あとがき「過去からの手紙」

――斯くて道は未来へ続く。過去となりゆく今を乗り越えた彼らの前に、新しい道が開けるだろう。追憶のチョコレートは、希望のチョコレートとなるのだ。――

 というわけで、追憶のチョコレートは完結しました。ここまで読んでいただいた読者の皆さん、本当にありがとうございます。最後の方に冒頭の伏線を回収しまくったので皆さんが伏線を忘れていないか心配です。なので、1つ種明かしをしましょう。例えば優花の父がチョコレートを遺していたという話は、プロローグの「3歳から」という伏線の回収です。時間があれば他の伏線も探してみてください。

 小ネタの解説を一つだけします。くろがね市はもともと呉市なのですが、この世界ではくろがね市(呉市)は軍港ではなく元貿易港なだけのただの町なので商業や手工業を基軸産業として発展したという設定になっています。くろがねという市名は戦艦を改装した客船「あさま」から来ている、ということになっています。それ以前は呉だったのです。

 さて、今回この話を書こうと思い立ったのは恋愛ものが書きたかったからというのもありますが、筆者がチョコレートをよく作るからという理由が一番です。チョコレートならお菓子の中でも適度に奥が深い……と思ったのが大きな間違い、非常に奥の深い世界だったのでかなり調べました(入門〜中堅レベルの専門書も読みかじりました)。それでもチョコレートのことは全くわかった気がしませんから、非常に奥の深い世界なのでしょう。もっとチョコレートの描写を入れるつもりだったのに、チョコレートの描写が表面的なものになってしまったのはやはりその奥の深さについていけなかったからなんですかね。推敲するまでもなく書き始めてすぐにチョコレート要素は消え去りました。

 また、恋愛関連も恋愛経験が全くないときの私が書いたものですから子供が考えた大人の恋愛になっているのは百も承知です。私はそれを強みにするために努力しましたが、結局物語はリアリティを欠いたものになっているかもしれません。主人公たちは大人になれないまま大人になった子供たちで、遅く訪れた青春を謳歌しているというストーリーも、詰めの甘さを象徴していると思っています。

 ところでチョコレートといえば、これを書いた当時の筆者はバレンタインデーが大嫌いだったようです。自分が愛されていないことがよくわかるから、というのがその理由です。筆者の分だけ義理チョコがなかった年も1年や2年ではありません(というか義理チョコがもらえた年すら1年しかありません)でした。まあその話とも繋がっているかもしれないのですが、この作品のテーマは「繋がる愛」です。愛を繋げた主人公たちには、これからも明るい日々が待っているでしょう。

 光があなたをまぶしいほどに照らすのは未来だけです。過去の光はすでに照らす力を失っているのですから。では、すべての皆さんに明るい日々がありますように。また次の作品をお待ち下さい。


2021.7.31(2021.12.31追記)



※本作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件とは一切関係ありません。ご了承ください。

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追憶のチョコレート 古井論理 @Robot10ShoHei

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