第143話【領主との面会】
宿に帰った僕達にアルフからの手紙が来ていた。
『――明日の朝、領主様との面会予定が取れたので準備をお願いします。
朝食後に馬車にて迎えを出しますので宿にてお待ちください。
――アルフ』
「これ、ギルドマスターからの手紙よね?
ものすごく丁寧に書かれてるけどやっぱりナオキが名誉爵位を賜ったからよね?」
「あはは、まあそうなんだろうけど、どうにも慣れないよね」
リリスの言葉に僕は力なく笑いかける。
* * *
――次の日の朝、朝食をすませた僕達はアルフの手配した馬車の中で手紙の内容について話していた。
「アルフさんに宛てた手紙の内容とほぼ同じだと思うけど、違うとすれば女王陛下がくれると言っていた屋敷の事が書かれているんだと思うんだ。
どのくらいの屋敷を想定してるか分からないけど普通の家程度じゃないだろうからいきなり用意出来るようなものじゃないし……。
まさか、今から建てるから出来るまで宿屋に泊まっていてくれとか言われないよな?
正直いってそんな大きな屋敷なんかいらないんだけど……」
「十分にあり得る話だと思うわよ。
私としてもそんなに大きな屋敷は必要ないんだけど一応貴族様だからね」
「ふう、まいったな」
僕がため息をつく頃には領主邸へと馬車は到着していた。
「――ナオキ様お待ちしておりました。
どうぞお連れ様もご一緒にこちらの応接室へお願いします」
屋敷に着くと案内係の侍女がすぐに僕達を応接室へと案内をする。
「アーロンド伯爵様は今アルフ斡旋ギルドマスターと面会されていますので少々お待ちください。
お飲み物を準備致しますのでソファにどうぞお掛けになってください」
侍女はそう言うと手際よく紅茶のカップを僕達の前に置いた。
「あ、美味しい……」
リリスが出された紅茶を一口飲んでそう呟く。さすが領主邸で出されるものということで紅茶さえも一級品であることに感心した。
* * *
「――待たせたな」
アーロンド伯爵はそう言いながら部屋へ入ってきた。
「申し訳ないけど私も一緒に話を聞かせてもらうよ」
伯爵のすぐ後からアルフギルドマスターがついて部屋へと入ってくる。
ふたりが目の前のソファへと座るとアーロンド伯爵が話しを切り出した。
「――手紙は拝見させて貰ったよ。内容については君たちの方がよく理解しているのではないかと思うが、念のためにすり合わせをしておこうと思う。
まず、ナオキ殿……と呼ばせてもらうが女王陛下から名誉爵位を賜ったそうだね。
それについての経緯は手紙とアルフから報告があがってるので割愛するとしよう。
次にカルカルに屋敷を準備するように指示が出ているのでアルフと相談したところ、カルカルの斡旋ギルドが管理している建物に条件的に適しているものがあるそうなのでそれを伯爵家が買い取って君に権利を渡す事としよう。
その際に建物の管理および身の回りの世話が出来る使用人を斡旋ギルドから派遣する事にしたので上手く使ってやって欲しい。
最後に給金だが、陛下から指示のあった金額を毎月斡旋ギルド経由で支払う事にするので必ず本人が手続きをする事。
なお、規定によりナオキ殿が万が一亡くなる、もしくは他国へ行くなどギルドへの報告が出来なくなった時点でこの契約は無効となる事を了承してもらう。
以上が私からの話だがなにか質問はあるか?」
アーロンド伯爵は僕を見ながら質問を待つ。
「おおむねありませんが僕達は明日の朝よりカルカルへ向かう予定にしています。
カルカルの斡旋ギルドへの連絡はどうなっているのですか?」
「それについては私の方で既に手配はしてありますのでご心配なく。
カルカルに着いたら斡旋ギルドへ報告して頂ければ担当の者が手続きと屋敷への案内をしてくれるように指示を出しております」
「それは早いですが、一体いつの間に?」
「実は昨日ナオキ様から渡された手紙を読んで直ぐに領主様と打ち合わせを済ませてギルド速達便をカルカルに向けて走らせたのです。
ですのでナオキ様が明日よりカルカルに向けて出発されても少なくとも2日、早ければ3日は早くカルカルへ到着しますので準備には十分間に合うはずです」
「なるほど。急がせる事になり申し訳ありませんでしたね」
「いえいえ、女王陛下のご指示でもありますし、何よりナオキ様には以前この町の多くの患者を治療してもらった恩もありましたからこのくらいの事はなんでもありませんよ」
アルフが出された紅茶を手にしながらそう答える。
「ああ、あの時は薬師ギルドの件とかでいろいろと迷惑をかけて申し訳なかったと思ってますよ」
「いいえ、ナオキ様の治癒魔法のおかげで不幸にも大怪我や大病をおった者が助かり、仕事に復帰できた事による経済効果は予想以上にありましたから斡旋ギルドとしては感謝しかありません」
「そう言って貰えると僕も救われます。
カルカルに行ってからどうするかはまだ決まってませんが、何か必要な事があれば斡旋ギルドにお願いしたいと思っていますので向こうのギルドマスターに話を通して頂ければありがたいです」
「分かりました。
では明日ナオキ様が出発されるまでに手紙を準備しておきましょう。
では早々に準備をしますので私はこれで失礼しますね」
アルフはそう言ってソファから立ち上がり、一礼をしてから退室していった。
「それでは僕たちもこれで失礼します。
いろいろと手配をして頂いてありがとうございました」
「うむ。貴殿の功績ならば当然のことだろうが向こうへ定住されても何かあれば相談にのるゆえにまた来るが良い」
僕はアーロンド伯爵と握手を交わしてから礼をして別れた。
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