第32話 クリスマスのフロスト:R.D ウィングフィールド

あんまりミステリー小説を読まないのですが、1年に1回くらいの割合で、無性に読みたくなる時があります。

そこで、「このミス」を参考にして、エイヤ!と見つけたのがこの作品。ぜひググって、表紙デザインを見てください。なんかダサイ!

でありながら「このミス」をシリーズで3回くらい?受賞している名作刑事小説なのです。この作品の魅力は、一体どんなところにあるのでしょう?


あらすじ

エリート組の若手警官は、田舎のしょぼくれた町に転勤となる。上昇志向の強い彼は、すぐにこの街から出てやろうと気合を入れる。そんな、彼の相棒として当てが割れた刑事は、型破りなオッサン刑事で会った。そんな中、少女の行方不明事件が起きる。捜査に乗り出す二人。しかし、まったくウマが合わない。こんな調子で、事件を解決することなんてできるんでしょうかね?若手警官は、不安と反発心を抱きながら、捜査を進める、、、。


面白ポイント①:なんてことない結末

→ネタバレすいません。でも、結末は、そんなビックリ仰天みたいな内容ではありません。トリックが秀逸だとか、叙述トリックに騙されたとか、全くそんな感じはしません。

→ただ、きっちりと面白いです。やはり、主人公のフロスト刑事のキャラがいいです。キャラものですね。定番どころ、面白さの勘所をしかっかりと突いてきます。


面白ポイント②:ぼやける善と悪の境界線

→私は、本書評の29話「愛の不時着」で、「善と悪の境界があいまい」な作品が好きという感じの話をしました。

→キャラものの刑事小説、被害者は少女、、、こういった作品は、善と悪の境界がくっきりしそうなものですよね。愛される明るい主人公の陽の印象と、犯人の陰のコントラストが明確になるはずです。

→この作品も、確かに善と悪のコントラストは結構はっきりとしています。しかし、真相が明らかになった後、善と悪の境界線がわずかにぼやけるのです。


結び:名探偵コナンが嫌い

→私は、名探偵コナンが嫌いです。それは、犯人が明らかになった後の言い訳が、見苦しいからです。なんというか、善と悪の境界線を無くそうとして、急いで線を塗りつぶしたような感じがしてい嫌なのです。雑に、水をジャバジャバつけて、黒い線を塗りつぶそうとしている感じですね。当然、水はすぐに蒸発し、線ははっきりとしたままです。

→この作品は、コナンとは違い。善悪の間に、優しい筆遣いで、鮮やかなグラデーションを描きだします。それも一筆です。そのたった一筆に、この作品の非凡さを感じました。

→長い作品ですが、サクッと読めますので、ぜひ、その筆遣いを感じてみてください。

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