第30話 アリバイ
半信半疑の真田刑事の表情を見て、木村がリュックからノートパソコンを取り出し、アーカイブされた昨夜のYouTubeの動画を再生した。
真田刑事を含む3人の刑事が画面を覗き込む。僕の顔が画面中央の1番大きな場所に映り、その横に区切られたスペースに部員達の顔が並んでいる。たわいもない鉄オタトークが10分ほど続くと、刑事達は明らかに興味を失い、ある者は欠伸をし、ある者はうたた寝を始めた。真田刑事は魔法をかけられたようにうっとりとした表情でアリサを見つめている。
刑事達の態度の変化に気づいた木村は、すぐさま動画を早送りして、開始後29分のシーンまで進めた。
「今、この時点で深夜0時29です。モーちゃん、つまりピッカル君はまだ画面に映っていますね」
アリサから画面に目線を映した真田刑事が面倒くさそうに頷く。
今度はアリサが動画の再生速度を2倍に変更した。動画の再生時間が30分、45分と経過していき、2時間を超えたところで真田刑事が、
「わかった、わかったよ。確かにモモッチピッカルは部屋から出ていない。アリバイ成立だ」
と観念したように言い、僕の無罪を渋々認めた。鉄道研究会の部員から歓声が上がる。
真田刑事は舌打ちをすると隣にいた若い刑事に、
「ピッカルの所持品をもってこい。釈放だ」
と告げた。
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