゃ?

 それに国は滅ぼした後、建て直すことなぞさせんぞ?

 ライガルの国の一部として吸収させるつもりじゃからな。

 勘違いするでない!

 ワシがプパルに注意をしようとしたその時。

 転移の扉が開き、アオイと人化したミドリコがこの家に入ってきた。

「あぁ、やっばりぃここにぃいたんですねぇ。家中ぅ探しちゃいましたよぉ。主様ぁ朝食ぅお召し上がりにぃならないんですかぁ?」

 ワシを見ながら話してくるアオイじゃったが、直ぐに周りの状況に気が付いたようじゃ。

 そしてすかさずカーリアズ・レイピアをバッグから取り出し、鞘から剣を抜いた。

「・・・ほうほうぅ。そういうことですかぁ。そこのぉ女性はぁ森のぉ外にぃ出してぇ転がってるぅ男達はぁ細切れにぃすればいいんですねぇ。」

 勝手解釈が過ぎるアオイ。

 何がそういうことじゃ。

 やめんか。

 キサラム達の家を血で汚すつもりか。

 じゃが・・・

 アオイにしては珍しいの。

 プパルをここに残すのではなく、森の外に出す決断を即座にするとは・・・

 まあよいか。

「そういうことではないわ!取り敢えずこやつらを自分達の国に戻せればそれでよい。もう二度とここに来ないことを約束させてな。」

「わかりましたぁ。少し懲らしめればいいんですねぇ。任せて下さいぃ。」

 アオイはプパル達に剣を向けた。

 怯える身動きが取れないゲカエロル達。

 どんな責め苦を受けるかわからんのじゃからな。

 そりゃ恐がりもするか。

 しかし・・・

 プパルはアオイの隣を見て、またしても目を🖤にしておる。

 ちょっと待て。

 まさか・・・

「キュ~ン🖤こっちの子も可愛い~🖤何?ここは天国?あぁん🖤抱き締めたい~🖤」

 アオイに刃物を向けられている為ミドリコに近付けないプパルは、身体をクネクネさせながら甘い声を出す。

 それを見てササッとアオイの後ろに隠れるミドリコ。

 ・・・

 なるほどの。

 プパルは幼い見た目の女児が好きなのじゃな。

 まあ愛らしいのはわかるが・・・

 こやつは過剰過ぎるの。

 う~む。

 プパル自身はいい奴なのじゃがのう。

 それを台無しにするくらい女児に対して直情的じゃな。

「やっぱりぃそうなんですねぇ。キロイちゃんのぉ怯え様を見てぇ何となくぅそんな気はぁしてたんですがぁ・・・貴女ぁ、おねロリなんですねぇ。」

 何かに気付いていたアオイは何やらわからない言葉を口にした。

 何じゃ?

 おねロリとは。

 ワシの疑問顔を見たアオイは、その説明をしてくれた。

「おねロリとはですねぇ、小さい女の子のことをぉ年の離れた女性がぁ好きになっちゃうことですぅ。ここで問題なのがですねぇ。それがぁ母性であればぁ普通のぉことでぇ尊いことだとぉ思うんですがぁ、おねロリはぁ性的にぃ好きにぃなっちゃうんですぅ。つまりぃ、キロイちゃんとぉミドリコのぉ貞操をぉその人がぁ狙っているということなんですぅ。」

 言いながらアオイは剣先をプパルに向ける。

 なるほど。

 そういうことか。

 じゃから女に甘いアオイであっても二人を守るためにプパルを遠ざけようとしたのじゃな。

 ふむ。

 それならやはりプパルをこの森に居させる訳にはいかんな。

「アオイや。剣を収めよ。こやつらは強制的に国に戻すからの。そして結界を張り二度と国から出られないようにする。それでこの件は終いじゃ。」

 最初からこう考えておればよかったのう。

 こうすればもうキロイとミドリコが害を受けることもあるまい。

 じゃが、アオイの考えは少し違うようじゃ。

「主様ぁ、それではぁこの人のぉ国にぃいるぅ幼女達がぁ危ないかもぉしれませんん。もしかしたらぁ前科がぁあるかもぉ。」

 アオイは剣を収めたが、刺すような視線をプパルに飛ばしておる。

 そうか。

 確かにそういうこともあるかものう。

 じゃが、プパルはそれを否定してきた。

「ありませんありません。私は色白でお目目が大きくて、強く抱き締めたら壊れてしまいそうな、華奢な見た目の女の子が好きなのです。国にいるのは魔族だけ。私のタイプの女の子はいませんでした。なので私に前科はありません!潔白です!」

 スラスラと自分の好みを恥じることもなく言うプパル。

 いやいや。

 プパル以外、この場におる皆ドン引きじゃぞ。

 前科が無いことはわかったが、それでいてここにいさせてやる理由もない。

 じゃがこうなってしまってはこやつの国での評価は駄々下がりじゃろう。

 もうゲカエロルに継いでもらうしかないわな。

 このまま戻してやるのは少し可哀想に思えてきたわい。

 じゃが・・・

 どうするか。

 ワシが考えておる間、アオイはプパルに質問していた。

「貴女はぁキロイちゃんにぃ何がぁしたいんですかぁ。」

「わ、私は・・・その・・・手を繋いだり、可愛いお洋服着てもらったり・・・一緒にお風呂入ったり・・・一緒に寝たり・・・いや、それはいけないわね。間違いが起きたら大変だもの。でも・・・頭撫で撫でしたり・・・チュ・・・チューしたりはしたいわ。キャーー!言っちゃった🖤」

「・・・なるほどぉ、じゃあぁチュー以外のぉ肉体関係はぁ望んでいないとぉ?」

「そ、そんなこと出来るわけ無いでしょ!小さい女の子っていうのは繊細で純白なの。私なんかの色に染めていいわけないじゃない!いや、誰の色にも染めさせない!だから私はこの子の側にいて守りたいの。結婚すれば一緒にいられるでしょ。お姉様だってお忙しいでしょうし。私が少しでも力になれれば・・・」

「ふ~んん。そうですかぁ。もしそれがぁ事実ならぁ、貴女はぁかなりのぉ安全パイってことにぃなりますねぇ。」

「そうよ!今言った以上の下心は無いわ!でも・・・ちょっといやらしい目で見るのだけは許してほしい・・・」

「それはぁ直しましょうよぉ。私からぁ見てもぉ貴女はぁ悪い人にはぁ見えませんからぁ。言動さえぇ直せればぁ少しはぁ見直してぇくれるんじゃぁないですかねぇ。」

「・・・努力します。」

 聞こえてくるアオイとプパルの会話。

 ふむ。

 ワシも警戒し過ぎていたかもしれんな。

 キサラムが不在の場合、煩わしい侵入者が来たときなんかに役立つかもしれん。

 まあキロイは自分の身は自分で守れるくらい強いがの。

 そして、ここでやっとキサラムの意識がこちらに戻ってきた。

「許しません!キロイはまだまだ子供です。結婚なんてぜっっったいに許しません!」

 完全拒否するキサラム。

 まあそうじゃよな。

 例えプパルが良い奴じゃとしても、キサラムは絶対に許さないと思っておったわ。

 さて・・・

 どう落とし処を決めるかの。

 ワシは思考を巡らせ、一つの結論へと辿り着いた。

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魔女の贄は美味 猫屋 こね @54-25-81

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