第6章第007話 盛り上がらない求婚成立 盛り上げるぞ結婚式
第6章第007話 盛り上がらない求婚成立 盛り上げるぞ結婚式
・Side:ツキシマ・レイコ
さて。チャラ貴2の邪魔も入りましたが。…タロウさんのプロポーズの件がまだ決着していません。
「あ。うん。タロウからの求婚は受けたよ」
さらっと報告するアイリさん。タロウさん、チャラ貴2が来ている間、何してたんですか?
まだ席で突っ伏したままです。悲観して…ではなく安心して?
「あんなのが周囲をうろつくようになったしね。まぁ、タロウのことを好き好き愛してる~ってノリでもないけど。アイズン伯爵くらいの歳になったタロウと一緒に暮らしているのを想像して、それもまたいいかな?って思えたからね、人生の伴侶としては申し分ないかなって。いえ妥協したわけじゃないのよ、これが最善かなって」
ベストではなくベターですか?
「うふふ。タロウ以上の最善な出会いを待ってたら、それこそ行き遅れるわよ。」
「…もしかして、それタロウさんにそう言った?」
「うん? 言ったけど?」
うーん、OKを貰えたとは言え、求婚の返事がそれでは男としてはちょっと微妙なのかも? それで突っ伏していたのかな? ホッとしたけどちょっと情けないって感じ。
モーラちゃんがタロウさんのところに言って、肩をポンと叩きます。
「…良かったね、タロウさん」
…それはお祝いの言葉というよりは、なんとなく憐憫を含んだような…
「うんうん、良かった良かった。タロウ」
「おめでとう、タロウさん」
「おめでとさん。…よかったな、タロウ。ぷぷぷっ…」
「ククーッ! クルック!」
「ヒャー。おめてとう、タロウさん」
「…うん…みんな…ありがとう…」
見守っていた人達も、苦笑しつつお祝いします。
…プロポーズが成立した場面がこれでいいのか?おい。
頃合いを見ていたのか、タロウさんのご両親とジャック会頭もファルリード亭にやって来ました。
「うんうん。これでランドゥーク商会の将来も安泰だな。親として肩の荷が一つ下りた気分だ。よしっ! 給仕のお嬢さん、今ここにいる方々にエールと何かつまみになる物を配ってくれ。酒が駄目な方には飲み物と何か適当な菓子でも。皆で乾杯だ! あと、今食べているものの支払いはこちらに回してくれて良いぞ!」
「おおっっっっ!」
プロポーズ成功を聞いたタロウの父ケーンさんが、今ここに居る人の食事代を持つと宣言して、やっとらしい賑やかさになりました。
配られたエールが届く都度、ジョッキを掲げた人達が、次々にアイリさんとタロウさんを祝福します。
やっと賑やかくなってきましたね。
アイリさんとタロウさん。ご両親のケーンさんとリマさん、同じテーブルについて、挙式についての相談です。なぜか私も一緒に座ってます。…ウェイトレスの仕事をマーリアちゃんやアライさんに任せているのがちょっと申し訳ないです。
挙式の次期ですが。暑さが収まった頃を見計らってということで、秋ごろに行なうそうです。
「ねぇねぇレイコちゃん。地球での結婚式ってどんなんだったの?」
アイリさんは、結婚自体よりも式とかそういうことの方が興味ありそうですね。
とりあえず、神前結婚は流石に宗教色が固定されますので、洋風の結婚式のお話を。女性はウェディングドレスに、男性の方はタキシード?燕尾服? まぁ洋風のスーツで。
ブーケに指輪交換。入場から結婚宣誓してブーケトス。披露宴にお色直しに新婚旅行。
この辺を一通り説明しました。
「このウェディングドレスって…いいわね…」
アイリさんが一番食いついたのがウェディングドレスですね。世界的にも標準となっていた白を基調としてレース多めのデザインを簡単に食堂の注文用板紙に描いてみましたが。
まぁ子供のころ…小学生低学年とかですよ、そのころにこういうものに憧れて絵を描くのは女の子の通過点ですからね。ドレスのディテールは一通り覚えていますよ。
胸元から肩にかけての露出が多めですから。ゴルゲットが映えそうですね。
アイリさん、ぜひこれを作ってみたいとのことです。
こちらの世界にも、貸衣装屋があります。庶民がちょっと整った服装が必要なところへ着ていく服とか、けっこう需用はあるそうで、ランドゥーク商会の一部門になっているそうです。そちらに結婚式のドレス貸し出しと、さらに地球式結婚式を売りにしたプロデュース業なんかも考えているようですね。
忘れがちですが、ランドゥーク商会はアパレル系の商会です。エイゼル市の衣料もですが、製糸から織布に服飾まで、雇用を多く支えている街の重鎮です。
私が元々着ていた服を元にしたデザインの服や女性用下着やらは、中央通りの高級店ですでに販売しておりますが。ブラジャー当たりは成人女性がつけた結果がちと刺激的と言うことで。また価格も結構することから、まずは貴族向け高級品として普及してから…となってしまいましたけ。
何枚か描いた…描かされたデッサン絵も商品となって上がりつつあります。ただ、こちらもデザインの評判は良いのですが、実際に着て歩くとなるとまた別の話。…どっかのファッションショーと同じですね。実用性には問題がないので、あとは実際に着てくれる人を増やさないとダメ…というところです。
というわけで、まず最初は身近なところからということで、マーリアちゃんとアライさんとモーラちゃんが着るファルリード亭専用メイド服を作ってみました。今までは、普段着に普通のエプロンだけでしたからね。
とは言っても、メイド喫茶みたいな扇情的なものは流石にアウトです。アライさんはともかくとしても、マーリアちゃんは一国の王女ですからね。うんうん、英国風にシックに清楚に。
紺色のワンピースに、なるだけ白い木綿布を使ったエプロンにフリフリ多めのクラシックなメイド服。フリルのカチューシャも忘れてはいけません。金髪ツインテールに黒い襟のコントラストが素晴らしい。
モーラちゃんも流石です。カチューシャが似合いますね。…ああ猫耳カチューシャ!あれも作ったら似合いそうですねっ!ただまぁ山の民は獣人だと差別もある世界ですので… 後でミオンさんに相談です。かわいいは正義だと思うんですけどね。
…えっ? ミオンさんも着たいですか? ………アリ…じゃないですかね? ちとプロポーションが良すぎではありますが。アリになるんじゃないですかね? あ…メイド服で武装したら似合うかもなんて考えてしまった…
アライさんの服は当然アライさんの体格に合わせてデザインを弄っておりますが。これまたこれまた可愛いですね。
アライさんは、人の表情を読み取るにはまだピンと来ていないようですが、自分が賞賛されているのは分かるらしく、その場でクルリと回ったり。尻尾はスカートの後ろに穴を開けて出していますよっ!。かわいいですかわいいですっ!
うーんアイリさんとエカテリンさんがクネクネと悶えております。私もですよ?
「グーっ! グーですよ、すばらしいですっ! アイリさんっ!」
ああ、写メっ! 写メ取りたい! この感動を世界に拡散したいっ!
「マーリアちゃんもアライさんも… レイコちゃん、まさかここまでになるとは…私、ランドゥーク商会にいて良かったわ…」
新衣装はマーリアちゃんだけが目立つかと思ったら、アライさんのインパクトが大きすぎて丁度良いくらいです。
可愛い衣装のウェイトレス、三人とも大評判になりましたが。なによりこれらを知った中央通りのレストランからメイド服セットに注文が殺到することになりました。一見地味な配色ですが、そのシンプルな清楚さが着ている者の魅力を引き立てるのです。
話は逸れましたが。アイリさんのウエディングドレスから、また新しいムーブメントが出来上がりそうですね。
大型化されたガラスは、ランドゥーク商会直営の中央通りの商店で早速使われています。それでも1枚のサイズがまだ小さいので枠が付いていますが、ショーウィンド越しのまさにウィンドウショッピングが当たり前になる日も近いでしょう。そこに映えるウェディングドレス…名所になりそうです。
次は指輪交換についてです。
こちらには、結婚での指輪交換の習慣はありませんが。ロゼットというゴルゲットに着ける一点物の赤色の石を付けた物を互いに交換するそうです。
「こういうのです。レイコ殿」
リマさんが、胸元のゴルゲットを持って既婚女性の印のロゼットを見せてくれます。
ロゼットってのはあれですね、運動会とかで一等賞とか書いて胸に付けてもらう小さい花飾りみたいなやつのことです。実物はピン留めするカフスみたいな物でしょうか。サイズもいろいろありますが、だいたいコインほどです。
「もちろん、私も付けているよ」
ミオンさんも胸元からご自分のゴルゲットを見せてくれました。透明な宝石ではありませんが、銀の台座に磨かれた赤い石をあてらったロゼットが付けられています。
貴族同士の結婚とかになると、これがルビーとかになるそうです。そう言えば、アイズン伯爵のゴルゲットに付いているいろんなロゼットの中に赤い宝石が付いているものがありましたね。
流石に庶民が宝石や貴金属を普段から身につけてていると危険が危ないので、普通は磨いた赤い石が使われるそうです。めちゃ安いというわけではありませんが、強盗してまで取る価値は無い石というか。そもそも結婚に使われる石を換金しようとしても、妖しいと看破されるだけですからね。
あと音楽ですね。式を盛り上げるBGM、これも必須です。
大きな教会だと専属の楽団と聖歌隊が居ます。ダーコラ国での戴冠式でも、なかなか荘厳でした。
小さい教会ではとても普段から楽団とかは賄えませんが。弦をハンマーで叩くタイプの大型のハープを置いてあるところが多いそうです。何度か聞いたことがありますが、ピアノを低音寄りにしたような音色でした。共鳴がちょっと足りませんね。
あと日雇いでリュートのような弦楽器を弾く人が参加することがある程度だそうです。
「一番有名なのは、こんな感じの曲ですね」
フフフフーン、フフフフーン。フフフ、フッフフフフ、フフフ、フッフフフフ。ジャーンジャーンジャ、ジャンジャンジャンジャン、ジャーンジャンジャジャジャン。
指で調子を取りつつアカペラっぽく結婚行進曲を軽く披露したら、タロウさんのお母さんのリマさんが食いつきました。王都ではよく演奏会にも呼ばれることがあるそうで、地球の曲をぜひ演奏させてみたい!だそうです。
…後日、王都から招く音楽家の人に会うことになりました。私の鼻歌レベルの曲を聴いて、こちらの楽器に合わせて採譜と編曲をしてくれるそうですが…プロの前で鼻歌ですか? ひーっ!
料理も大切ですね。披露宴も必須です。
アイリさん、ウェディングケーキの話には目をキラキラさせていますけど。…新婦はあまり食べてられませんよ?
まぁ、結婚式後に披露宴的な宴はこちらでもあるそうなので、それに合わせていろいろ出すことになりそうです。
新郎新婦とご家族。食事をしながら、結婚式の打ち合わせが進んでいきます。
アイリさんとタロウさんの母親のリマさんが盛り上がって楽しそうです。端から見ると本当の母娘のようですね。
…なんかタロウさんが取り残されているような… タロウさんはもっと頑張って下さい。
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投稿遅れて済みません。私事で色々ゴタゴタしておりまして…
第6章、ほぼ書き上がりました。39話予定です。
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