第34話 トントン拍子
慧仁親王 京都大原 1522年
食事が終わって、姉様は満足そうにお茶を一服している。皆も笑顔で満足そうだ。
「ちょっと皆に聞いて欲しい。これから姉様と今後について打ち合わせをするんだけど、俺も姉様も天照大御神様に天啓を賜っているよね。天啓の中には知らない方が良かったって思う様な天啓も含まれているんだ。俺も姉様も、そんな天啓は2人が背負えば良いと思っているんだけど。……だから、2人だけで打ち合わせをするんだ。それは決して皆を信じてないからって訳じゃ無い事を分かっていて欲しい」
姉様も頷いている。皆は何か言いたそうにしてるけど、言い出せなくて静まりかえっている。
「ではっと、私と慧仁は離れで話しをして来るから、皆は各々、休んでいて。慧仁行くよ。キヨはお茶をお願いね」
姉様は俺の手を引いて離れに向かう。俺も見た目以上に安定して歩けるんだけどなぁ。でも、まあ、悪い気はしない。姉様はいわゆるロリ顔で、永作博美様とか安達祐実的な王道を歩んでおられます。実際8歳なんだからロリもへったくれも無いんだけど。
部屋に着くと同時くらいに、お茶を持ったキヨが入って来て、お茶をお盆ごと置いて出て行く。下がったのを見計らって、姉様は徐ろに横になった。
「直座りの生活って疲れない?椅子とテーブルが欲しいわよね。あんたもゴロゴロしなさいよ、誰も見てないんだから」
それもそうか。俺もゴロゴロさせて貰った。うん、楽ちん楽ちん。
「へへ、良いですね」
「じゃあ、ゴロゴロしながら、まずは慧仁のゴールを教えて。最終的にどうなって欲しいの?」
俺が考える、今後の落とし所と言うか、未来像を語った。
「ふふ、私が予々考えてた落とし所と一緒だ。お互いに平凡だけど、先人の知恵は生かさなきゃね。先人で良いのか?うん、明治維新と戦後のGHQの政策を今の時代に落とし込む感じで、徐々にやって行こう。まずは、今の価値観を壊す所からだね」
ああ、そうか。やる事は明治維新に似てるよね。破壊して再構築か。ニヤニヤ。
「慧仁はあと1・2年我慢して。2歳児の行動範囲は限界が有るから、8歳児に任せて。ふふふふふ」
そうなんだよね、スーパーマンじゃないんだから。実際、行き詰まってたのは否めない。姉様のお陰で前に進めそうだ。
「動ける私が東日本をどうにかしなきゃだわね」
「そうして貰えると助かるよ。西日本は俺の口先でどうにか出来そうだし」
「そうなると、まず必要なのは……秘密基地よ!秘密基地を作らねば!」
起き上がり、口を噤み、空を見上げ、拳を握って、何かを決意した様な表情の姉様。破壊力抜群の可愛さだ。
俺は堪らず、
「姉様〜!」
と腰に抱きつく。
「お茶の交換に参りました」
スーッと襖を開ける尚子は、そんな俺達の姿を見て破顔する。
「あら、可愛い、ふふふふ」
お茶を交換して、何事も無かった様に出て行く尚子。絶対に裏で噂するぞ、あれ。
「慧仁、どこが良いかしら。秘密基地に相応しい所って何処かある?」
姉様は再びゴロゴロしながら、俺に聞いてくる。
「そうだね、秘密は別として、堺をベース基地にすると、俺も動きやすいかな」
俺も上向きに寝転がって、足をバタバタさせながら答えた。
「堺なら大名達を呼び寄せるのに便利で申し分ないかな」
「堺ね。そうなると日本海側は後回しね」
「貨幣の発行を考えると、佐渡の銀が欲しい所なんだよね。あと、北陸の一向宗、特に下間をどうにかしたい」
「分かるわ〜、下間。下間と蓮如のバカ一族の所為で、どれだけの人々が亡くなったと思ってるんだか。今のうちに絶対に潰して置きたいよね」
「俺もそう思っての先日の陛下の宣下なんだけどね」
「ああ、あれはナイスだったね」
姉様は俺に向き直り、グッジョブしてくれた。へへへ。……俺ヤバい、やっぱり精神が退行してるわ。
「じゃあ、ひとまず、慧仁は堺に秘密基地をお願いね。私はひと仕事してから、堺に向かうから」
「分かった、堺は任せて」
姉様との打ち合わせは、トントン拍子で進むから楽しい。
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