〜猫の日準短編〜好きな女の子に想い人がいることをいる事を知り落ち込むも、一日だけの奇跡が起こった女の子のお話③

「じゃああとは、いつもいっしょにいる竹下さん?」

まさかの会話に私の名前が聞こえてきて、思わず手を離して勢いよくしゃがみ込む。

そのまま聞き耳をつづけることにした。


「何言ってんのあんた。女同士だしありえないでしょ」

「……」

穂乃果は何も言わず、黙っている。

「いやでもさ、ワンチャンあるかもじゃん? いつもカップルみたいにいちゃついてるし」

「あーね。でも違うっしょ? 武藤さん」

「え、あ、あ、うん。巴子ともことはそう言う---」

尚も続きを話しそうな穂乃果だったが、私は続きを聞くのが怖くて逃げ出してしまった。


そっか。

穂乃果はやっぱり、私のことは恋愛対象としてはみてなかったんだ。

普通の女の子みたいに、かっこいい男子を好きになって、恋をして。

そこに私なんかが入り込めるわけなかったんだ。

わかっていた。

私みたいな、女を好きになる女が少数派だってことを。

でもどこかで期待を抱いてしまっていた。

穂乃果と、友達以上の関係になれるのではないかと。

私はこうして、穂乃果に勝手に幻想を抱き、今こうして勝手に失望しようとしている。

我ながら性格が悪いと思う。


辺りを見回すと、私はいつの間にか学校から少し離れた河原にまで来ていた。

学校を無断で休んだ罪悪感なんて、今の心に入ってくる余地は無くて。

私は何も悪びれず、晴天の下河原の芝生に思いっきり寝転がった。

途端、目頭が熱くなって思わず顔を背けるも、涙は私の意志とは勝手に出てくる。

みっともない嗚咽を漏らしながら、私は河原で縮こまって一人泣き出した。

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