美琴のぶっちゃけトーク

翔田美琴

久しぶりの家族に電話した話

 今朝早くに、避難指示メールのけたたましい音が響いた。

 何回聞いても、心臓に悪い音で、ちなみに昨夜はとても嫌な想いをした。

 何時からだったのか。

 最近の私は、グループホームの1階に降りる度に空気を感じる事に執心している。なぜなら、事務室に空気を重くするサービス管理責任者がいるから。

 ここでいう「空気が重い」とは、心霊的なものではない。何と表現すれば良いのか。敢えて言えば、「その人に心臓を掴まれて呼吸が苦しくなる」とでも言うべきか。

 実はこの原稿を書いた数分前にも案の定、その空気を感じた。ラインで繋がる友人には霊媒師みたいと表現された。私の場合は1階に降りる階段の時点で、それを感じる。何となくだが。

 生生しく「空気が重い」のだ。活気というものを感じない。そして等しくその空気を吸うと私は身体が拒絶反応をも起こす。呼吸が苦しくなったり、心臓の鼓動が早くなったり。精神的にもくる。その日はとても良かった日でも台無しにされる気分。

 最近は夕飯も不味く感じる。

 あんまり関わる事は無いが、でも関わるしかない嫌な男だ。ちなみに私は部屋でその人を「ハゲのクソ野郎」と呼称している。あんな奴、それで充分だ。

 夜にそんなものを感じた私は、それを忘れる為にゲームをプレイした。真夜中過ぎに雨音が激しくなり、何だか眠れない。いいや。朝までゲームして午前中は寝よう。そうしていよいよ寝落ちしようとしたら、けたたましい避難指示メールがきた。

 心臓は飛び出るくらいに驚いて、嫌な胸騒ぎまでする。午前中はずっと眠っていたが見た夢もなかなか恐ろしい夢で、登場人物が救いのない状態になった所で「ヤバい」と思って飛び起きた。

 この土日、あんまり良い事はないな。

 そんな事を思ってヤフーのアプリを開くと、私が住む地域に避難指示が。よくよく目を通すと実家の地域も避難指示の表示が出てる。避難しているのかな。珍しく私は電話をかけた。かれこれ2年ぶり。

 家族は避難してなかった。声の感じは至って私が知る家族の元気な声。父親が出た。


「何だ。お姉ちゃんか」

「久しぶりー。そっち避難指示が出ているようだけど元気してるー?」

「大丈夫。雨がだいぶ降ってるけど何も起きてない」

「母さんとも話すか?」

「うん」


 そして、母とも話す。連絡来ないから今、何処に居るのかと聞かれ、グループホームの並木にいると話して、住所も変わってないと話した。

 実家の方にも緊急メールが来て、心臓に悪いけたたましい音が響いたようだ。

 だけど、避難指示については知らないと言った。さすが我が家。実家はかなりの高台にある。実家が沈んだら世界も沈んでいる。ちなみに私のホームも沈んでいるだろう。実家の辺りは山もない。土砂崩れの心配もない。

 そしてお互いに近況報告。

 両親は既にコロナウイルスワクチン接種を2回果たしており、弟はまだらしい。なかなか順番が取れないし、私や弟の年齢層は受けられないのが実状。

 母はストレスなどで悩まされているけどまあ元気そうで何よりだった。

 実家では父が2台めの車を買ったとか。

 色々驚く事があった。


「たまには家に帰って来たら?」

「そうだねー。今年中には一度、顔を見せていい?」

「いいよ。あんたの部屋、父さんに占領されているけど」

「私もホームに帰るから大丈夫だよ」


 久しぶりに家族の声を聞いて、心が軽くなったような気がする。

 なんだかんだ言っても、家族がいるというのは幸せな事なのかな。

 そう想った私だった。

 近日中には一度、家に顔を見せようと思う。

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