廻れマワれ
大山 たろう
1-0:忘れた頃に、その夢は訪れる
――また、同じ夢を見る。
これが夢だと分かっているのは、始まりから終わりまで、何一つ変わらないものを、変えられないのに繰り返すから。
――ただ、同じ夢を見る。
忘れた頃に、思いだせと言わんばかりにこの夢を見る。
ゆらゆら、ゆらゆらと意識だけが漂う。
私を抱きかかえる女性と、それを見て笑う男性の夢。
石造の家が主流のこの国で、少なくとも見た覚えのない木造の家に住んでいる二人は、私を抱き上げては笑顔になる。
顔こそ思いだせなくても、その二人が喜んでいることだけは何故か感じられる。
暖かい日と柔らかい感触に包まれながら、しかし終わりを告げるようにどんどんと意識が遠のいていく。
笑い声溢れる、暖かい家の夢。幸せな未来を感じさせる家族の夢。
ただ、それがどんな夢か、私にとっての何なのかは、大体想像がついていた。
私は、両親の顔を知らない。
私は捨てられたのだと育ての親のような人は言う。
きっとこの二人は、私を捨てた両親なのだろう。そう結論付けていた。
しかしいつものように、この夢は小さく確かに疑問を残して行く。
こんな笑顔になる夫婦が何故、私を捨てたのだろうか。
小さな疑問はうろうろと頭の中を反響する。
毎度のように思いだせないことに諦めを抱きながらも、私の人生にはもう、関係のないことだと、これもまた毎度のように考えるのをやめる。
頭を閉じるように、何も考えないように。
少し待てば次第に風景は崩れ、二人の輪郭も歪んでいく。
それをただぼおっと、なんの感情も抱かずに見つめる。
すると、やはりというか、終わりが近づいてくる。
ゆらゆら、ゆらゆらと淡い夢の水面を破るように、体が浮かんで――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます