ケーキより甘い

(ハロウィンのチョコボックスで天使と悪魔の2人宛にいただいた「ひとつだけの高級カップケーキ」を、2人が仲良く齧り合うだけ。

ショートショートと言うか、会話です。)


「天使サマ、カボチャは好きか?」

「好きだよ。甘いからね。……それはカップケーキか?」

「ああ。貰い物なんだがな。仕事仲間からの差し入れだ。天使サマは好きかなと思って、持って来た」

「くれるのか? ありがとう。でも、ひとつだけなんだな。それじゃあ半分に……」

「いやそれがな、天使サマ。これは、半分に割ると不幸になる呪いをかけられたケーキなんだ」

「……突然、何の話だ?」

「だからな、これは半分に割れないんだ」

「お前でもそんな冗談を言うんだな。…………え? 本当なのか?」

「言ったろ、仕事仲間からの差し入れだって。そういう悪戯は俺たち悪魔にとっちゃ、ほんの挨拶みたいなもんなんだよ。でも、優しい天使サマは、俺と分け合いたいだろ?」

「そ、そりゃあ、まあ……。お前が持って来たものだし、随分と高級そうだし」

「という訳でだ。頬寄せ合って、一緒にいただくとしようじゃないか」

「一緒に? え?」

「天使サマはそっちからどうぞ。俺はこっちからいただく」

「え? いや、なんで……わあ、無理矢理だな。んん……美味しいけど……ふふ、食べづらいよ」

「美味しいか? それはよかった」

「お前は全然食べてないんじゃないか? ほら、この部分なんてムースになってて、ふわふわしていて美味しいぞ」

「ここか?」

「ひゃ……! 急に頬を舐めないでくれよ……」

「うん、たしかに甘いな。じゃあ、ここは?」

「んっ……ちょ……っ、んんっ」

「さすが、天使サマの唇だな。ケーキよりも甘い」

「……ケーキの味が分からなくなった」

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