第141話【女王陛下からの手紙】

 旅は予定どおりに進みバグーダを出発してから丁度5日後の夕方、領都サナールへと到着した。


 ここでも王家の紋章を掲げた馬車は簡単な確認次項だけで門を通過する事が出来た。


「では、サナールでは領主様とギルドマスターに挨拶をしなければならないので3日程滞在したいと思います。

 僕達は今日は直ぐに宿をとりますので明日、斡旋ギルドにてギルドマスターと面会をしたいと思ってます。

 ですのでバグーダと同じように御者の方と護衛の方は休まれてください」


 僕は町のほぼ中心である噴水広場で馬車から降りて御者長にそう告げた。


「分かりました。ナオキ様のご予定に合わせるようにとの命令を受けておりますのでそのようにさせて頂きます」


 御者長はそう答えるとお辞儀をしてから護衛達と共に僕達とは別の宿へと向かって馬車を進めた。


「さて、僕達は近くの宿に泊まって明日の朝に斡旋ギルドへと顔を出すつもりだけどナナリーはどうするんだい?」


「あ、私はこのままギルドに向かう事にします。

 お母様からの手紙を伯父様に見せたら泊まるところを用意してくれる事になってるそうなので、もしかしたら明日ギルドで会うかもしれませんけど残念ですが一旦ここでお別れですね。

 一緒に送り届けてくれてありがとうございました。

 ギルドに完了報告書は提出しておきますので明日ギルドの受付で報酬を受け取れるように手配しておきますね」


 ナナリーは僕から荷物を受け取るとそう言って頭を下げてから斡旋ギルドのある方角へ歩いて行った。


「ナナリーさん。領都はあまり来た事ないと言ってたけどギルドのある場所は分かってるんだね」


「そうね。まあ、アーリーさんから地図で教えられていたんでしょうけどね」


 その後、僕達は彼女を見送ると近くにある宿で一夜をあかした。


「――おはようございます」


 次の日の朝、目が覚めるとちょうど備え付けのポットから紅茶を注ぐリリスと目があった。


「ああ、おはよう。

 よく休めたかい?」


「久しぶりのベッドでしたからね。しっかり休めましたよ」


 ベッドから起きた僕はリリスの淹れてくれた紅茶に口をつけた後、着替えてからふたりで朝食をとった。


「――さて、そろそろアルフさんに会いに行こうか」


 頃合いをみて僕達は斡旋ギルドへと足を向けた。


「とりあえず昨日ナナリーさんが言っていた依頼の件を片付けてからギルドマスターを呼んでもらう事にするかな」


「そうね。それで良いと思うわよ」


 ――からんからん。


 いつものドア鐘が鳴ると直ぐに案内の女性が用件を確認に来る。


(相変わらずこのギルドは対応が早いな。さすが本部といったところだよな)


「斡旋ギルドサナール本部へようこそ。本日のご用件をお聞きしてもよろしいですか?」


「ああ、用件は2つほどあって1つは依頼の完了報告、もう1つはギルドマスターへの報告になるがギルドマスターの予定は空いてますか?」


「では、完了報告については2番窓口へお願いします。

 そちらの報告をしている間にギルドマスターへの確認を行いますのでお名前をお願いします」


「治癒士のナオキと言えば分かると思います」


「治癒士のナオキ様ですね。分かりました、では2番窓口へどうぞ」


 案内の女性はそう言うとギルドマスターへ確認するために奥へと入って行った。


「すみません。昨日、ナナリーという女性がバグーダからサナールまでの移動に同行する依頼の完了報告をしたと思うんですが聞いてますかね?」


「――ナナリー様の完了報告ですね? はい、昨日処理は完了しております。

 治癒士のナオキ様で間違いございませんね?」


「はい。間違いありません」


「では、こちらが報酬となります。ここに受け取りのサインをお願いします」


 僕は受付嬢の言われる箇所にサインを書いて渡す。


 そこに先程の女性が現れて応接室へと向かうように案内をしてきた。どうやらギルドマスターの都合はついたようで一安心をした。


「では、こちらで少しお待ちください」


 案内をしてくれた女性は僕達に紅茶を出すと仕事へ戻っていった。


   *   *   *


「――すまない、待たせたようだな」


 案内の女性が部屋を出てから約20分ほどたった頃にようやくアルフギルドマスターが現れた。


「少しばかり急ぎの案件があってそっちの指示を済ませてきたんだよ。

 それで、私に報告する事があるそうだがどういった内容かな?」


「はい。とりあえずこれを読んで貰えますか?」


 僕はそう言うと女王陛下からアルフに渡すように指示をされた手紙を取り出してテーブルのうえに置いた。


「これは……?」


「女王陛下からの手紙になります」


「なに!? 女王陛下だと?」


 アルフは手紙の裏に押してある蝋印を確認すると真剣な表情で手紙の封を開け内容を確認した。


 アルフはその手紙を読み終わると僕に向かって深々とお辞儀をしてから話を始めた。


「ナオキ様は女王陛下より爵位を賜られたのですね。

 叙爵の経緯は手紙に書かれておりましたので問題はありません。

 この後は領主様への報告をされると思いますので私も同席をさせて頂きます。

 すぐに領主様との面会を準備しますが今日中にとはいかないと思われますので最短で明日、領主様の予定が合わなければ明後日になるかと……。

 ですので今日のところは旅の疲れもあるでしょうからゆっくりと町の散策でもされてください。

 泊まっている宿を教えて頂ければ夜までには結果を連絡するように手配しておきますので……」


 ラルフはその場で僕に泊まっている宿を確認した。

 

「分かりました。では、そのようにお願いしますね」


 僕はそうラルフに伝えるとリリスと共にギルドを出てラルフの言われるとおりに町の散策をする事にした。

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