第109話【商隊主との交渉と駆け引き】
アーリーとの話を終えた僕達はその後、町長の屋敷を訪れて町を出る事の挨拶を済ませておいた。
やはり町長も残念がったが無理な引き止めはされなかった。
昔からある薬師ギルドの事を考えたうえでの判断だと言われ納得をした。
あらかた挨拶回りも終えた僕達は旅に必要なものを買うためにお店をまわっていた。
「移動に必要な馬車についてはアーリー様が探してくれると言われていたから任せるとして、1ヶ月にも及ぶ長旅になると思うから必要な物資は買いためておく必要があるな。
食料は当然、水も大量に確保しておかないといけないだろうね」
「そうね。私達個人で借りる馬車なら積荷にすればいいけど商隊に同行するなら出来るだけ荷物は少ない方が迷惑にならないでしょうからね」
「まあ、僕には収納魔法があるから保存食ばかりを買わなくても良いし、それが今回の交渉の切り札なんだけどね」
――まあ、そう言う事だ。アーリーとの話で僕達が言っていたアレとは収納魔法を使って商隊の食料関係を引き受ける事で荷台の荷物を商品中心にして商人の利益を上げやすくする交渉をするのだ。
2日ほど必要な物資を買い漁っているとアーリーから連絡があり王都へ向かう商隊が見つかったとの事でギルドまで来て欲しいとの事だった。
「思ったより早く見つかったんだね。さっそく会ってみようか」
僕達はアーリーの指定する時間に斡旋ギルドへと足を運んだ。
「依頼についてアーリーギルドマスターに呼ばれて来たのですが……」
「ナオキ様ですね。伺っておりますので第一応接室へとお願いします」
受付嬢に案内されて僕達が応接室へと入ると既にアーリーと商隊の主であろう初老の男性が打ち合わせをしていた。
「もしかしてお待たせしましたか?」
僕が聞くとアーリーは「いえ、時間どおりよ。まあ、お座りなさい」と軽く流して座るように促した。
「では、失礼します」
僕達がソファに座るとアーリーがお互いの紹介をかって出てくれた。
「こちらがあなたが探していた王都へ向かう商隊の責任者をしているガリウムよ。
彼の商隊は主にアーロンド領内で採れる鉱物を加工した商品や日持ちのする穀物を中心に王都の本店へと運んでいるの。
ただ、加工品はともかく穀物なんかは重量が
この穀物の量は本店から依頼されているので勝手には減らす事は出来ないからあなた達用に一台馬車を用意して商隊に同行させて貰うのが現実的かと話していたのよ」
アーリーの説明に僕達は頷くと「やっぱりそれがネックになりますよね」と言い交渉のカードを並べだした。
「まず、この話は僕の特殊な
僕はそう前置きをして収納魔法の事を説明し、その有効な運用のやり方をあげて交渉をした。
「……なんと、そのような物語の中にしか存在しないと言われる魔法を持っているとは驚くしかありませんな。
しかし、お話だけではとても信じられるものではありませぬ。
是非ともこの場にて見せて頂く事はできますかな?」
ガリウムは白い髭をさすりながら僕にそう告げる。
やはりいくら口で説明しても実際に自分の目で見ない事には信用は出来ないのだろう。
「もちろん良いですよ。アーリーさん、何か収納しても良いものがありますか?」
僕はアーリーに何か無いかと尋ねると彼女は部屋の隅を指差して「あの棚でいいかしら」と言ってくれた。
「では失礼して……『収納』」
僕が魔法を唱えると同時に部屋の隅に置いてあった重さ数十キロはあるであろう棚が置いてあった本や雑貨と共に異空間へと消えて行った。
「なっ!?」
「えっ!?」
ガリウムとアーリーはその瞬間を目の当たりにして驚きの声をあげたがリリスは以前から知ってるので特に驚く事は無かった。
「まあ、こんな感じですね。そして収納したものは排出の魔法で指定した場所に出す事が出来ます」
僕はそう説明しながら先程収納した棚を元の位置に戻した。
「はぁ!?」
「ええっ!?」
予想どおり荷物を戻した時にもしっかりと驚かれた。
「こんな具合に荷物を運ぶ事が出来ますので移動中の僕達の食料はもちろん、そちらの食料や水を僕が運ぶ事によって荷台に空きが出来るでしょうからそこに僕達を乗せて貰えたらと思いますがどうでしょうか?」
僕の提案にガリウムは口をあけたまま固まっていたが「あの、大丈夫ですか?」と声をかけると再起動した。
「それならば、確かに馬車の荷台に空きが出来るだろうから君たちふたり程度ならば乗せて行く事は可能だろう」
「そうですか。では料金はいくら払えばいいですか?」
僕の言葉にガリウムは少し考えてから言った。
「君たちと会うのは今日が初めてだ。
人物的にはアーリーギルドマスターが保証してくれるのだろうが今見せられた収納魔法とやらに全ての食料や水を入れて貰うのは万が一にも君たちが何かの理由で商隊を離れる事になった場合、私やその連れの食料がいきなり無くなるという危険がある。
誰しも『絶対に大丈夫』などと言えるものは無いと言う事だ」
「では、どうすればリスクを軽減出来ますか?」
「本来ならばありえないやり取りじゃが、今回運ぶ予定の穀物を半分ほど魔法にて運んで貰い万が一の保険としてその分の金銭をこちらで預からせて貰うのはどうじゃ?
もちろん、向こうに着いて荷を出して貰った時点で預かった金銭はお返しする事を約束しよう。
もちろん君たちふたりが乗るに穀物輸送の半分は必要ないが余裕のある荷台には予定外の荷を運ぶ事によって追加の利益を得る事が出来るじゃろ?
その利益分が君たちふたりを載せていく料金の代わりにしたいがどうじゃな?」
さすが長距離を移送する商隊の主だけあってリスクと利益取り方をよく考えていると言える。
「良いのでは無いですか?
その条件でこちらを信用して同行させて貰えるならば私達にも十分な利があると思いますよ」
横で話を聞いていたリリスがアドバイスをする。
「ん。リリスがそう言うならば僕は言う事はないよ。
ガリウムさん。その条件で良いのでよろしくお願いします」
僕がそう答えるとガリウムは「うむ。こちらこそよろしく頼むぞ」と握手を交わした。
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