第151話【女神との再会と迫られる選択】
祈りを捧げると辺りの景色が急にぼやけて段々と真っ白な世界へと変わっていく。
一瞬、目をあけていられない程の光を浴びた僕が目をつむり再び開いた時には目の前に記憶の中にあった巨木が立っていた。
「――頑張っているようですが、何か不都合でもありましたか?」
僕が巨木に気をとられていると後から優しい声がかけられた。
「女神様――」
僕が振り返るとそこには僕をこの世界へと導いてくれた女神が優しく微笑みを浮かべながら立っていた。
「実は――」
僕はまず先にこれまでの行動で多くの患者を治療出来た事に対するお礼を女神様に感謝した。
そのうえで蘇生魔法を使った事による魔力欠乏症になり一度は死んでしまった事を話した。
僕の話をただ微笑みながら聞いていた女神は僕の話が一段落ついた時、彼女の口から驚きの言葉が発せられた。
「あなたの事はずっと見守っていましたので起こった事柄は全て把握しています。
ですので今、あなたが悩んでいる事ももちろん分かっています。
治癒魔法が今までみたいに上手く使えないのでしょう?」
「はい。魔法自体は発動するようなのですが魔力の注入が始まらないのです。
あ、ですが一度だけいつもと違う形で発動したことがありました」
「それは彼女と抱き合っていた時の事でしょう?」
女神の指摘に僕は顔を赤らめて「見られていたんですよね?」と聞いた。
「人間の愛情表現のひとつですよね?
特に恥ずかしがる必要はないと思いますけど……」
ときどき失念するけど相手は女神様で人の愛情表現に関してどうこう思ったりすることはないようで淡々と話をしてくれた。
「彼女には一時的にあなたとリンク出来るように手を貸した事があります。
そのおかげで上手く繋げなかった魔力移行が出来ただけで他の人達に同じことは出来ません。
それで、あなたはこれからどうしたいですか?」
女神は僕の前に歩いて来て僕の周りをくるくると回りだした。
「ふむ。私が与えた能力は全て他人のために使ったようですね。
まあ、かなり偏った能力でしたので自分に使う事も出来なかったでしょうし、それがあなたの望みでもありましたからね」
女神が数周僕の周りを回った時、僕の身体が光を放ち熱を帯びていくのが感じられた。
「さて、これまで自分の事に能力を使わずに多くの人を救ってきたあなたに私からプレゼントをしたいと思いますが何か希望はありますか?」
「――願うならば能力をもう一度使えるようにして欲しいです」
「一度亡くなる思いをしながらもまだ人を救いたいと願うのですか?」
「はい。少なくとも僕にそれが出来る能力があるならばせめて目の前で倒れている人に手を差し伸べられたらと思っています。
その思いは今も変わりません」
僕の固い決意を汲み取った女神は少し困った顔を見せたがすぐに頷きながら微笑んだ。
「分かりました。あなたの想いを尊重しましょう。
ですが、今のあなたに以前と全く同じ能力を与えるのは少々好ましくないようです。
それは、あなたの中にもうひとりの生命力が混じっているからです。
あなたは一度亡くなった時にパートナーである方から魔力と共に生命力を分けて貰いましたね。
それについては問題ないのですが純粋にあなたの魔力だけではなくなったために今の状態がおきているのです」
「それではどういった形ならば出来るのですか?」
「まず、今後は蘇生は出来ないと思ってください。
次に使えばあなたは確実に魔力欠乏症を再発して死にますから……。
そうですね……当初はあなたの熱意に負けてあのような尖った能力を与えてしまいましたが、私としては今までのようなハイリスク・ハイリターンの治癒方法はやめてしまってもう少し身体に負担の少ない限定能力に改変した方が良いかと思います」
女神はそう言うと僕に3つの案を提示してくれた。
「ひとつめは性別限定の解除。
ふたつめは治療アプローチの変更。
みっつめは特定の人にしか使えないという限定選択。
になるわね。
どれが良いかよく考えて決めてね」
「それぞれ、どのくらいの治療が可能なのかを教えて貰えますか?」
「性別解除は男女関係なく治療出来るけれど自己治癒力を高めて治すために部位欠損や病気を
次に、治療アプローチの変更は魔力溜まりに直接手をあてて魔力を流し込む方法だったのを怪我の場合は患部に触れて治療することにより患部のみの治療となりあなたの負担が減る事でしょう。
そして、こちらも残念ながら病気を治す事は出来ません。
最後に使用者の限定ですが、これはあなたの魔力を特定の人に定期的に注入し続ける事によって怪我や病気になった時にそれまで注入した魔力を使って治療をする事が出来ます。
この方法の利点は本来ならばあなたの魔力消費を大量に使う治療でも分割して先に渡しているのであなたへの負担が少なく蘇生以外の治療は難なく出来るでしょう。
ただ、定期的に魔力注入をしなければならないので不特定多数に施す事は現実的ではなく限られた人数を守るための防衛策になります。
おそらく家族のみになるのが現実的かと思います。
あなたはどれを選択されますか?」
女神は微笑みながらも別の曖昧な方法は無いものとして僕に選択を迫った。
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