第22話 「ハロウィーン!」
ちょっとやっかいな問題が起こってしまった。
小学校のハロウィンパーティーのこと。ほんの遊び心で、僕とチビは仮装をしてみた。
腹話術の人形の仮装だ。
揃って同じ青い半ズボンにサスペンダーと蝶ネクタイ。口の両端から顎にかけて縦に2本の線を書き、ほっぺを赤くメイクしただけ。元々同じ顔だ。僕がチビの背中に手を添え、まるで同じ顔をした腹話術の人形が2体。大きな人形が小さな人形を操っているように見せた。
2人揃って…、
「こんにちは」
「こんにちは」
「マネすんな」
「マネすんな」
「お前こそ」
「お前こそ」
頭を叩く”パコン!”
頭を叩く”パコン!”
首が伸びて「ヒャー」
首が伸びて「ヒャー」
ただそれだけ。それだけなのに、小学生にはウケた。子供騙し、とはよく言ったもんだ。
なにせ同じ顔で見事なまでの同じ動きと同じ言葉のシンクロ。初めてのペアルックもそれらを際立たせた。おかげでチビっ子たちに”キモカワ”と絶賛された。人によっては同じ顔に驚いて「特殊メイクですか?」と本気で尋ねられることもあった。何度も繰り返し披露するうち、どんどん人が集まり、一気に人気者になった。
しかし、問題はこれから。
注目を集めてしまったために、誰かが動画を撮っていたらしく、SNSにアップされたばかりか、ネットで話題になってしまったのだ。
2人揃って、
「こんにちは」
「こんにちは」
「マネすんな」
「マネすんな」
「お前こそ」
「お前こそ」
頭を叩く”パコン!”
頭を叩く”パコン!”
首が伸びて「ヒャー」
首が伸びて「ヒャー」
ここからは偶然のアクシデントが重なってしまった。
たまたま友達に「ユタカくん」と呼ばれて…、
「ん?」と振り向く。「なに?」
「ん?」と振り向く。「なに?」
たまたま居合わせた犬に「ワン!」と吠えられ…
「ヒャー!」とビックリ
「ヒャー!」とビックリ
揃って気まずくて…、
頭をポリポリ掻く。
頭をポリポリ掻く。
と思ったら…、
「へえっくしょん!」と大くしゃみ
「へえっくしょん!」と大くしゃみ
これをあまりに揃って同じ顔でやったもんだから、「面白い」と動画で投稿されてしまった。
ネットの世界で一気に拡散され、学校や近所でちょっとした有名人だ。チビは人気者になった。
こうなると、いつもいじめてくる子でさえも、「俺は”ユタカくん”と友達だよ」と周囲に自慢してへんなアピールをしてきた。「くん」付けして、急に優しくなって…。あきれたけど、まあ、これはこれでよかったかもね。
テレビの取材の申し込みがあったり、人気が出るのは嬉しいが、
犬巻から軽率な行動するな、目立つとバレてしまう、とこっぴどく叱られた。「契約書に書いてあります」とぴしゃり。
人の興味なんてそれほど続かない。やがて話題も収束していった。
しかし、ほっとするのも束の間…。
そのあと、さらに事態は大きく動く。
(つづく)
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