カラスから始める異世界攻略
東ノ山
episode1 カラスになたよぉ
「・・・」
おいおい。
おかしいじゃないか。
俺さっき逃亡中の殺人犯に刺されただろ。
何でも生きとんねん。
少年は先程の出来事を思い出しながら、ユックリと眼を開く。
試しに体を動かそうとしたが満足に動かせなかった。
そこには本当に見知らぬ天井があった。
豪華の一言に尽きる何か分けのわからん装飾が施された天井には、どでかいシャンデリアがぶら下がっている。
病院でしたって落ちじゃあなさそう。
じゃあ、一体ここはどこなんだ?
「産まれたかっ!!!」
何だ今度は!!?
扉が乱暴に開く音と、大きな声にビクリと体を反応させると、声の主が俺の視界に入り込んでくる。
「ほほォー!かわいいなぁ!!」
幼さの残る顔立ちが淡いピンク色の髪と大きな瞳を際立たせている。
控えめに言う必要もなくかわええよ。
ものっそい美少女。顔に傷でも負わない限りきっと大人になったら美人になる。
「おいでー!!」
少女は髪を垂らしながら俺の体を両手で持とうとする。
ちょ!恥ずかしいんですけど!俺もう17歳だぜ!?
何て言うと思ったかい?
おいで~と言われたらどうするか。決まっているだろう。
お願いしますっ。
「ほぉーら!きゃー!可愛ぃっ!!」
おいおい、そんな振り回すなよ。脳が揺れちまうよ。
お?胸は・・・無いな。
少女はテンション爆上がりで俺を持ち抱えると抱きしめたり、振り回したりする。
あ・・の、本格的に・・・ヤバいのですがぁ・・・。
「お嬢様。生まれたばかりでそんなに振り回してしまうと可愛そうですよ?」
「そうだな!爺!可愛くてついテンションが上がってしまった!」
俺のことを気遣って、爺と呼ばれた燕尾服に身を包む白髪の御人が少女を嗜める。
爺・・助かったぜ・・・。
「ほら、お戻り」
お、お嬢様ありがとうございます。これでゆっくりできます。
少女もとい、お嬢様は俺をそっと元の綿が敷き詰められたベットに戻してくれた。
ふぅ、やっと戻れた。
状況を整理するに、コレはアレだ。異世界転生ってやつだ。
クラスのヲタクが言っていたから間違いない。
そして、このお嬢様はきっと俺の姉だろう。
俺の初めての姉弟がこんな美少女だとは何だか鼻が高い。
豪華な天井や、爺なんている所からして金持ちの家なんだろう。世界史とかで習う中世貴族と言ったところだろう。
金持ちで使用人いて、美少女の姉ちゃんもいる。
パネェー。
なんか、死んだから閻魔様とかと会うんだろうなとか思ってたからこっちで良かったよ。
「お嬢様。名前はもう決めましたか?」
「うむっ!」
え?それって親に決定権あるんじゃないの?俺の名前姉に決められちゃうの?
「お前の名前はペンペンだっ!」
ペンペンっ!!?
おい待てっ!!なんじゃそりゃ!人につける名前じゃねぇ!!
やばい、どうにかしてこのお嬢様をどうにかしないと・・・。
『ペンペンと名付けられようとしています。了承しますか?』
何だ今度は!?頭の中に声が響いてるぞ!!?
あぁ、でもいいや了承しません!!
ていうか、目の前のお嬢様と話し合いたいんですけど!?
『スキル『念話』の使用を開始します。』
念話?まぁいい。
『おいお嬢様』
「む!?ペンペンが念話だとっ!?」
『俺はペンペンじゃないです』
「そ!そんなっ!?」
お嬢様は衝撃的だったのか崩れ落ちて俺が見える範囲から消えてしまう。
この子じゃきっと話しにならん。爺の方にでも聞いてみるか。
『あの。俺の親ってどこにいるんですか?』
俺の念話が届いたのかお嬢様を心配していた爺が立ち上り、俺を見る。
「貴方の親は死にました」
『ん?俺を産んですぐ死んだということですか?』
驚く俺と同じようにじいも驚いて、順に説明を始める。
「先ずですね・・・・・・」
取り敢えず、爺の話から分かったこと。
俺の親はそこで崩れているお嬢様が殺したとのこと。
そして、偶々巣にあった卵を持ち帰って育てていたらしい。
そしたら、卵が帰ってきた俺が生まれた。
話を聞いて、俺は改めて自分の体を確認してみる。
黒い翼と黒いボディ。そして嘴。
お分かり頂けただろうか?
『俺、カラスじゃんか!!』
そう。俺、烏丸義樹はカラスに転生したのだ。
「カラス?それは貴方の名前ですか?」
爺はカラスを俺の名前だと思い込んでいるようだ。
前世でも、知り合いには『カラスマ』じゃなくて『カラス』って呼ばれてたし、もういいか。
『はい。俺はカラスです』
「それは失礼を致しましたカラス様。お嬢様。この子の名前はカラスと言うようですよ」
爺は、俺に一礼したあと崩れるお嬢様を起こしながら、俺の名前を伝えてくれる。
「カラス・・・ペンペンは嫌なのか?」
そんな、今にも泣きそうな目で俺を見るな。困ってしまう。
『名前まで付けてもらって、とても言いにくいのですが、俺はカラスです』
「そうか。カラスか・・・かっこいいな」
かっこいい?そうか?
お嬢様の泣きそうな顔は何故か嬉しそうな顔へと変貌していく。
「うん。『使い魔カラス』いい響きだっ。よしっ!カラスでいいぞ!」
『ど、どうも』
『使い魔ペンペン』とかマジで勘弁したい。そう考えるとカラスって名前がかっこよく聞こえてくる。
「よーし!私はミラ!こっちの爺は爺だっ!」
お嬢様は名乗ると爺の紹介までしてくれる。
爺は爺なんですね・・・。
「この城でミラお嬢様のお付きをしておりますワーグナーです。カラス様」
『えっと、カラスですよろしくおねがいします。ミラさんにワーグナーさん』
俺はどうにか体を起こして翼を畳んでペコリと頭を下げる。
「私のことは気軽に爺とお呼び下さい。」
「私もミラでいいぞ!」
『えっと、じゃあ、ミラに爺。これから宜しくお願いします」
もう一度、頭を下げて顔をあげるとミラは満面の笑顔、爺は穏やかな笑みを返してくれる。
『というか、俺が喋ってることを意外とすんなり受け入れてますけど、どうなんですか?』
「そうですね。モンスターは言葉は交わすことはできませんが、カラス様は魔族ですので、そこまでの驚きはありません」
爺が話すとミラも頷きながら、口を開く。
「でも、生まれたてで『念話』のスキルを使えるのはすごいと思ったぞ」
「それもそうですね」
口ぶりからしてスキルとかゲームみたいな概念が当たり前の世界みたいだな。ならさっきの声もみんな聞こえるもんなんだろう。今後は気にしないようにしよう。
てか、俺こんななりして魔族だったのか。
『もう一つ聞いてもいいですか?』
「なんなりと」
『えっと、ミラって何者なんですか?部屋とかすごく豪華なんですが・・・』
爺が答えようとすると身を乗り出したミラが先に口を動かす。
「聞いて驚くなよっ!!私はミラ・グオラザーム!!次期魔王なのだっ!!」
驚きのあまり、即座に爺に確認の視線を送る。
「はい。間違いありません。この方は魔族国家グオラザームの国王である魔王シュテルベン・グオラザームの一人娘であり次期魔王の座を約束された御方です」
爺の笑顔による肯定で俺は嫌でもその事実を認めるしかなくなる。
最後に念の為、恐る恐る聞いてみる。
『ということは、俺は次期魔王のペットといいことですか?』
「そうだっ!!」
「左様です」
うぉ〜。何かとんでもない家庭に転生してしまったんだが。
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