第2章第024話 王都到着

第2章第024話 王都到着


・Side:イシンハイ・グガルチ


 ふむ。話題になっている赤竜神の巫女様。

 ユルガルムからの報告書は、さすがに眉唾だったのだが。学外の丘を吹き飛ばしたあの威力。あれでもまだユルガルムで使ったときの威力の一割にもならないらしい。そもそもユルガルムの時も最大の威力では無いとか。見ると聞くでは大違いだったな。

 あと。あの小竜様。鳥のように偵察できるのか、もし軍で使えるのなら、それだけでの計り知れない価値がある。


 もう一度情報の精査がしたくなったので、アイズン伯爵とダンテ殿に再度客室にご足労願う。

 軍相のカステラード殿下から、軍の視点からレイコ殿の実効性を評価せよと仰せつかっているが。なにから報告したものやら。

 ただ、あの子が軍に参加するのか? 協力してくれるのか? 見た目は十歳程度の少女だぞ。いくら強力でも、あんな子供を戦闘に駆りだしたら、軍としての体裁が悪すぎるわ。


 ユルガルム領軍の戦評では、数で迫られるのは苦手とのことだが。あくまで味方に被害を出さぬように配慮した結果だろう。無差別、または敵しかいないのなら、巫女様でも対処は可能に思われる。

 絶対に他国に去られてしまう事態だけは避けねばなるまい。敵対することになったら、勝てるかどうか。政治的にも道義的にもな。


 報告は、明日の午前中に王都まで届くようにと言われている。…徹夜して朝一の伝令に頼むか。


 訓練場で待っているレイコ殿のところに行ったら、新兵共が絡んでいたようだが。

 ん? 本当に練習だけだな。…よし、その訓練が終わったら出頭しろ。レイコ殿についていろいろ聞きたいからな。




・Side:ツキシマ・レイコ


 王都が見えてきました。おおう。


 王都は、湖のそばにあるようです。カラスウ河は、その湖から流れています。

 湖の端に小山があって、その側に教会とも聖堂ともいえる豪華そうな建物が見えています。

 うーん、湖が三日月型? 小山を挟んで湖の反対側に王都が広がっています。


 湖の向こう岸には、山地が迫っているようですが。

 あれ?ここもクレーター? ユルガルムよりだいぶでかいようです。直径二十キロくらい?

 クレーターの中央丘があって。クレーター内の平らな部分の北東三分の一ほどが湖。のこりに王都が広がっている感じでしょうか。このへんは、ユルガルムの街に多少にていますね。

 外輪山はだいぶ浸食されているようで、南側三分の一はほぼ平野とくっついています。


 湖を起点に、王都内掘や運河が整備されていて。街のが外枠の掘にかかる橋に関が設けられています。ただ、特に取り調べをしているふうもなく、商会のものらしい荷馬車はどんどん通っています。

 ここは普段、監視だけのようですね。御者さんが伯爵家の紋章を見せると、そのまま市街地に入ってきました。


 うん。エイゼル市に負けないくらい賑やかな街です。あの街の中央通りを思い出します。街道脇にはいろんな店が並んで賑わってますね。治安も良さそうです。


 中央丘は城よりずっと高いので。街からはいいランドマークになっています。

 街から見て中央丘の正面には、教会でしょうか? エイゼル市の教会より一回り大きくて荘厳な建物が建っています。お城の敷地内に教会があるのは、この世界でのスタンダートのようです。

 そちらに近づいていくと、塀に囲まれた屋敷が増えてきます。ここは王都の貴族街でしょうね。エイゼル市の貴族街より総面積は広そうですし、一軒一軒がずっとでかいです。なんか高位の貴族が多いってところでしょうか?このへんはさすが王都という感じです。


 通りの続く先にはお城の門らしき物が見えていますが。そこに続く広い石畳の通りから、ある屋敷の敷地に入っていきました。ここは他領から来た貴族のための宿舎だそうです。いわゆる迎賓館ですか。私も今日は、ここに宿泊だそうです。

 …街で食べ歩きしてみたかったけど、致し方なし。またの機会にしましょう。


 アイズン伯爵と夕食です。メニューの雰囲気はエイゼル市に近い感じでしたね。エイゼル市から魚も、揚がったその日のうちに届くそうで、大変美味しゅうございました。

 ここでも、レッドさん用サンドイッチを用意していただいてました。ありがたいですね。給仕している侍女さんが、レッドさんが食べる様を見てニコニコしています。




 次の朝。

 謁見はお昼前の予定なので。まだ余裕はあるのですが。

 ひゃー。お風呂はありましたこの屋敷に。桶と言うより一人用バスタブではありますが。侍女さんたちに放り込まれて磨かれました。


 いつの間にか用意したのか、謁見用のドレスです。…ドレスというよりはスーツなのかな? 豪華絢爛というよりは、学生服をベースに飾り多めという感じですね。和のテイストも多いように思います。


 「ふむ。よく似合うではないか」


 伯爵が部屋に迎えに来ています。…って、伯爵は同じスイーツの一室に滞在しているのですけどね。


 さて。準備完了です。覚悟を決めますか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る