第1章第016話 野営です
第1章第016話 野営です
・Side:ツキシマ・レイコ
実は希少だった金貨でいろいろあったところで。
他にもいろいろ聞かれたが。アイリさんは私の着ている服に食いついていた。布の質もだけど、初めて見るデザインや裁断、それにボタンの構造など、興味津々に聞いてきた。
アイリさんは、ジャック会頭のところで働いていて、勉強がてら今回のキャラバンに同行していたのだそうだ。タロウさん曰く、将来の幹部候補とか。
ランドゥーク商会では紡績から被服まで扱う大手の商会だそうで。デザインの権利とかの話になってきた。
「デザインや構造もおもしろいですし。裁断一つ取ってもいろいろ参考になりそうです」
ただ、材質に関しては私にも分らないので。その辺を話すと残念そうだった。ナイロンとかケブラーどころでは無い感じがするからね、この服。
デザイン権利のあたりに関しては、街に着いてから改めてと言うことで。いろいろ話している内に、今夜の宿営地に着いたようです。
「護衛隊の者達は宿営地の整備と野営の準備を。騎士隊は馬車の整備と馬の世話を」
宿営地で、ジャック会頭がテキパキと指示をしていく。
ここは、街道と川辺の間が切り開かれて、広場のようになっている。脇には屋根だけの東屋みたいなところがあり、そこらは薪が積まれているようだ。
その横に電話ボックスくらいの木の箱が置いてあります。どうもそれがトイレのようで、適当なところに穴を掘ってその箱を移動させてトイレのできあがり。出発前にはハコの元の場所にもどして穴は埋めて…という扱いらしい。
この国の街道の村や街の間隔が空いているところには、こういう宿営地が等間隔で整備されているそうです。定期的に管理もされて、薪などもそのときに補充されているそうです。もちろん、ここを使った人たちにもできうる限り補充することが推奨されています。切ったばかりの生木では使い辛いですからね。
護衛騎士の人たちが、馬の世話をするというので、私も手伝うことにした。
「巫女様と小竜様は、まだ馬車で休まれていても結構ですよ」
気にしてくれたのは、一緒に馬車にも乗っていたエカテリンさん。今回のキャラバンでの護衛騎士のなかで唯一の女性です。
護衛対象には、貴族子女も含まれることは多いので。護衛騎士隊には数名の女性騎士も配属されているんだそうな。
「あまり特別扱いされるのも窮屈なので。お手伝い出来ることはさせてください。馬の世話なんてしたこと無いので、経験してみたいです」
いいのかな?という感じで、騎士隊長のダンテさんにお伺いを立てるエカテリンさん。特に危険も無いだろうと言うことで許可が出た。
馬車から外された馬たちが、馬留に繋がれる。まずはそこに桶で水をくんできて馬に与えるのが最初の仕事だ。飼料も馬車に積まれている物を降ろしてくる。
エカテリンさんと共に、持ち手の付いた水桶を両手に持って川に向かいます。
リュックを背負っていないので、レッドさんは私の肩に乗り頭にしがみついている感じだ。
「二ついっぺんは、水を入れたら持てなくなるよ」
桶は一つ満タンで二十キロくらいにはなるだろうか。
「これくらいなら、大丈夫です」
エカテリンさんは、ちょっと眉をひそめるが。あとは何も言わずに河原の方に一緒に歩いて行った。
浅瀬で桶に水を満たすと、今度は往路。私は二つの水の入った桶をひょいっと持ち上げる。
私は、エカテリンさんを見上げて、ドヤっとする。
エカテリンさんも、桶を2つ持ってきていたので。彼女も桶を持ち上げます。エカテリンさんもドヤッと。あなた大人でしょ?
そこで。私は、桶を持ったまま両腕を水平まで持ち上げた。この体なら楽勝です。
エカテリンさんはびっくりしてたが、対抗して彼女も桶を上に上げた。流石鍛えているだけあってなんとか水平まで持ち上がったけど、腕がぷるぷるしてます。
「私の知っている武闘家の物語では、修行でこれやってました」
「…うん…これはたしかに鍛錬になるけど…かなりキツいな」
エカテリンさんはプルプルしながらそのまま野営地まで戻りましたが。付いた頃には、疲労困憊という体になっていた。
「お見それいたしました… 隊長、巫女様は本物です」
「…うん、もう知ってる」
呆れながらダンテさん
私が馬車の中でダンテさんと握手していたのはエカテリンさんも見ていたはずなのですが。私が全く力を入れていないように見えたので、疑っていたみたいね。
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