すねにきず持つ身ならねどうつせみの世はしかすがに歩きづらしも

【読み】

すねにきづもつみならねどうつせみのよはしかすがにあるきづらしも


【語釈】

すねにきず持つ(脛に疵持つ)――隠している悪事がある。自分の身に後ろ暗いことがある。やましいことがある。脛疵。足にきず持つ。

[精選版 日本国語大辞典]


しかすがに――上の事柄を「そうだ」と肯定しながら、もう一つの事を付け加える意を表わす。それはそうだがしかし。そうはいうものの他方では。それはそうだがやはり。そんなはずではないのに。

[精選版 日本国語大辞典]


【大意】

すねにきずをもつ後ろ暗い身の上ではないものの、それでもやはりこの世は歩きづらいことである。


【付記】

「しかすがに」は短句(57577の5の部分)で用いるのがふつうだったという。ここでは枕詞を優先的に短句に置いた結果、長句(おなじく7の部分)に来た。


「世」には「おる」「過ごす」「渡る」などの動詞も接続するが、ここでは脛との接続に鑑みて「歩く」とした。また「……しづらし」は、「……しがたし」よりは実現する可能性が高いだろうと思う。


【例歌】

梅の花散らくはいづくしかすがにこのの山に雪はふりつつ 大伴百代おおとものももよ

ありそ越す波はかしこししかすがに海の玉藻の憎くはあらずて 作者不詳

三島野に霞たなびきしかすがに昨日も今日も雪はふりつつ 大伴家持

うちらし雪はふりつつしかすがにの苑にうぐひす鳴くも 同

風交じり雪はふりつつしかすがに霞たなびき春さりにけり 作者不詳

まどろまぬ物からうたてしかすがにうつつにもあらぬ心地のみする 作者不詳

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