第2話 ステータス確認
家の中に小娘を入れ、一先ずリビングに通した。
「その辺の椅子に座っておれ。」
そして今は客と見なし、二人掛けのテーブル席に座らせお茶を出してやることにする。ワシが食後に飲もうとしていたユリクアという、この森でしか手に入らない植物の葉を乾燥させて作ったお茶じゃ。
カップにそれを注ぎ小娘の前に置き、ワシは対面に座った。
「そう言えば自己紹介がまだでした~。私アオイと言いますぅ。花の女子高生ですぅ。」
律儀な小娘、もといアオイ。女子高生というものは知らんが、名乗られたからにはこちらもそれに答えなくてはいかんじゃろう。
「ワシの名前はクロア。この森に永らく住んでいる魔女じゃ・・・して、それは一体なんじゃ?」」
テーブルの上には先程アオイがスキルで出した食べ物が置かれている。見たこともない食べ物。俄然興味がひかれる。
「これはフライドポテトですぅ。宜しければどうぞお召し上がり下さい。」
言いながらその一つを取り、ワシの口に持ってくるアオイ。
「はい、ア~ン。」
ワシは子供か!しかし欲求に勝てなかったワシはアオイの手に持つそれを口の中に入れた。
「!」
外はカリカリ、中はホクホク。そして程好い塩味が口の中に広かった。
これは・・・旨いな。
気付けばワシは、自らそれを手に取り次々に口内へと放り込んでいた。
そしてあっという間にフライドポテトなるものは無くなってしまう。
「ふぅ。満足じゃ🖤」
「お粗末様でしたぁ。」
ワシの食べっぷりがよかったのか、アオイは笑顔でこちらを見ている。
・・・むぅ。
少し恥ずかしいのう。
「ゲフンゲフン・・・ど、どれ、早速じゃがステータスを見せてみよ。」
咳払いで恥ずかしさを誤魔化しながらそう言うワシに、小娘は困った顔をした。
「あの~、どうやって見るんですか~。やり方がわからないですぅ。」
「ああ、そうじゃったな。何、簡単なことじゃ。頭の中で『ステータス閲覧』と唱えれば自分から少し離れた空間に表示されるのじゃ。やってみぃ。」
「わかりましたぁ。え~と・・・ヒャッ!」
突然正面に現れたステータス表に驚くアオイ。
初々しい反応じゃな。ワシは座っていた席を離れ隣に回り、一緒にステータスを確認する。
アオイ
属性 光
職業 女子高生
年齢 16
性別 女
レベル 1
体力 17
攻撃力 3
魔力 33
物理防御力 9812
魔法防御力 9912
素早さ 21
魔法
現在習得魔法無
スキル
鑑定
「なるほど、やはりレベルは1か・・・って何じゃ!この防御力は!」
思わず声を上げてしまった。それはそうじゃろう。この防御力では今の魔王でも傷1つ負わせることは叶わん。
道理でこの森で生きてこられたわけじゃ。しかし・・・
「じゃが防御力は凄いが・・・攻撃力は幼児並みじゃな。」
これでは低級の魔物でさえ倒せぬじゃろうな。まあレベルが上がれば多少マシになるじゃろうが。
「一般的にはこの世界の人達のレベルはどれくらいなんですかぁ?特に私くらいの年齢の女の子なんかはぁ。」
ふむ。やはりそこは気になるか。ならば教えてやろう。
「そうじゃな。そなた位の年の普通の
そう、職業やスキル、体格や性格によってもステータスに偏りが出る。
なのでアオイも職業を変え、レベルを上げれば攻撃力や素早さ等伸ばしたいところを伸ばすことが出来るじゃろう。
まぁでも、職業を変えるということがそう簡単に出来るのならばの話じゃが。
職業にも適性というものがある。血筋や生まれ、生活環境等で大まかな職業が決まる。
そしてそこから逆ツリー状に枝分かれした上位職に進むことができ、最終的には自分に合った最上位職を目指すことが出来るのじゃ。
とはいえ、この5000年。最上位職までいったものなど片手で数えるほどもいないがな。
あっ、因みにワシは最上位職の更にその上の上の上じゃ。
「あの~、あなた様のステータスも見てみたいのですがぁ。俄然興味がありましてぇ。」
おずおずとワシに聞いてくるアオイ。うむ、まぁ他人のステータスに興味を引く気持ちはわかるが・・・
「構わんぞ・・・じゃが、あまり参考にはならんと思うがのう。」
言いながらワシは自分のステータスを開き、アオイの前にその一覧を移動させた。
ズイッと身を乗り出し、ワシのステータスに釘付けになるアオイ。
そんなにマジマジ見られると少し恥ずかしいわい。
クロア
属性 ???
職業 神魔聖邪賢女
レベル 99999999
年齢 5121
性別 女
体力 999556372
攻撃力 9999999968
魔力 298088703198
物理防御力 8900253493
魔法防御力 9556339482
素早さ 7055069929
魔法
全属性、全等級習得
スキル
全属性耐性・全状態異常無効
不老・自己修復・鑑定
空間移動・魔女の契約
自作魔法開発・意志疎通
異空間収納・魔力メモリー
その他諸々・・・
「何ですかぁ!この馬鹿みたいにデタラメな数字はぁ!最強じゃないですかぁ!もう魔法なんて、たくさん載せるのが面倒なのか全ってなってますしぃ。スキルもぉ。何ですか諸々ってぇ。どんだけ面倒くさがりなんですかぁ。しかも年齢・・・てっきり少し年上のお姉さんかと思ってたらぁ・・・おばあちゃん何てもんじゃないですよぉ!」
「やかましいわ!」
散々言ってくれたな。勝手に見た目で勘違いしたのはそっちじゃろ。確かにスキル『不老』を習得した18歳位の時から容姿は変わっておらんが。
それならそうで敬意を払わんか!
「ともかくじゃ。そなたのスキルもステータスも確認は済んだ。なので先程言った3つの条件を聞かせようぞ。」
この家に入る前に約束したことじゃ。しかし何やら怪訝そうにワシを見るアオイ。
「・・・何じゃ。不服か?ならばここから出て・・・」
「いえいえいえ!決してそういうわけじゃ無いんですがぁ・・・そのぉ・・・私のこと、食べたりしませんよねぇ。」
「食べるか!」
こやつ、ワシをなんだと思っておるのだ。そんな悪食ではないぞ、ワシは。
するとモジモジし出すアオイ。
「いや実際に食べるとかじゃなくてぇ・・・そのぉ・・・性的な意味で・・・」
「せんわ!そんなこと!」
何を言い出すんじゃこやつは。
寧ろこんなこと考えるこやつに恐怖を覚えるわい。
「ならいいんですぅ。あっでも、もしそういう気持ちになったら事前に言ってくださいねぇ。心の準備があるんでぇ。」
「ならんから安心しろ!」
全く戯けたことを言うのう。
どうやらこやつは頭のネジが何本か抜けているらしい。
・・・寝室に鍵を付けておこう。
「そんなことより条件を言うぞ。先ず1つ。そなたにはこれからここで炊事当番をしてもらう。幸いそなたにはうってつけのスキルが備わっておるしのう。まぁそのスキルが無くともしてもらうつもりじゃったがな。」
そう、ワシの楽しみの1つは食べることじゃ。朝昼晩の食事は欠かせない。
しかしこれだけ長く生きていると、この世界の食べ物はほぼ食しており、味の変化が恋しくなる。
従って、異世界から来たこやつに食事を作らせれば今まで味わったことの無いような美味しい食事を用意してもらえると思ったのじゃ。
そしてそれを踏まえた上で、アオイのスキルは嬉しい誤算じゃった。
「わかりましたぁ。でも・・・いいんですかぁ?私、貴女ほど長生き出来ませんしぃ。あんまり私の世界の料理に慣れちゃうとぉ、後で辛いんじゃないですかぁ・・・」
なるほど。
アオイの言いたいことはわかる。
確かに今のままではそうじゃろうな。
「安心せい。二つ目の条件を飲めばその問題は解決できる。そなたには魔女の契約を受けてもらおうと思っておるのじゃ。」
「魔女の契約・・・ですかぁ?」
「そうじゃ。このスキルはワシと主従の契りを交わすことにより、ワシの持つスキルの内から魔女の契約以外の3つをそなたと共有することが出来るのじゃ。しかしその代償に、そなたは一切ワシに攻撃することが出来なくなる。そして、ワシが死んだらそなたも命を落とすことになるのじゃ。」
つまりこの魔女の契約をアオイとすればワシのスキル、不老を共有することが出来る。そうすればアオイが老衰でいなくなることは無いじゃろう。
後はそうじゃな。疫病等が流行るかも知れんから全状態異常無効をつけておくべきじゃな。
後1つは・・・
などと考えておったワシだが、アオイはいやに神妙な顔をしている。
「つまりぃ・・・結婚するってことですねぇ。」
「違うわ!」
何を考えているかと思えば・・・
本当にこやつをウチに招いても良いのか?
確かにこの世界では同性結婚が広く認められているが、ワシにはそんな気など更々無い。
いや、同性異性に関わらず結婚などするつもりは無いのじゃ。
「先程も言った通り、これは主従契約じゃ。勿論ワシが
「そうですかぁ。わかりましたぁ。今の2つの条件は快く受けさせてもらいますぅ。でも・・・もう1つあるんですよねぇ。」
「ああ、そうじゃ。もう1つある。そしてこの条件が一番重要じゃ。」
ワシは目を細め、アオイを見る。
別に睨んだ訳ではないのじゃが、アオイは身体を緊張させ、ごくりと唾を飲んだ。
「最後の条件は・・・刺激を欲してはならん!絶対にじゃ!ワシはここでダラダラのんびり暮らして生きたいんじゃ。冒険を求めるな!出会いを求めるな!そなたはただただワシと共にここで自堕落に過ごすのじゃ!」
これだけは譲れん!
あんな国同士のいさかい何ぞに2度と首を突っ込むものか!
面倒くさい!
千年前、あまりにも面倒くさくて危うく世界を滅ぼしそうになってしまったわ!
まあその時はオデッセアになだめられて未遂で済んだが・・・
何にせよ!
もうゴタゴタは嫌なのじゃ!
「・・・大丈夫ですよぉ。私ぃ、あんまり活発な方ではないんでぇ。のんびりダラダラは寧ろ望むところですぅ。逆に刺激的なことばかりさせられたらどうしようって思ってましたぁ。」
そう言って朗らかな笑顔を見せるアオイ。
何じゃ・・・
思わず胸の辺りがトクンっとしてしもうたではないか。
こやつ、ワシに庇護欲を掻き立てさせるなど・・・やるな。
「そ、そうか。では魔女の契約を受け入れるのじゃな。」
「はいぃ。さあどうぞぉ。」
アオイは目を閉じ、唇をすぼめている。
こ、こやつ・・・
付き合いきれんワシはアオイに向かって手をかざし、スキル『魔女の契約』を使う体勢をとる。
因みにこのスキルは相手の同意がなければ効果を発揮することはできない。つまり事前に対象者に説明し、納得させ、了解を得なければならないのだ。
そしてもうすでにアオイとは合意しておる。後はワシの魔力をアオイに流し、魔女の契約を使うだけじゃ。
先ずは掌から魔力を飛ばし、それでアオイを包み込む。そしてその後その魔力をアオイの全身に行き渡らせ、ワシの魔力と同調させた。
これで完了じゃ。
「フゥ・・・おい、いつまで馬鹿なことをしておる。もう契約は済んだぞ。」
未だに目を閉じ唇を伸ばしているアオイ。そして契約が済んだことを知ると、盛大にガッカリした声を上げた。
「ええええー!だってまだ唇に何も触れていないじゃないですかぁ!これで契約したと言えるんですかねぇ!」
「何を言っておるんじゃそなたは!」
全く・・・
何故ワシが少し怒られねばならんのじゃ。っというより、こやつはワシにどんな感情を抱いておるのじゃ?
・・・仕方ない。
ワシはアオイに手を伸ばし、優しく頭を撫でてやった。
「何はともあれ、これでそなたはここの住人じゃ。これからは宜しく頼むぞ。」
小動物のように気持ち良さそうな顔で頭を撫でられているアオイに、ワシは歓迎する言葉をかけてやった。
それを聞いて嬉しかったのか、隣に立つワシに抱きついてくるアオイ。
「ハイぃ。こちらこそ宜しくお願いしますぅ。主様ぁ🖤」
うむうむ、喜んでおるのう。じゃが・・・安心したのじゃろうな。
アオイの声は震えておる。
もしワシと出会わなければ・・・
もしこの家で暮らせなかったら・・・
この数日間悩んでいた、抱えていたそんな不安が今やっと解消されたのじゃ。
そりゃ喜びもひとしおじゃろう。
しかし・・・
・・・うむ。
先ずは湯あみをさせねばならんな。
いや、決してアオイが臭いわけないぞ。寧ろよくここまで臭わんもんじゃと感心するくらいじゃ。
だがな・・・肌の汚れとベタベタはどうにもならんようじゃ。
そんなワシの困った顔を見て、自分が数日間湯あみをしていなかったこと気付いたアオイは急いで離れる。
そして自分の身体の匂いをクンクンとかぎ、恥ずかしそうに身を縮めた。
まあ、恥じらいがある分、まだ可愛げはあるかのう。
それに主様か。
中々いい響きじゃ。
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