第3話

 「何で、何でよ!」


 とある世界の、とある平原地帯。そこで彼女は、再度目を覚ました。


 理解が及ばなかった。そもそも、生き返りという現象に直面して、理解が出来る人間など、納得がいく人間などいないだろう。なにせ、誰しもに生き返ったという記憶がないのだ。初めての経験で、科学でも証明しようがない現象。そんな現象に平々凡々である秋奈が直面して、理解できる筈がなかった。


 だから彼女は、考えなかった。考える前に、死ぬことに決めた。


 彼女のすぐ側には池があり、その池の中央にある大木には多くの蔦が絡み合っていた。


 秋奈は、腰までの水位がある池に躊躇いなく入り、中央の木の下までたどり着いた。


 そして、絡まり合う蔦の間に自身の首を通し、秋奈は重力に身を任せて己の首を絞めた。


 水面に映る姿は、16年間見てきた篠右秋奈でも、先ほど殺したルーメンでもない、新たな姿だった。


 享年15歳、シグリール・ミレン。




 それからは、同じことの繰り返しだった。


 生まれ変わり、殺し、生まれ変わって、殺害し、生まれ変わると同時に、自殺する。


 享年24歳、レイラ・チャーロイズ。


 短刀で腹を切り裂き、死亡。


 享年6歳、いち一葉ひとは


 誕生日前日、アパート3階で火災を起こし、一酸化炭素中毒で、死亡。


 享年32歳、メイナード・オーウェン。


 手元に置いてあった拳銃で頭を撃ち抜き、死亡。


 享年16歳、アイン・ラグナル。


 屋敷の浴槽で溺れ、死亡。


 享年53歳、利根晶子。


 走行中の車と衝突して、死亡。


 享年12歳、エルナ・テトラス


 正気を失い、家族であろう人物に殺すよう頼み、体を破壊され、死亡。


 他90名、死亡。死亡。死亡。死亡。死亡。死亡。死亡。死亡。死亡。


 そして、再度秋奈は目を覚ます。


 つくねんと視神経を通して脳に伝わった景色を眺めながら、その瞬間、彼女は死を嫌った。

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