深夜外来に初めて行き世の薄情さを知る

 実は今、突発的に起きた急病になり、先程、病院の深夜外来へ初めて足を運んだ。

 前に救急車で倒れたパターンと全く同じと言える症状だと直感的に想った。

 私はいきなり体調悪化するタイプで、今回も昨日の時点では少し鼻水が出る程度で、週明けにでも病院に罹ろうと呑気に構えていた。

 しかし、時間が進むに連れて、症状はだんだん重くなる一方だった。

 財布の中には300円しか入っていない。

 なけなしの金でペットボトルの麦茶で水分補給をする。

 本日の深夜1時を回ると明らかにこれはヤバいと感じた。

 あの時と同じだ。

 以前、余りの苦しさで救急車を呼んで急患として運ばれたパターンだ。

 しかしもう一切眠れないし、息は苦しいし、熱も上がっている。

 救急車を呼ぶ前に、検索をかけた。

 急患の時はどうすれば良いのか?

 電話でその番号に電話した。

 名前だけは一丁前の場所だ。

 電話に出たのは、少し煽り属性を持つ、はっきり言ってムカつく奴。しかし病院を深夜往診してくれる場所を教えて貰わないとならない。

 症状を説明して何処に行けばとりあえずの処置が取れるのか確認した。

 向こうは嫌嫌ながらとある病院を探してくれた。しかしタクシーで自費になる。

 こんな状況で四の五の言ってられないので、タクシーを呼んで向かう。

 実は私の住む市では特定の病気持ちなら【タクシー券】というタクシーの金券が渡される。

 それがほんの少しではあるが残っていたのでタクシーで病院に駆け込んだ。

 鼻水は止めどなく流れ、息も口呼吸状態、頭は鈍痛で意識はあるが考えがまとまらない。

 

 緊急連絡先というものがあるが【生命に関わる事以外で電話するな】みたいな言い方がされていた。

 私からすれば充分に生命に関わると思うけどなと思っている──。

 確かに素直に「助けて」と言えば良かったかもしれないが、出発するときに


「こんな真夜中に皆、寝ているし、体も少しは動かせる。迷惑はかけられない」


 と考えて懇意にしているタクシー会社に頼んで配車を頼んだ。

 タクシーの運ちゃんは、明らかに病人状態の私に気配りしながら、どの病院に行くのか聞いてくれた。

 意識が朦朧としかかっているので


「税務署の近くの病院に──」


 と言うのが限界だった──。

 タクシーの運ちゃんはあの病院しかないと運んでくれた。

 間もなく入ると4人ぐらい深夜外来にきている人がいた。

 私も待合室で待った。

 体温と症状を聞いてきた看護師さんに体温計で測ると37.6℃と出た。

 やっぱりあったのね、熱。

 するとコロナかと疑われて外の寒い待合室に連れていかれた。

 随分な扱いしてくれた。

 深夜外来なので寒空の下、待合室とは思えん場所で


「今からコロナ検索しても陰性としか出ない。あなたは何を望みますか?」と聞かれた。

「とりあえずこの頭の鈍痛と鼻水の多さを何とかして欲しい。熱もあるしクラクラする──」


 診断はされずに薬を処方をされた。

 また寒空の下に出る。

 こんな時に同じホームにいる人の連絡先を貰っておけば良かったと後悔したが、今はとりあえずホームに戻る方法を模索する。

 ホームには夜勤は居ないので空っぽの事務所に電話してもしゃーない。

 緊急連絡先も「頼りにならない」と踏んだので電話には登録はしてない。

 知り合いのラインにヘルプを求めたが会話中なので応答無し。

 しかし幸運は残っている。

 まだホームに戻るだけのタクシー代金ならタクシー券での支払いはできる──。

 

 行きの時に世話になったタクシー会社に配車を頼んだ。それを待った10分間が途方も無い程、長く感じた。

 まだ5分しか経ってない。

 道行くタクシーに乗って帰る手もあったが配車を頼んだし、外が余計に寒く感じた。

 それはこの世の無情さも痛感していた。

 救いだったのは友人が夜中の3時なのに色々と一緒に考えてくれた──。  

 私は良い友人を持っているんだと痛感する。

 何とか帰りのタクシーに乗った。

 そして私は、タクシーの運ちゃんと会話を交わす。 


「世の中、結構、冷たいって言うか薄情ですよね」

「真夜中ですしね、3時じゃあ皆、寝ていますよ」

「ホント、そうだよね」

「何か、今日は相和交通(タクシー会社)さんにお世話になりっぱなしです」

「熱があるなら、水分補給はしっかりして下さいね」


 タクシーの運ちゃんが味方になってくれていたのは涙が出そうだったよ──。

 

 たんぽぽ並木の職員は本当に頼りにならないって事と、世の中の薄情さを痛感した、濃い夜であった──。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る