第6章第008話 新居と銭湯の設計です

第6章第008話 新居と銭湯の設計です


・Side:ツキシマ・レイコ


 さて。今日はマルタリクの大工さんの事務所におじゃましております。

 新居と銭湯の造りについての打ち合わせです。

 同居予定のマーリアちゃん、同居候補のアイリさんも同行です。

 同じく同居予定のアライさんも来ていますが、相変わらずセレブロさんの背中が定位置で寝ちゃっていますね。


 「今日はよろしくお願いいたします」


 大工さんの親方の名前は、スートン・ウォターさん。

 一緒に来てくれたアイリさんが紹介してくれますが。赤竜神の巫女様?と膝をつきそうになったので、慌てて止めます。

 ただのお客ですよ~ それ以上でもそれ以下でも無いですよ~


 新居の仕様の前に、アイリさんが同居するかがまだ決まっていません。

 アイリさんが同居となると当然タロウさんも付いてきます。夫婦になるのですから当たり前ですね。

 ファルリード亭の面々に加えて、アイリさんところで将来家族が増えることを考えると。沢山部屋を作るというより、数軒の家を屋内の廊下で繋いだ多世帯住宅…いやもう台所風呂トイレ共有のアパートですかね。


 各家庭最低でも4DK…いやキッチンは共用にするからKは要らないか。でも、お茶入れるくらいは出来るようにした方が良いかな?

 2階建て4Dくらいの家を数軒連結。独り身勢…っていうと悲しくなるけど、私とマーリアちゃんとアライさんは、寝室にダイニングの2Dくらい部屋を、さらに客室も合わせて6軒分くらい?

 キッチンと共通リビングに、風呂とトイレなど。相談しながら配置していきます。もう一軒家としては結構な規模になってきましたが、貴族の屋敷とかも扱っているので珍しくは無い…と言われました。…なんか庶民の家と言うよりそちら向けの案件と考えられているようですね。

 クーラーも初めから設置することを前提に屋根裏にダクトを這わせる設計にします。キッチンにも、冷蔵庫を据え付ける場所を確保します。放熱器は屋外に出した方が良いですからね。…そう言えば、ダクトとかにも防火基準がありましたよね? ダクトを通じて延焼しないようにってやつが。送風側が止ると閉まる弁とか。まぁダクト自体が木製なのでどこまで効果が出るかは不明ですが、後で検討しましょう。


 「なんか凄い家になってきたわね…」


 具体的な間取りが出来てくると、アイリさんが食いついてきます。

 新築とクーラーと冷蔵庫の魅力は、この時代も主婦を虜にするようです。


 「間取りに希望があるのなら、今の内ですよ。理想的な新居が貴方の物に」


 「うわぁ…なんかここに住む気になってきたわ」


 アイリさんは、もう一推しのようです。



 私の部屋をどう豪華にするか?なんて話が出てきてしまいましたが。私の部屋はそんなに広くなくて良いですよ。この辺は普通でお願いします。家族の家が2セット、一人者の部屋が6セット。

 私の部屋を飾る代わりに、共通リビングで頑張ってもらいましょう。ここは二階まで吹き抜けにして天井を高くして貰います。…あの赤井さんの住んでいたところ、私が気絶して最初に目覚めたところですね、あんな感じの部屋が欲しいのです。…赤井さんが入るには、天井は高くないといけません。赤井さんが来る予定があるわけではありませんが。一応ね。


 マーリアちゃんの希望も聞きますが。ファルリード亭の部屋と同程度で十分だそうです。あくまで仮住まいですしね。


 「レイコ、私も費用は出せるだけ出すわよ。一応大使館なんだし」


 マーリアちゃんが建築費用の分担を申し出てきてくれました。あ~、どうしましょう?。

 今のところ、エルセニム国からは滞在費くらいしか出ていないようですが。正教国遠征に伴ってネイルコード国からはマーリアちゃんにも謝礼が。さらに正教国からマーリアちゃんの負傷に大しての賠償金が入ってくる予定です。幾らぐらいかはまだ未定ですけど、一国の王女に瀕死の怪我を負わせたのですから、結構な額になるそうです。

 建築費負担が全く無料となると代えって気を使わせそうですので、マーリアちゃんが住む部分の費用はお願いしますか。うむ、これくらい。


 「え?ちょっと安すぎない?」


 2Lのアパートの家賃とかから換算すると、こんなものでは?と思ったのですが。

 え? 予算余るって? 残りは、エルセニム国からやって来たマナ技師さんたちが住むアパートでもマルタリクあたりに作ります? どのみちエルセニム人の宿舎の対策は大使館の仕事なのですから、今の内からね。


 アライさんは特に要求が無いようですが。背が低いことを配慮してくれればと言ってました。

 確かに、ドア開けるにもタンス使うにも、普通の人用だと高すぎますね。メモメモ。


 だいたい纏まったところで、スートンさんが図面を引いてくれる事になりました。

 うん、アマランカでの紙の量産も軌道に乗ってきたようで。書類とかよりは、マルタリクでの絵図で使われているところを良く見るようになりました。書類より大きめのサイズが欲しい分野ですからね。




 次は、銭湯についての打ち合わせです。

 ファルリード亭に隣接することになる銭湯ですが。先に日本の一般的な銭湯のデザインを描いてみましたが。日本の銭湯はまだ一般家庭に風呂が普及していない時代、大量の客を捌くための構造ですからね。ちと味気ない。

 今回建てる銭湯は、もちっとゆったりした温泉宿をイメージしてみます。温度で湯船を分けたりとか。サウナなんかもいいですね。 脚を伸ばしてのんびり浸かれる風呂場。うんうん。


 浴槽をどうするか。

 一人用なら木製でも良いのですが、耐用年数が短そうですね。

 ストーンさんもこういう水回りは経験がないようで、何で作ったもんだ?と考えています。

 最初に連想したのが、貴族の庭にある池のような石を敷き詰めたものだそうですが。裸の人が入ったら、怪我しそうですし、小さい石を並べただけの底というのも痛そうです。

 岩の切り出しとかは出来るので、板状の石を敷き詰めるか。うん、このへんは職人さんのセンスが試されそうです。



 「滑らないように適度に凸凹に、しかし肌を濾すって怪我しないようにか。それでいて掃除はし易いように。結構難しいですな」


 陶器もこちらにはありますので、タイルなんか作っても良いかも。そういうのはないのですか?


 「なるほど…陶器で作るですか。考えても見なかったですね。うん、一度窯元の方に相談してきます。作るのは簡単そうだし。これって普通に水場でも使えそうですしね」


 これで左官屋さんが出来ますね。


 逆に給水給湯回りについては、スートンさんがアドバイスしてくれます。

 新ファルリード亭の後ろの元訓練場には、街道より一段高い丘となっていますので。そこに給湯施設を設置することで水圧が稼げ、洗い場にはお湯と水の蛇口が付けられるそうです。丘の上へのタンクへの揚水は人力で…ってこの辺に必要な労力がこちらの世界でお風呂が普及していない最大の理由でしょうけど。手押しポンプが開発できたので、ここはかなり省力化できるはずです。


 お風呂や脱衣所の掃除等は、孤児院や六六で子供達を雇おうとアイリさんが張り切っています。

 番台はどうしましょうね? 脱衣所の窃盗防止とか、マナーの監視とか、けっこう役目が多いのが番台です。身近のお年寄りというと、カーラさんが最候補ですが、宿屋の方のフロント番でもありますし。まぁこちらもまた六六あたりから紹介していただきますか。

 あと冷やした飲み物の販売、これは必須ですよ。

 …瓶入り牛乳、辛うじて瓶はありますが、余り透明度の高くないガラス製でも結構高いです。ここも陶器ですかね?

 ビン毎牛乳を加熱して、蓋して蝋封。そのまま冷蔵。ってもあまり長期間保存は期待しない方が良いでしょう。昨日作った瓶牛乳が今日飲めれば、そう困ることはないはずです。

 あ、コーヒー牛乳! フルーツ牛乳も! うん、これは文化として広めるべきです!


 ファルリード亭の方も、フードコートと接続する形で厨房と食堂が拡張されますので。お風呂に入った方々がのんびり出来るような座敷みたいなところも作りたいですね。…浴衣で寛げる宴会場なんてのがイメージなのですが。こちらにも畳部屋、作りましょうか?


 描いたり消したりを繰り返した間取りの草案。

 新居のキック家分も含めて、今日の所は一度持ち帰ってファルリード亭のみんなとも相談しましょう。

 こういうのってすっごく楽しくて、わくわくします。


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