所属してた野球部が廃部になったから、女子小学生野球の監督になった。~え? 彼女たちが優勝できたら廃部撤回、ってマジですか!?~
あざね
オープニング
プロローグ え、廃部……!?
「野球部は、廃部だ」
「え……?」
高校に入学して間もなく。
退屈な授業を終えて、練習に向かった俺を待っていたのはそんな言葉。
先に部室にやってきていた先輩たちはみな、一様にうつむき震えている。桜も散り切った五月。これから次の大会を目指して、一致団結しようという時の出来事だった。
「どういう、こと……ですか?」
「我が鹿央高校の中でも、野球部はとかく弱小だ。これ以上、役立たずであるこの部活に資金を投じることはできない」
「そんな!? いくらなんでも、横暴だろ!!」
「悪いが、決まったことなのでな」
「…………うそ、だろ……!?」
淡々とした口調で語るのは、教員らしき人物。
彼はこれといった感情も見せずに、部室を出て行ってしまった。残された俺たち野球部員は、ただただ呆然と立ち尽くす。
全員が事態を受け入れられずにいた。
しかし、その中でもハッキリとしていたことがある。
それはこの瞬間に、俺たちの目標や生き甲斐、そして青春が消えたということだった。
◆
私立鹿央高校野球部は、お世辞にも強いとは言えない。
県大会でも毎年二回戦が良いところだし、最高成績も三回戦程度。ハッキリ言って、弱小と呼ぶのが正しいと思われた。
『坂本、どうして鹿央なんかを選んだんだ?』
中学時代のチームメイトは、そう俺に言っていた。
全国大会ベスト8に、ベストナイン選出。その実績のお陰か、俺に声をかけてくる野球名門校はたしかにあった。そちらを選べばきっと、甲子園大会を目指せただろう。
ただ、俺には思うことがあったのだ。
『どうせなら、強豪を倒して甲子園に行きたい』――と。
ずいぶんと調子に乗っていたと思う。
でも、それが成し遂げるだけの力があるという自信はあった。
だから俺は名門からの推薦を蹴って、地元の私立鹿央の門を叩いたのだ。
「それなのに……!」
通学路の途中にある河原に寝そべり、俺は歯を食いしばった。
拳を握りしめ、地面を叩く。とにかく悔しくて仕方ない。実力や怪我で道が途絶えるのは、まだ自業自得だと割り切れる。だけど、あんな終わり方はあんまりだ。
俺も、先輩たちも、誰もかもが納得できない。
それでも、いくら頼み込んでも決定は覆らなかった。
「はぁ……」
そんな感じで数日が経過して。
俺はこうして、ため息をつくのが日課になってしまった。
いくら頑張っても無意味。次第に、そんな諦めが胸の中に芽生え始めていた。
「もう、帰るか……」
毎日のように、河原で夕日が沈むのを眺める日々。
今日もいつもと同じように帰宅準備をしようと、おもむろに身を起こした。
その時だ。
「ふぅん、貴方が坂本昌磨くん?」
「……え?」
鹿央高校の制服を着た女子が、俺に声をかけてきたのは。
派手な金髪に、青の瞳。
おおよそ日本人離れした外見の彼女は、くすりと笑うとこう言った。
「貴方、野球が上手なのでしょう?」――と。
いったい、どういう意図なのだろうか。
俺が眉をひそめると、それを見た相手はまたおかしそうに笑った。
「貴方に任せたい子たちがいるの。もし、その子たちが大会で優勝できたら――」
そして腕を組みながら、こう続けるのだ。
「鹿央高校野球部復活の願い、叶えてあげる」
「え……?」
彼女が何者かは分からない。
それでも、嘘をついているようには見えなかった。
突然、降って湧いた希望。
俺がそれに縋らない理由は、一つもなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます