第17話 こいつぅいよいよ消しますねぇ


 アオイ達がダンジョンから帰ってきた翌日。

 ワシはいつものようにアオイより早起きしてリビングで寛いでいた。

 いつもならこの時間はワシだけがここにいるのじゃが・・・

「おはようございます、お母様。お茶を淹れますので少しお待ちください。」

 ワシより先に起きていたキサラムが気を利かせて飲み物を出してくれた。

 早速それに口をつけるワシ。

「うむ・・・美味いのう。」

 何ともありがたいことじゃ。

 目覚めの一杯がワシの日課なのじゃが、いつも自分で淹れているお茶よりも、やはり娘が淹れてくれたお茶は格別なものじゃった。

 今日はダラダラのんびり出来ると良いのう。

「お母様、その・・・お話があるのですが。」

 キサラムはワシの正面の席に座ると、改まった口調でそう言ってきた。

「何じゃ?何か相談事か?」

 何か悩みでもあるのかのう。

 ここは母としてきちんと聞いてやらねばな。

「えっと・・・以前、お母様は私に給料を払っていただけると仰っていましたが・・・それは無しでお願いできませんか?」

 遠慮がちな口調でそう言うキサラム。

 これは驚いたことを言ってきたのう。

 いくら森にいるからといって、食料はまだしも生活用品は買わねばならんじゃろう。

「どうしたんじゃ?やはり森の守衛は嫌なのか?」

 そうとしか考えられん。

 元々街で暮らしていたんじゃし、森は不便だから嫌じゃと考え直したのかのう。

「いや、そういうわけではないんです。寧ろ守衛としての役割は是非とも果たしていきたいと思います。ですが私もこうして前世の力が戻ったわけですし、生活費位は稼いでいけますんで・・・それに・・・」

 ここでキサラムは一度言葉を区切った。

 そして少し恥ずかしそうにこう続ける。

「恐れ多いことですが・・・これからも貴女様を母として慕っていかせて頂きたいと思います故・・・親のものを守るのは子の当然の務めです。なので・・・給料を頂くというのは何か・・・距離を感じてしまうというか・・・」

 ふむふむ・・・

 ・・・

 ・・・

 偉い!

 自分達のことは自分でやり、尚且つワシの手伝いを無償でやろうと言うのじゃからな。

 ワシは本当に良い娘を得たものじゃ。

 しかしそれでもやはり、いきなり『はいそうですか』と頼るワシではないぞ。

「うむ、そなたの気持ちはわかった。じゃったら給料という形は無しにしよう。しかしな、ワシも娘達に何かしてやりたいのじゃ。じゃから給料ほどの金額ではなく、お小遣いとして少々の金額を受け取ってくれんか。」

 子を思う母心とでもいうのかの。

 こんな良い娘達にはついつい何かしらの形で手を差し伸べたくなるのじゃ。

「お心遣いありがとうございます。すみません、私のわがままを聞いて頂いて・・・」

「何を言う。子のわがままは当然の務めぞ。そなたはもっとわがままになって良いくらいじゃ。」

「そ、そんな!滅相もございません!こんなに良くして頂いているのに、これ以上はバチが当たります。」

 キサラムは手を振り首を振り、必死に遠慮してくる。

 う~む、固いのう。

 じゃかこれもキサラムの良いところなのじゃろう。

 まあこれ以上何かしてやるということはワシも少し考えるとして、今はこの怠惰な時間を楽しむとするかのう。

 ワシはキサラムの淹れたお茶を飲みながら朝日の照らす窓を眺め、ただただ時間の過ぎ行く時を堪能した。

 ・・・

 一時間程経った頃、アオイとミドリコ、そしてキロイが起きてきた。

「おはようございますぅ。主様ぁ今日も朝から変わらずお綺麗ですねぇ。キサラムさんもぉ素敵ですぅ。」

「ピィ!」

 朝の挨拶が長いアオイと極端に短いミドリコ。

 そしてキロイは・・・

「お母さん、アオイさん、ミドリコちゃん、おはようございます!お姉ちゃんもおはよう!」

 そう言ってキサラムに抱き付いた。

 うむうむ、姉妹仲は良好なようじゃのう。

 見ててほっこりするわい。

 さて、それでは朝食の時間じゃな。

「アオイや、みんな揃ったことじゃし朝食を頼むぞ。」

「はいぃ、わかりましたぁ!食料フードぉ!」

 ワシの注文に即座に答えたアオイが出したのは、一人五品目ある料理じゃった。

「これはぁ焼き鮭定食っていってぇ、私のいた世界ではぁ定番の朝食メニューですぅ。」

 ほうほう。

 ご飯と魚、後は汁物と小皿に乗った野菜、そしてこの・・・豆?

「アオイや、これは何じゃ?」

「それは納豆っていいますぅ。大豆を発酵させて作った食べ物なんですがぁ、ご飯に乗せて食べるとぉすっごく美味しいんですよぉ。・・・お気に召せばいいんですがぁ・・・」

 この納豆というものに対しては少し自信なさ気なアオイ。

 うむ、確かに発酵させた食べ物の独特の匂いがするのう。

 じゃがアオイはこれを美味しいと言っておるのじゃ。

 食べてみても損は無いじゃろう。

『いただきます!』

 キサラムとキロイ、そしてミドリコは一斉に朝食を食べ始めた。

 ふむ・・・

 ワシも頂くかの。

 取り敢えずこの納豆と言うやつをご飯に乗せて・・・

「主様ぁちょっと待ってくださいぃ!キサラムさん達もぉまだ納豆をそのままご飯にかけないでくださいぃ!」

 ワシ達の行動に慌てて待ったをかけるアオイ。

 何じゃ何じゃいきなり。

 ご飯に乗せて食べろと言ったのはこやつじゃぞ。

 するとそんな思いを読み取ってか・・・

「実はですねぇ、その納豆ぅ。美味しい食べ方があるんですよぉ。」

 アオイはワシ達の手を止めさせた理由を説明する。

 おお、そうなのか。

 つまりワシ達にこの納豆というものの本来の旨さを味わわせてくれるというわけじゃな。

 うむ、ありがたいのう。

 正直失礼なことじゃが、今のところは旨そうに思えんからな。

「えぇ、先ずはその容器に入ったままでよく豆をかき混ぜてくださいぃ。」

 アオイは手をくるくる回し、分かりやすく教えてくれる。

 なるほど、こうか・・・


 ・・・


 おおお・・・


 何か、物凄く粘っこい糸が出てきたぞ。

 まるでアークスパイダーの糸のようじゃな。

 ・・・これは本当に食べられるのか?

「皆さん良い感じに粘らせましたねぇ。そしたらぁ、次にその袋に入ったタレとカラシを入れちゃって下さいぃ。横に切り口がついてるんでぇ、そこから開けてくださいねぇ。」

 アオイはワシ達に次の指示を出した。

 フム、これか?

 これとこれを入れればいいんじゃな。

 よし、では・・・

「あぁっ、気をつけて下さいぃ。勢いよく開けるとぉタレがピュッと飛び出しちゃいますんでぇ。」

 ワシ達が開ける前に、アオイはそう注意事項を言ってくれた。

 危ない危ない。

 ガッといくところじゃったぞ。

 ワシは慎重に、ゆっくりタレを開けた。

 これは面白いのう。

 液体を入れる為のこういう入れ物があるのか。

 アオイの指示で納豆にタレとカラシを入れ、更にかき混ぜるワシ達。

 そして・・・

「さあぁ、それをご飯にかけちゃって下さいぃ!」

 いよいよ納豆をご飯にかけた。

 おお、これは・・・何とも言えず・・・旨そうじゃ。

 米の艶に、納豆の粒と糸が溶け込み、輝いて見えるぞ。

 これは何と言うか・・・神々しさすら感じるのう。

 キサラムもキロイもミドリコも、その目に写る食べ物に感動しているようじゃ。

「まだ終わりませんよぉ!食料フードぉ!」

 まだこれ以上の何かあるのか。

 アオイはスキルで、何やら刻まれた野菜を出現させた。

「これをその上に乗せてお召し上がり下さいぃ!」

 そう言いながら、それぞれの納豆ご飯の上にそれを乗せるアオイ。

 ほう、これはまた見た目が更に美しくなったのう。

 何やら食欲が更に増したぞ。

 ワシ以外の者達は皆、恐る恐る納豆ご飯を食べ始めた。

 してその感想は・・・

「美味しい・・・」

 先ずキサラムが感動の声を出す。

「うん!これ美味しいね!ご飯がどんどん進んじゃう!」

「ピィ!ピィ!」

 キロイもミドリコも上々な様じゃ。

 うむ、ワシも遅ればせながら食べるかの。

 スプーンにご飯と納豆と、後この刻み野菜を乗せて・・・

 よし。

 パクッ

 モグモグ・・・

 うむ・・・

「これは何とも面白いの!」

 匂いは独特。

 口の中に残る粘り。

 個性的な味。

 そして刻み野菜の辛み。

 しかし・・・

 それらの要素が合わさることで、この食べ物は一つの料理として完成されていると言って良いじゃろう。

 今ワシの口の中では、様々な感覚が働いておる。

 つまり、旨いもいうことじゃ。

「主様ぁ、お口に合いませんかぁ?」

 ワシの顔色を見て、不安そうにモジモジしているアオイ。

 ああ、そういうことか。

 いつもなら間髪いれずに旨い!と言っていたからの。

 面白い=旨いとは思っておらんのじゃな。

「そんな顔で見るな。この納豆ご飯、ワシの口に合っておる。とても美味じゃよ。」

 ワシは少し微笑みながらアオイにそう言った。

「よ、よかったですぅ。主様は勿論ん、キサラムさん達もぉ納豆が嫌いじゃなくてぇ。実はですねぇ、この納豆ご飯ん。結構好き嫌いが分かれる食べ物なんですよぉ。」

 ホッと安心した様子のアオイ。

 そうなのか?

 こんな旨いものを嫌いな奴がおるのか。

 フム。

 もしかすると・・・

 アオイのいた世界では食文化が進んでおるからのう。

 色々な旨い料理が蔓延っている為、味覚の個性が強くなっているのかもしれんな。

 そう言った意味では、飽食世界の弊害と言えるじゃろう。

「アオイや、これは何じゃ?」

 ワシは続いて小皿に乗った野菜に興味を示す。

 これもワシの知らん食べ物じゃのう。

「これはキュウリとカブの浅漬けですぅ。これもぉとってもご飯に合うんですよぉ。」

 ほうほう。

 どれ・・・

 パクッ

 ポリポリ・・・

 うむうむ!

 確かにこれは飯が進む食べ物じゃ!

 そしてこの魚を食べて・・・

 おお!

 これもまた旨い!

 これは本当に魚か?

 切り身をただ焼いただけに見えるが、そうではないのかのう。

 もしかして・・・このかかっている液体に何か秘密があるのか?

 ワシは堪らずアオイに聞いた。

「アオイや、このかかっている液体は何じゃ?」

「それはぁ醤油っていいますぅ。私のいた世界ぃ、っていうかぁ、私がいた国ではぁ料理に欠かせない調味料なんですよぉ。」

 なるほど。

 アオイにとってはとても馴染み深いものなのじゃな。

 しかしワシとしては画期的なものじゃ。

 この醤油がかかった他の食べ物も食べてみたいのう。

 まあそれはまた次の機会にするかの。

 ワシは一旦汁物に口を付けることにした。

 ん!

 これも旨いのう。

 何というか、胃に染み渡る暖かい旨さじゃ。

 全く、これらを朝食で食べられるなんて何とも贅沢な話じゃのう。

 いつものようにゆっくり味わって食べているワシに対し、アオイとキロイ、そしてミドリコはもう朝食を食べ終えて談笑している。

 ん?

 キサラムはまだ食べ終えておらんのか。

 前にラスクを食べたときはそんなに遅い食速ではなかったはずなのじゃが。

 もしやこやつ・・・

 ワシに合わせておるのか?

 ワシ一人を置き去りにしないよう、敢えて食べる速度を下げておるのじゃな。

 何ともこやつは・・・

 良い娘なんじゃ!

 ここまで気遣いができる女子おなごなど今時珍しいぞ。

 キサラムが娘になってくれてワシは本当に誇らしいぞ!

 その後もワシの食べるペースに合わせるキサラム。

 そして食べ終えたのも殆ど同時じゃった。

「フゥ、満足じゃ!・・・さてキサラムや。どうする?そろそろ帰るか?」

 キサラム達の家をずっと開けておく訳にもいかんからの。

 それに守衛もヤル気満々のようじゃからな。

 ここに居させ過ぎるのも良くないじゃろう。

「はい、そうですね。お母様と離れるのは心苦しいですが、精一杯守衛としての役目を果たしたいと思いますので。」

 キサラムは凛として立ち上がると、ワシに一礼する。

「ごちそうさまでした。またお母様とアオイさん達にお会いできる日を心待ちにしております。」

 うむ、礼儀正しくて好感が持てるのう。

 しかし姉とは違い、妹のキロイは少しグズってしまった。

「やだよぉ。だって、次に会えるのなんていつになるかわかんないし・・・お母さんに毎日でも会いたいよぉ。」

 そう言って泣き出してしまう。

 うう~む・・・

 こんな可愛い駄々を見てしまったら・・・母親心が擽られるわい。

「よし、わかった。それならばいつでも会えるようにしてやるぞ。ちょっと待っておれ。」

 ワシは異空間収納の中にある『あるアイテム』をキサラム達の家に空間移動を使って送った。

 そしてそのアイテムの対となるものをこの家のリビングの壁に、これまた空間移動を使って設置する。

「今そなた達の家とこの家を繋ぐ『転移の扉』を取り付けたからの。これでその扉をくぐればいつでもここに来れるぞ。来たいときに遊びに来るが良い。」

 これがあれば楽に行き来できるからの。

 もっと早く設置しておけばよかったわい。

「やったー!ありがとうお母さん!大好き🖤」

 そう言ってワシに抱き付いてくるキロイ。

 うむうむ、可愛いのう。

 この様子に、てっきりアオイはやきもちを焼いているものだと思ったが、ただただ微笑ましいものを見るかのように眺めていた。

 この辺の分別は出来るようじゃな。

「では私達はこの扉から帰らせて頂きます。それでは・・・失礼します。」

「お母さん、アオイさん、ミドリコちゃん。またね~!」

 二人は挨拶をして、気持ちよく帰ろうとした。

 その時・・・


『!?』


 おや・・・

 誰か来たようじゃの。

 キサラムもキロイもミドリコもこの気配に気付いたようじゃ。

 誰かまではわからんようじゃが・・・ワシはわかるぞ。

 この魔力。

 間違いなくあやつじゃ。

 ワシは仕方無く玄関から外に出て、そやつと言葉を交わすことにした。

 キサラムもキロイも、一度帰ろうとするのを止め、ワシの後に続く。

「あっ、クロア様!お久しぶりです!」

 ワシの姿を見るや否や、直ぐ様声をかけてくる若造ことマルタス。

 この前のように騎士達を引き連れて結界の外に立っていた。

 ハァ・・・

 やはりこやつか。

 やれやれ、あまりアオイに会わせたくないのう。

 と思っていたら、遅れてやって来たアオイがマルタスを見て、予想通り明らかに顔色を変える。

「グズ男がぁ・・・」

 殺気の籠った呟きをするアオイ。

 本当にこやつはマルタスが嫌いなのじゃのう。

 ワシに色目を使ったことがそんなに罪なことなのか?

 よくわからん。

「お母様、彼は一体何者なのですか?」

 初見のキサラムはワシにそう質問してきた。

 キロイもマルタスを見るのは初めてということで、キサラムの後ろに隠れてしまう。

「奴はアサワハヤイ王国の第一王子、マルタスじゃ。この前、アオイが家に住むようになった当日にここに来たのじゃ。」

 ざっくりじゃが、ワシはキサラム達にそう説明した。

「なるほど・・・人族の王族というわけですね。でも・・・それにしてはレベルが低すぎるような・・・」

 鑑定でマルタスのステータスを確認したのじゃろう。

 魔族基準で考えてしまうキサラム。

 まあそうじゃな。

 この程度のレベルでは、魔族領なら貴族にもなれんしな。

 人族が魔族と力を均衡させている理由は他にあるのじゃ。

 それはそうとして・・・

「マルタス坊や、何しに来た。ワシはそなたに興味が無いのでな。とっととここから立ち去れい。」

 どうせろくなことではないからの。

 初めから冷たくしておいた方がよいのじゃ。

 しかしマルタスは思ったよりも打たれ強いらしい。

「アオイ殿もお久しぶりです。相変わらず可愛らしいですね。」

「ウゲェ・・・」

 世辞を言うマルタスと心底嫌そうな声を上げるアオイ。

 よくもまあ一国の王子に褒められてそんな顔が出来るものじゃ。

 ワシがある意味アオイに感心しておると、その隙にマルタスはキサラムとキロイに目を移していた。

「そちらのお二人は誰なのですか?」

 当然の疑問をワシに投げ掛けてくるマルタス。

 答えてやる義理はないが、答えない理由もないしの。

 しょうがない。

 二人を紹介してやるか。

「この二人は最近養女になったワシのかわいい娘達じゃ。何か文句でもあるか?」

 ワシは少し威圧しながらマルタスにそう尋ねた。

「いえいえ。文句などは決してありません。ただ・・・美女と美少女の組み合わせが堪らなく尊いというか・・・」

 思ったことをさらりと口に出すマルタス。

 ほう、わかっておるではないか。

 他人に娘を褒められると親としては鼻が高いぞ。

 しかしこれを聞いてアオイの表情が更に険しくなる。

「主様ぁ・・・こいつぅ、いよいよ消しますねぇ。」

 言いながら剣の柄に手を置くアオイ。

 ・・・お?

 何じゃ何じゃ!?

 どういうことじゃ?

「待て待て待て待て!一体何がどうなってそうなるのじゃ!」

 別にマルタスはワシのことをどうこう言っていなかったぞ?

 今度は何がアオイの逆鱗に触れたというのか。

「だってぇ、あいつぅ主様の娘であるぅキサラムさん達にも如何わしい目を向けたんですよぉ。許せるわけないじゃないですかぁ。」

 話ながらアオイはスッと剣を鞘から抜いた。

 ん?

 そうだったのか?

 しかしそれでも殺すほどではないじゃろ。

 じゃが、怒っているのはアオイだけではのかった。

「アオイさん、あたしも手伝うね!お姉ちゃんにあんなやらしい目を向けるなんて耐えられないから!」

 キロイもヤル気満々じゃ。

 アオイはまだしもキロイが暴れたら森へのダメージが計り知れん。

 ここはやはり止めるべきじゃの。

「やめんか!あやつを殺処分したらアサワハヤイ王国と事を構えねばならんのじゃぞ。面倒くさいじゃろ。」

 マルタスの国を滅ぼすことは容易に出来るが、その後の処置が面倒なのじゃ。

 国が一つ無くなればパワーバランスが崩れ、人族同士の争いが生まれるからのう。

 魔族ならば魔王が健在なら、その圧倒的な力で国が滅んでも立ち直らせることが出来るが・・・

「ちょっちょっと待ってください!今日はクロア様にお願いがあってきたのです!」

 命の危機を感じ取ったマルタスは、慌てた様子でそう取り繕ってきた。

 ん?

 ワシにお願いじゃと?

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