第36話 「今夜、すべてのバーで」:中島らも
中島らも。
今の40代50代くらいの世代の人は、テレビ等で見たことがあるのではないでしょうか?
いわゆる、作家!文士!というわけではなく、コピーライター、ミュージシャン、コメンテーター様々な肩書を持つ、マルチタレントというのが正しい気がします。
テレビにもよく出ていたようで、youtubeで一部始終が見れたりします。見た瞬間、(悪い意味で)異様な魅力を感じると思います。
「酔っているのか?このおじさん」
と感じるでしょう。そうです。彼は、酔っ払っているのです。
あらすじ
起:10代の時から、20年近く、一日たりともシラフであった日などない重度のアル中が主人公。バケモノクラスの肝臓を持つ彼も、ついにアルコールの毒素の前に膝をついた。入院した彼の断酒生活が始まる。
承:魔女のような3人のお婆さん。サタンのようなイカツイ医者。透き通った心を持つ少年。気の強い女性秘書。彼の周りには個性的な登場人物が揃っていた。そして、断酒生活によって、彼の体は快方に向かっていき、コーヒーミルクのおいしさなど、見失っていた人生の喜びみたいなのも発見できた。
転:しかし、そんな生活も長くは続かない。外出が許された日。彼は、酒を飲む。一杯だけと思った彼の意思は、脆く崩れ去り、深酒をしてしまう。夜遅く。門限を過ぎて病院に帰ると、あのサタンのような医者が待ち構えていた。彼は、ベロベロに酔っ払っていた、、、。
結:省略
面白ポイント①:混じりっ気のない喜怒哀楽
→かっこいい言い方をすると、小説家は言葉という色彩を自在に扱い、小説という絵を描きます。言葉を操り、色を複雑に組み合わせ凡人では思いつかない美しい色彩、登場人物たちの心情を表現します。
→しかし、中島らもは、そんな所謂作家とはまた違った絵を描きます。彼は、複雑に色を混ぜることはしません。原色です。チューブからRGBの原色を出し、水もつけずにキャンバスに塗りたくる。そんな、現代アートみたいな作品を書きます。
→凝った文章が好きな文学マニアからすると、物足りないとか、心情を描き切れていないとか、そんなマイナスな印象を持つかもしれませんが、たまにはこんなシンプルな絵も鑑賞してみてはいかがでしょう?
面白ポイント②:くっきりと浮かびあがる哀
→原色を使っているので、輪郭ははっきりとしています。
→前半は特に明るい色を使っているため、後半の「哀」をつかさどるパートが、いきなり現れた時の衝撃は大きいです。
→そして、物語の終盤「楽」のパートになり、主人公の抱えてきた業がわずかに中和され、カタルシスへと誘われる感覚は、”単純”という印象を受けるこの作品に、一気に深みを与えてくれます。
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