第39話 たまには違う角度からの世界についてなど
仕事柄、扱うものに意味を求めたがる。それが発するものが、何を語りかけてくるのか、考えたくて仕方がない。それを結びつけ、待っている人に手渡すことが、己の使命だと感じてしまうのだ。
それは間違いではないだろう。一つの形だろうと思う。たとえ真実のある部分だけだろうとも、きっと間違ってはいないのだ。
そこにあることが全てで、それ以上でも以下でもないものが、この世界の多くを占める。だから、意味を持たせることでそれが喜ばしいものになるのなら、どんどんそうして世界を潤せばいい。けれど関わる人を追い詰め、その心に痛みを突き立てるのなら、そんな戯言は切って捨ててしまうに限る。
結局は己次第だ。目の前にあるものに、何を求め、何を見出し、何を答えとするのか。だからこそ、私たちはそこに介入し、提案を続ける。もちろんそれが唯一無二だとは思っていないから、嫌がる人に押し付ける気も毛頭ない。世界を作りし神ではないのだから、当たり前といえば当たり前。しかし選択肢の一つであることは紛れも無い事実でもある。
自分の心に映るものに目を凝らし、心に染み入るものに耳を傾け、己に与えられた技術を使ってそれをつかみ出す。いいも悪いもない。それがその時の偽りなき姿。私そのもので、あなたそのもの。ただそれだけで、だからこそ許されるもの。
歪でも、不完全でも、それは純粋なる想いの結晶だ。ほんのカケラだと嘆くことはない。わずかな側面から見えてくるものは、もしかしたらありふれた全体像よりも、もっとずっと雄弁に、あるべき姿を教えてくれるものかもしれない。私はそう思って今日も物言わぬものと向き合っている。世界はどこまでも美しい。
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