第2話 いのちの初夜:北条民雄

ハンセン病患者用施設に隔離された初めての夜。主人公は、”いのち”と出会う。

「苦渋列車」で芥川賞を受賞した西村賢太の愛読書。早熟の天才作家であり、ハンセン病患者でもある北条民雄の代表作。青空文庫で読めます。20分あれば読める短編。


あらすじ

 起:ハンセン病と診断された主人公は、隔離施設に入所することになった。彼はは落ち込み、施設への道中、自殺を考える。首を吊ろうとするが、寸前のところで決心がつかず、結局、施設へとたどり着く。

 承:施設へと入所した主人公は、あるハンセン病患者とであう。彼は、まだ病状が軽く、他の患者の世話係を務めていた。彼は献身的に他の患者たちを助けていて、主人公はその姿に感銘を受ける。

 転:夜。主人公は、痛みに苦しむ患者の叫びで目を覚ます。その時、世話係は暗闇の中、何か物書きをしていた。彼は、主人公に独自の哲学を語り始める。彼は言う。「ハンセン病患者は人間ではありません」

 結:<省略>


面白ポイント①:ルポタージュ(記録文学)、、、なのにファンタジー小説

→ハンセン病の現実を克明に描いたルポタージュ的な作品の筈なのですがこの作品は、一味違います。たしかに前半(昼)の描写では、つらい現実を見せつけられます。しかし、後半(夜)の描写になった時、読者は非現実の世界に導かれていくのです。

→誤解のある表現ですが、決して、”非現実”の世界を描写しているわけではありません。夜の描写も克明に、、、いや、昼よりもさらに明確に、、、現実を描写しています。しかし、なぜか、読者は、ファンタジーのような非現実の世界にいる感覚に陥ります。それもダークファンタジーの世界です。

→理由は明確。末期のハンセン病患者の姿、生き様があまりにも我々の日常とかけ離れているからです。


面白ポイント②:ダースベーダー

→そんな空気の中、世話係は語り始めます。非現実の世界で生きてきた彼の哲学が、この作品の最大の面白ポイントです。

→そのシーンを読んでいて、何かと印象が似ているなーと思ったんですが、あれです、ダースベーダーがルークに秘密を打ち明けたシーンと雰囲気が似ています。

→世話係の言葉は当然、私が君の父親だ。みたいな話ではないですが、死生観を一変させるくらいの深淵を、読者に突きつけてくれるのです。



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