第98話【リリスの臨時受付嬢講義⑥】
「身体の中心から暖かくなるのでそれを身体中に広げる感じで受け入れてください」
僕は魔力の注入をしながら説明をするとクレナは目を
「凄く気持ちのいい感覚です。
なんて言うか水に浮いていると言うかふかふかのおふとんに包まれていると言うかとにかく凄く気持ちが落ち着くような感じですね」
魔力注入時の感じ方は人によって違うらしく、リリスなんかは性的な感覚が強く出るらしく毎回顔を赤くしながら治癒を受けているのだがクレナはちょっと違う感じ方のようだった。
「これは凄く眠気を誘う治療ですね。今日はこれが終わったらそのまま寝ても良いですか?」
「ええ、良いわよ。
明日の朝に体調の報告をして貰えれば問題ないわ」
リリスがそう伝えるとクレナは安心してそのまま熟睡モードに入って行った。
「凄いわねこの娘、本当にそのまま寝ちゃったわよ。
安心しきっているようだけどナオキが危ない思考の人だったらそのまま襲われちゃうわよね」
リリスはスヤスヤと眠るクレナを見てため息をつくと「それじゃあ私達も部屋に帰りましょうか」と言ってクレナの部屋を出た。
「じゃあ私達も温泉に入ってから休みましょうか」
その後、僕達はそれぞれに温泉に向かってゆっくりと汗を流してから各自の部屋に戻ることになった。
「それじゃあ、おやすみなさい」
温泉からあがったナナリーは僕達に挨拶をしてから自分の部屋に入る。
僕達も部屋に戻るとリリスが紅茶を淹れてくれて甘いお菓子と共にゆっくりとソファに座ってから日課のお互いの状況を報告しあう時間となった。
「――思ったよりも順調にいってるみたいだね。安心したよ」
「そう見える?
だいぶ詰め込み研修をしているからあちこちに無理がきているみたいだけどね。
ただ基本的に能力がない訳じゃ無くて少しばかり常識……主に接客業としての基本ができていないのが気になるのと仕事の優先順位の付け方がまだ曖昧なのよね。
今はとにかく仕事のルーティンを身体に染み込ませて雑務は頭で考える前に身体が動くように調教してるところよ」
リリスはそう言うと紅茶に口をつけてから僕の報告を待つ。
「こっちはいつもとそんなに変わらない内容かな。
朝から一件ほど指の欠損患者を治療して午後に君の所で彼女を回復してから明日の予定を薬師ギルドで調整してきたくらいだね」
「ナナリーさんは上手く治療の説明は出来てるかしら?」
「まあ、もともと案内嬢をしていたから話すのは問題ないし、リリスが渡したマニュアルどおりに対応すれば特に問題なくこなせていると思うよ」
僕がナナリーについて伝えるとリリスは「なら、無理に私じゃなくてもナオキの助手は務まるって事?」と意地悪く聞いてきた。
「まあ、ナナリーさんもやる気で対応してくれてるし、今のところはそうだね。
でも……」
「でも……なに?」
この流れもすでにパターン化されそうなのだがリリスが満足するならば毎日でも言わなければならないだろう。
「僕の助手は君でなければならない事はないかもしれないけれど、僕のパートナーは君でなければ務まらない。
なぜならば、僕には君以上に大切に思う人はいないからだ」
「ふふっ。 知ってる」
リリスはその言葉を噛み締めながらニコニコと笑う。
その笑顔が僕にとって最高の幸せなのだと思い僕からも笑顔が溢れる。
お互いの気持ちが重なる必要な時間がゆっくりと過ぎていく。
「それじゃあ、私にもいつものメンテナンスをお願いしようかな。
明日も頑張れるようにナオキ成分をしっかりと補充しなくちゃね」
リリスは自分で言っておいて恥ずかしいのか照れ笑いをしながらベッドに横になる。
「クレナさんじゃないけど今日はこのまま眠りたい気分なの。
そのつもりでゆっくりと魔力を流してくれたら嬉しいな」
リリスはそう言うと僕の手を取って自分の胸にそっと添えた。
「了解。じゃあ君がよく眠れるようにいつもの倍の時間をかけて流し込むことにするよ」
僕はそう言って魔法を唱えた。
「――
僕はリリスの顔を優しく眺めながら手のひらに魔力を集中すると目を閉じていた彼女の頬が次第に赤く染まり始める。
「んっ」
リリスの身体が僅かに反応する。
「ゆっくり流していくから身体をリラックスさせて受け入れてね」
僕はそう言いながら手のひらに意識を集中していった。
「――そろそろ全身に魔力が満たされてくる頃だけど、まだ眠れないかい?」
魔力の注入をゆっくりといつもの倍の時間かけて行ったがリリスは眠るどころかモジモジするだけで眠れるようには見えない。
「うーん。ゆっくり長くが駄目なのかな?
ちょっと早く大量に流し込んでみるよ」
僕はそう言うと手のひらにいつも以上に集中して一気に流し込んでみた。
――ビクンビクン。
「ああっ! ぐっ……」
次の瞬間、リリスの身体が大きく跳ねたと思ったら
(しまった、やり過ぎたか?)
慌てて魔力の注入を辞めて手を離した僕は心配してリリスの様子を見るとそこには顔を真っ赤にして涙目で荒くなった息を整える姿があった。
「大丈夫だった?」
リリスは心配そうに覗き込む僕を涙目のまま
「馬鹿……」
リリスはそう言うとベッドから起き上がり着替えをしてからもう一度ベッドに寝転び布団を被った。
「やっぱり私にはクレナさんみたいに眠る事は無理みたいね」
リリスはそう僕に告げると恥ずかしそうに反対を向いて眠りについた。
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