第13話 怪我人が住む村

 そんなこんなで私達は、おじいちゃんの近くまで、こっそり近付きました。まだ大人達が、おじいちゃんを取り囲んでます。

 唾を飛ばし合いながら、言い合いをしてます。かなり面倒そうです。でもね、もっと面倒そうなのを見ちゃいました。それは畑です。


 畑といっても、きっと畑だった何かで、今は草がぼうぼうです。そこに、ちっちゃい虫がいっぱい飛んでます。まるで、モヤがかかったみたいです。


 凄く後悔してます。でも約束しちゃいました。頑張らないといけません。うぉ〜、やるぞ〜!


「そういう事だよミサ君。事件の臭いがするな」

「事件の臭いってより、腐敗臭?」

「ミサ君。先ずは証拠集めだ!」

「聞き込みって言いたい?」

「そうだ! 一に聞き込み、二に聞き込みだ!」

「カナ。それより依頼内容を聞こ」

「流石はミサ君。では、おじいちゃんに突撃だ!」

「突撃しないで! カナ!」


 うん、やっぱり嫌です。おじいちゃんへ近付く度に、ちっちゃい虫が増えます。ブンブン飛んで、凄く鬱陶しいです。おじいちゃん達は、よく話しをしてられるね。

 お口の中に虫が入るよ、息を吸うと虫も吸い込むよ、病気になるよ。


 とりあえず、虫除け魔法の出番だね。クサクサ草の臭いを使った、特性の魔法なの。

 よしよし、私達の周りだけ、虫が寄り付かなくなったね。わかってたつもりだけど、酷いモヤの一部だけ切り取ったみたいになって、少し違和感が有るね。


「だからさ、そんなの必要ないだろ!」

「そうだよ。爺さんは家に帰ってろ!」

「たびぃ〜の人ぉがぁ〜」

「それは誰だよ! 何処にいんだよ!」

「もういい加減にしてよ、おじいちゃん」

「たす〜けてぇ〜くれる〜」

「助けになんて来ないわよ!」

「そうだ! それより飯の事を考えなきゃ駄目だろ!」

「ちい〜さ〜い、おんなぁ〜のこぉ〜」

「だから! 誰なのよ、それ!」

「夢でも見てるんだろ? いつもの事だ」

「まごぉ〜より〜、小さぁ〜い〜」


 まだ口喧嘩が続いてます。こっちは違和感三昧なんだけど、気が付かないのかな? 変な人達だね。それにしても、おじいちゃんは遅いです。何だか、ほっこりします。


 たださ、このまま聞いてても、さっぱり事情がつかめません。役立たずさん達です。おまけに、臭いが風にノリノリさんです。おえってなりそうです。なので早く話しかけて、解決しちゃおう。


「おじいちゃん。約束通りに来たよ」

「おじょ〜さんかぁ〜」

「そうだよ。詳しい事情を教えて欲しいな」

「このちびっ子達は誰だ?」

「おじちゃんは怪我してるの?」

「お嬢ちゃん達には関係ないよ」

「あぁ〜るぅ〜よぉ〜」

「爺さんは黙ってろ!」

「たぁ〜すけぇ〜」

「爺さん、少し黙れ! お嬢ちゃん。大事な話をしてんだ、どっか行っててくれ」

「ちょっと! こんな小さな子に、何言ってんのよ!」

「なんだと!」


 口喧嘩に割り込んだら、返って収拾がつかなくなる悪い例になりそうです。面倒です。このまま通り過ぎたいです。でも、そんな事は出来ないよね。


 そして、こんな時に活躍するのは誰でしょう? それは、ミサちゃんです。ミサが手を打つと、パンって大きな音がします。おじいちゃん達は、驚いて喋るのを止めます。そして、ミサに注目します。


「私達の手助けが要らないなら、直ぐに此処から去ります。その前に、事情は話して下さい」

「そ、そうか」

「う、うん」

「いや、でもね」


 抑揚がなく、淡々と話してるからなのか、おじちゃん達はミサに圧倒されてる感じがします。大人を黙らせるミサは、とっても凄いです。


 おじちゃん達は、暫く唸ったり考え込んだりしてました。秘密にしなきゃいけないのかな? そんな事は無いよね? どうせ、悪い事が重なっただけでしょ?


 小さい動物に作物を食べられて、追い払おうとしたら怪我をして、そんなのが続いたから働ける人が少なくなって、畑は荒れ放題になったって所じゃない? 

 

 朝になると、そこらじゅうに死骸が有るけど、怪我であんまり動けないから、仕方なく畑に捨てちゃった。それで悪臭が酷くなって、小さい虫が湧き放題っと。当たりじゃない? 


 まだ、謎はいっぱい有るけどね。おじいちゃんとかさ。あの走りは普通じゃないし。

 それに私達を見る時の、大人達の視線ね。変な物を見た時の、何か嫌な感じ。流石にうわってなるよ。私の繊細な心が、ズタボロにされちゃうよ。


 こんな時には、ミサを見て癒やされるしか無いね。うんうん、真剣な顔のミサも可愛いね。

 私が見てるのに気が付いて、目が合うの。ひゃ〜ってなるね。湧き上がるね。


 それよりも、まだ話してくれないのかな? 結構な時間、妄想したよね? う〜ん、流石に困ったな。


「いい加減にして。話す気が無いなら、私達は行きます」


 おぉ、ミサがちょっと怒ってる。格好いいミサだね。でも、おじちゃん達の反応が、未だに変だよ。そんなに言いたくないのかな? それとも別の理由が有るのかな?


「いや、あの。え〜と」

「秘密にしなきゃ駄目ですか?」

「そうじゃ無いよ。お嬢ちゃん達には関係ないだろ?」

「私達は、おじいちゃんに呼ばれたんです。関係有ります」

「爺さん。余計な事して!」

「おじいちゃんは、どうなんです?」

「たぁ〜すけぇ〜」

「まったく、爺さんには困ったな」

「それは、おじさん達です。みんな怪我してるんでしょ? おとなしくしてなきゃ、治りませんよ」

「うっ、まぁな。そうなんだが」


 ミサでも駄目なら、もう無理だね。おまけに、またキーンって音がしてきたよ。

 この音は何だろ? さっきは、ミサが地面に触れたら収まったよね? 私が触れても、収まるのかな?

 いやいや、それどころじゃ無くてさ。何とかしないと。


「あのね、おじちゃん。何で話したくないの?」

「いや、そうじゃなくて。う〜ん、何ていうか」

「それならさ、私の質問に答えてよ」

「カナ? 大丈夫?」

「うん。ミサは、音を何とかして」

「わかった」

「うん? 音?」

「おじちゃんは気にしないで」


 そう、これなら大丈夫なはずです。ミサは心配そうに私を見てましたけど、今は地面に触れてます。

 そして、見るがいい! ここから解決の時間だ!


「畑を荒らしてるのは、ニーズヘッグとグーロ?」

「それにハギスもだ。何でわかった?」

「いやいや、おじちゃん。この辺には多いでしょ?」

「まぁ、そうだな」

「追い払おうとして、怪我しちゃったの?」

「そうだ。凶暴だからな」

「畑が雑草だらけなのは、みんなが怪我したから?」

「あぁ。畑仕事が出来なくて、困ってるんだ」

「この悪臭は、動物の死骸?」

「今は、処分を出来る奴が居ない」

「それで畑に捨てたと」

「仕方ないだろ!」


 うんうん、予想通りだね。これだけ聞けたら、後はおじいちゃんだね。話が通じればだけど。


「おじいちゃん」

「なぁ〜にぃ〜か〜」

「おじいちゃんがやって欲しいのは、村に動物を来させなくする事?」

「そうじゃ〜」


 よし、それなら簡単です。取っておきの方法で、っていやいや普通の動物避けだよね? あれ? 何でおじちゃん達は、これをやらなかったんだろ? まさか知らない? 嘘だ〜!


「カナ。多分この人達は、クサクサ草を知らない」

「え〜! 知らない人なんているの?」

「うん。クサクサ草は、カーマ大先生の研究成果」

「そっか。クサカラ草は?」

「それは、カナが品種改良したやつ」

「アハハ、そうだっけ?」


 カナのおかげで、状況が一変した。凄い。セカイも喜んでる。でも、やっぱりカナはどこか抜けてる。それさえ無ければ、大天才なのに。


「取り敢えず、おじちゃん達は家に戻って下さい」

「そ、そうか? なら、うん」

「いいか! お前達が勝手にやる、わかったな」

「ちっちゃい子に何言ってんの! 怪我しない様にね」

「わかってます。お任せ下さい」

「わ〜し〜わ〜、みとる〜」

「ねぇ、ミサ。おじいちゃんは、どうする?」

「見てるだけなら、邪魔にならない」

「そっか、じゃあ調べよう!」

「お〜!」


 謎のおじいちゃんに大人達の行動、色々と疑問は残ってる。けど、せっかくカナが話をつけたから、一先ずは作業をしよう。このまま何も無く済めばいいけど。何か有ったら、その時は……。

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