不死鳥の四角錐(フェニクスのピラミッド)

空野

第1話

 とどのつまり彼は亡霊でした。

 ただ一人、ヌンの底より生まれし創世神。

 世界を創る力を持ちながら、結局は何をすることも出来ません。

 黄金の棺に横たわった、孤独な魂。

 それこそが、彼の正体でした。

 彼の手より生まれた神々は大地となり、天空に馳せ、地上を恵みで満たしていきました。彼が出来たのは、それをただ見守っていることだけでした。

 いつしか世界は彼を忘れ、他の太陽神を崇めました。

 いつしか世界は彼を忘れ、死と再生の神を創り出しました。



 ですから、とどのつまり彼は亡霊でした。



 何を創り、何を成したところで、彼は空っぽで孤独な王でした。

 何を成し、何を生んだところで、彼は孤独で空虚な王でした。

 彼は一体何であったのか。何であれば良かったのか。

 その答えをくれたものはありません。

 彼は幸福であったのか。彼は不幸であったのか。

 その答えをくれたものはありません。

 一人ぼっちの神様を、誰一人として見向きもしませんでした。

 一人ぼっちの神様を、誰一人として知ろうとしませんでした。

 ですから彼はいつまでも、一人真っ黒な光の中で眠り続けました。

 ですから彼はいつまでも、一人真っ白な闇の中で眠り続けました。





 ――彼の映し身が、この世に生を受けるまで。

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不死鳥の四角錐(フェニクスのピラミッド) 空野 @Luciferian

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