第6章 エイゼル市に響くウェディングベル
第6章第001話 エイゼル市に帰還しました
第6章第001話 エイゼル市に帰還しました
・Side:ツキシマ・レイコ
正教国にまつわるごたごたも一通り片づいて。帰ってきましたエイゼル市です。
一ヶ月も空けていなかったはずなのですが。なんか懐かしい街並みと活気で、ほっとしますね。
「クー」
襟後ろのフードの中でゆらゆらと。久しぶりのエイゼル市の空気をレッドさんも満喫です。
…お父さんがこの中にいると思うと、ちょっと神妙ですね。
「ヒャーヒャー」
アライさんも、正教国の中央に勝るとも劣らない街の賑やかさに、ちょっと興奮気味です。彼女はこういう賑やかなところの方が好きな感じです。
まぁ彼女だけ歩いていたらとんでもなく目立ったでしょうが、今はセレブロさんの背中の上。モフモフにモフモフで一体化して返って目立たない…と思いたい。
ファルリード亭が燃えてしまって見事宿無しなので、とりあえずアイズン伯爵邸にお世話になりますが。伯爵家の皆さんにまずはアライさんの紹介です。
「ヒャー。こんにちわ。ラクーンのキュルックルてす。ここではアライとよんてくたさい」
うん。言葉を話せるのは、知性体の証です。
ブライン様以下、だいたいアライさんを見てびっくりされていたのですが、クラウヤートさまが真っ先に慣れましたね。
まだ片言のアライさんとなんとかコミュニケーション撮ろうと頑張っています。アライさんの本名である「キュルックル」の発音にトライしましたが、難しい顔で首を横に振るアライさんでした。
バール君はなんかクンクンとアライさんの匂いを嗅いでいました。嗅がれていたアライさんは固まってましたけど、バール君なら大丈夫ですよ。
連絡を受けたアイリさんとタロウさんにジャック会頭も慌てて来てくれたようです。
「レイコちゃん!おかえりっ! レッドさんもお帰りっ! マーリアちゃんもセレブロさんもお帰り」
こちらもガバッと抱擁です。
とりあえず、伯爵邸にて簡単な報告をもって帰還初日は終わりました。
…アイリさんがアライさんを見て大騒ぎしたのは、まぁ置いときましょう。
さて。まず片づけないといけないのは、全焼してしまったファルリード亭回りについてです。
「レイコちゃん!おかえりっ! レッドさんもお帰りっ!」
今度はモーラちゃんから抱擁です。
こちらでもアライさんを紹介です。
「ははは。私も毛深いと言われることはあるけど、こっちは本格的だねぇ」
ミオンさんのは猫の様な柔毛なので、毛深いってのはどうかと思うのですが。
「ミオン、張り合ってもしょうがないだろ。事情は分かったけど、これからはレイコちゃんと一緒に暮らすって事で良いのかい?」
そう言えば、宿で一緒に過ごせるようになったら、カヤンさんの許可が要りますね。
「いつ東方諸島とかその先に船が出せるようになるのかわらないですし、どっかで一人暮らしさせる訳にもいかないですので。この子、こう見えても働き者ですよ」
「ヒャー。ほんみょうはキュルックルてすけと。アライとよんてくたさい」
うんうん。こちらの言葉もだいぶ上達しています。この短期で学んだにしては十分じゃないでしょうか。
さて。運輸ギルド舎は、さらに北にずれる主街道に合わせて建築された新建物への引っ越しは既に終了していて。譲り受けた旧ギルド舎は新ファルリード亭として改装計画&出来るところから工事中です。
元からギルドにあった軽食コーナーはさっそくカヤンさんが占領して、ファルリード亭のランチメニューを提供していますね。…商会の人や護衛業の方々からの要望が多かったそうです。
とりあえず、二階の会議室だったところを改装してキック家の住居とし。余った部屋などは宿屋にするかどうか検討中です。まぁ客室はそれだけでは足りないので、宿屋部分の増設は必須ですが。
完全開業にはまだしばらくかかりそうですね。
周囲の馬車留や訓練場なんかも空きスペースになるので、そこをどう利用したもんだろう?といろいろ検討しているところですが。なにかアイデアが無いかと、モーラちゃんやアイリさんにせっつかれています。
あと、旧ファルリード亭の跡地についてですね。
実は、この土地を買わないか?と言われています。この国の法律だと土地は全て領主のものであって、土地を買うとは利用権の売買なのですが。これはきちんと財産として認められていますので、実質所有することと違いはありません。ネイルコード国からすれば、そろそろこの国に自宅を持っては?というお誘いですね。
土地を買うには先立つものを…ということで、運輸ギルドに赴いての預金の残高確認です。
…最初の魔獣の代金に護衛の報酬。各種工事やら奉納の利益とか。帝国金貨の件もありましたね。あまり気にしていませんでしたけど、総額は確認していませんでした。
たまたまジャック会頭がギルドに来ていたので。一緒にいたタロウさんやアイリさんも同席で確認します。奉納の管理やら工事の報酬やら、全部任せてしまっていますからね。
「アライさん! こんにちわっ!」
マーリアちゃんとセレブロさんもいますよ。アライさんとレッドさんはセレブロさんに乗ってますが。アライさん、早速アイリさんに抱っこされてます。レッドさんは護衛としてついてきてくれたエカテリンさんが抱っこです。
アライさんについては、ギルドに出入りする人達にはまだ知らない人も多く、ちょっとびっくりしていますが。セレブロさんやレッドさんはすでに有名なので、そのモフモフ塊に一人増えた程度では動じる人はいないようですが。
アライさん、二足歩行していますし服着ていますし片言ではありますが話せますし。まぁ皆が"人"並に頭が良いということは理解してくれたようですが。最初に会ってからアイリさんがアライさんべったりです。
「ヒャー。アイリ こんにちわ」
名前読んでもらったアイリさんが大喜びです。アライさん、ヒャーヒャー言っています。
アライさんも、自分よりでかい生き物に抱きしめられて恐くないのかなとは思ったのですが。満更でもないようですね。ギルドを訪れる女性陣も熱い視線を送っていますよ。
…わぉ。
石版にメモされたその貯金額。
戦車くらいなら小隊で買える? そんな感じの額ですね。
「…これ、本当ですか?」
「レイコちゃん、今までどれだけ働いてきたと思ってんのよ? これでもネイルコード国の方は、工費安く済んだってホクホクしてるいわよ。とくにマラート内相とか」
「あと、奉納についても結構な金額だな。芋の皮むきのピーラーなんか、もう三万個くらい売れたぞ。市場でも芋や根菜の売り上げが増えたとかで、農家で作付け面積の見直しもしているとか。井戸のポンプの生産数も今年中に千の大台に乗る予定だし。クーラーなんか予約だけで果て知らずだ」
うーん、ピーラー一つでも結構な影響がありますね。
「ジャック会頭。以前に預金は貨幣の流通量に影響はないって言っていたけど。やはり使う方がエイゼル市にはいいんですかね?」
「まぁ銀行のおかげで貨幣流通量の問題は無いけどな。それでもお金を使うことは市場の活性化には役に立つだろうな。使う分には使うべきだろう…とわしは思うぞ」
うーん。使い道か。まぁいくつか考えてはいたんですけどね。
「ジャック会頭。まず旧ファルリード亭の跡地を買い取って、自宅建てたいと思います」
家一軒建てるのですから、けっこうな金額のお金が使えそうです。
「うむ。いつまでも宿の一室というわけにも行かなかったろうしな、良いと思うぞ。元宿屋だけあって家を建てるにはちょっと広いが…まぁ小竜様と赤竜神の巫女様の邸宅だ。あそこでも広すぎることは無いだろう」
いや…どんなでかい家を一人暮らし前提で想定しているんですか? レッドさんもいますけど、さすがにベットで泣いちゃいますよ。
「…マーリアちゃん、新しい家に一緒に住まない?」
「え?いいの?」
「そんなでかい家に一人じゃさすがにね。地球大使館とエルセニム国大使館を作っちゃいましょう。あと、ファルリード亭のみんなも誘いたいんだけど。広さは十分にあるし、すぐ近くだから通うにも面倒は無いし」
うん。三世代住宅? 三世帯住宅か。
「アイリさんもどう? 毎日セレブロさんとアライさん、愛でられるよ?」
「えっ?私も? それはうれしいけど…いいの?」
レッドさんやセレブロさんやアライさんに熱い視線を向けています。絶対ベットに連れ込む気満々ですね。
なんか構想がアパートか下宿みたいになってきましたね。
「…レイコ殿。護衛対象をひとまとめにしようとしておるのか?」
ああ、ジャック会頭には分かりますか。
「悪くない案だと思うぞ。正教国のカリッシュ祭司みたいな者がまた出ないとも限らんし。護衛対象になるようなのはまとめた方が安全じゃろう。アイリあたりなんか六六暮し続けているもんだから、心配しておったくらいだしな」
…それでも"影"あたりの護衛はついていそうですね。
「タロウさんはどうする?」
アイリさんと同室って訳にはいかないですけどね。同じ屋根の下、どうですか?
「ありがたいけど。ランドゥーク商会の屋敷も、普段からそこそこ警備は厳重だからね。俺の心配は要らないよ」
…護衛の話だけで済ませやがった、ヘタレか…
でもまぁ、敷地には余裕があるので。寝室に居間の続き部屋を客室とかも含めていくつか余裕を持って配置って感じですか。間取りとか考えたことがないので、こういうのは楽しいですね。
マルタリクには大工集団も居るそうなので、ジャック会頭がそちらに話を付けてくれるそうです。善は急げって事で。
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拙作を目に留めていただいた方。いつも読んでいただきありがとうございます。
計188話88万文字ほどを、飽き溜めていた分を一気に放出してきましたが。執筆分に追いついてしまいました。
今後の更新ペースについては悩んでいます。毎日はちょっと無理。エタらせるつもりはないので最低でも週一。でもそまで書くのは遅くないけど…ってところですが。本業と私事ともあわせてペースについてはなんとも保証できません。
基本的な執筆ペースとしては、プロットを書いて各話に分割してリファインと校正で書き足して…というのが一章終わってから投稿…という体をとってきましたが。一話の分量がどうにも安定せず、投稿も何ヶ月か後という話になってしまいます。
…毎日更新して何百話と続けている他の書き手の方々には、頭が下がりますね。展開の前後に矛盾とか出てこないのかしら?
現在、第六章のプロットが上がったところで7万文字。
最低でも毎週一回更新、毎回最低100行…あたりをノルマにして、続けていきたいと思っております。
(ただ、ノルマで小説書きたくないというというのもあるので、予定は未定で…)
今後ともお引き立ての方よろしくお願いいたします。
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