カウントダウン
@kunimitu0801
プロローグ
自分の横を機嫌良さそうに歩く少女をちらりと見て、僕は近くに知り合いがいないか再度辺りを軽く見渡した。
今のこの状況に僕は困っていた。……いや、大変困っていた。
僕は高校教師で、隣の少女は僕が教師を務める高校の生徒。
そしてここは県でも有数のショッピングモール。
二人とも私服であるとはいえ、他の教員や生徒に見られればすぐに正体がばれる。
見つかってしまえば生徒と交際しているなどと噂を立てられるか最悪生徒に手を出す最低教師などと誤解されてその結果僕の教師生活は終わりを告げる可能性だってある。
けれども隣の少女は生徒である前に僕の遠い親戚にあたる間柄で小さい頃から見知っている仲だ。
親戚と買い物に出かけるのは不自然ではない。
もし誰かに見つかったとしても、即座にそう説明して誤魔化せばなんとかなるだろうと思ったりもしている。それでも辺りへの警戒は怠らない。
「ユウ君。向こうに行こう」
そう言って手を取られた。
進む方向が少し修正されてそのまま手を繋がれた状態で歩き続ける。
この状態はとってもまずい。
いや、これでもまだ言い訳は通用するか。
「ユウ君。どうしたの?」
考え事をしている僕に気付いてか、ケイはそう尋ねてきた。
「いや、なんでも━━」
言葉が止まった。
いつの間にか腕を絡めてケイが僕に密着していた。
これはマズイ。この格好で親戚云々なんて言っても誰も信じてはくれまい。
「ケイ。あの店が良いんじゃないかな?」
動き出してケイの腕を離そうとしたが、ケイのしがみつく力が思いのほか強かったようで離れなかった。
「そうだね。まずはあっちに行ってみようか」
密着したまま僕達は再び歩き出した。
「あと九日だね」
ケイが機嫌良さそうにそう呟いた。
カウントダウンの日数がとうとう残り一桁に突入したことに気付き、背筋に寒気を感じた。
より一層身を寄せてくるケイの体温を感じながら、知り合いに出くわさないことを切に祈りながら道を進んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます