第15話

 別れが突然なら、再会もまた、突然だった。

 

 

 

 

 

 中学を卒業して、高校も卒業して、芸術大学に進学して2年目。迎えた成人式。式終わり。

 

 

 中学校の同窓会がその後にあるからと、懐かしい連中とそこに向かおうとしたときだった。

 

 

 成人式式場の外。

 

 

 出たところに。

 

 

 

 

 

「あれ、里見じゃね?」

 

 

 

 

 

 同じ小学校、中学校を卒業した、隣を歩いていた友だちの声。

 

 

 同時に視界に入った、同じような、スーツ姿の人、に。

 

 

 

 

 

 どきん。

 

 

 

 

 

 って。

 

 

 心臓が鳴った瞬間には、涙が出ていた。溢れていた。

 

 

 一気にあの最後、中学2年の終業式の日に、気持ちが巻き戻った。

 

 

 

 

 

 里見。

 

 

 

 

 

 里見。里見だ。

 

 

 

 

 

 それは、そこに居たのは、少し離れたところからも分かる。間違いなく里見。

 

 

 

 

 

 また背が、中学の頃より伸びていた。

 

 

 里見に集まった元バスケ部の男子たちより、里見は頭ひとつ、大きかった。

 

 

 だから見える顔。

 

 

 そこに面影はあるのに、あの頃より大人に、そして元々整っていた顔が、更に。

 

 

 

 

 

 誰かが僕を指差した。あそこに夏目がいるぞって。多分。

 

 

 

 

 

 僕を見た。里見が。



 目が、合った。

 

 

 

 

 

 ぼろぼろと泣く僕と。



 くしゃって泣き笑いの、里見。






 来る。

 

 

 里見が、僕に方に、来る。

 

 

 

 

 

 里見。

 

 

 

 

 

 持ってる。まだ持ってる。ずっと持ってる。里見にもらった天球儀。小さな小さな天球儀。

 

 

 革紐をつけて、ネックレスにして、ずっと。ずっとだよ。ずっとつけていた。胸のところに。

 

 

 

 

 

 何人か付き合った相手も居る。

 

 

 女の子とも、男、とも。

 

 

 でも、いつだって僕の胸には、今もまだ、里見にもらった天球儀と、里見が居て。

 

 

 

 

 

 空。

 

 

 

 

 

 里見が引っ越してからひとりで始めた夜空観察は、まだ続けている。絵も、里見。

 

 

 それから、僕も誕生日プレゼントに買ってもらったよ。天球儀。

 

 

 天球儀をまわして、宇宙を考えて、ちっぽけな自分を考えた。

 

 

 でも里見。

 

 

 

 

 

 どうしても。

 

 

 どうしても、だよ。

 

 

 

 

 

 お前だけは、どうしても。

 

 

 ちっぽけな存在にならない。できないんだよ。里見。今でも。

 

 

 

 

 

 里見。里見。里見。

 

 

 

 

 

「………久しぶり」

 

 

 

 

 

 泣いてる僕の、涙が溢れてる僕のほっぺたに。

 

 

 泣きそうな顔で笑う、里見の大きな手が。

 

 

 

 

 

 触れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る