バイオレンスおかゆ(夜光虫シリーズ)

レント

第1話

「そういえば、ここんところ騒がしくないね」



 出勤時にたまたま隣人と会った。

ジャンボは困り、今仕事に行こうとしてる自分を誤魔化したくなる。

しかし、すぐに白状するように答えた。



「実はその……チョコとバニラが珍しく風邪で寝込んでまして……」

「ええ!?そういうことは早く言いな!」



 隣人は小さな花壇の手入れをそうそうに切り上げ、二人の状態をジャンボに詳しく聞いた。



「じゃあ、食欲は多少はあるんだね。よかった。あと薬も飲んでると」

「ええ…本当はそばにいてやりたいんですが」

「そう簡単に休める仕事じゃないだろ?だからこういう時はお互い様だから」



 ジャンボは気まずそうにしていたが、隣人は二人の看病を引き受ける気まんまんだった。



「いいんですか?」

「良いも悪いもないよ。私が見てるから、安心して仕事行ってきな」



 そうだ、この人はこういう人だった。なんて改めて今までの事を思い出す。

普段とは全く違う、弱々しい声を出すチョコとバニラは、勝気に笑っていたが、置いていくのは本当に辛かった。



「本当にありがとうございます。今度なにかお礼させてください」

「水臭い奴だね。でも……ま、期待してるよ」



 隣人はヒラヒラと手を振って、ジャンボ達の家の中に入っていった。

「出たな、ババア!」なんて失礼な叫び声と、一喝する声が聞こえた。

あとでお礼と謝罪をまとめて伝えよう。

ジャンボはやっと少しほっとして、数日ぶりに笑った。


 仕事があるんだ。二人を養うための。


 グッと色々な思いを飲み込んで、四合院の外へと歩き出す。

まだ、ジャンボがスタントマンとして起用されている頃のことだった。

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