第33話 ワイバーンと異変

 ジィナと向き合い目を合わせようとするが、警戒されているからか落ち着きなく動くためなかなかできない。

 まずは警戒を解かないとはじまらないと、海斗はロイに声をかけた。


「ロイさん、ジィナさんを触ってもいいですか?」


「いいですが、俺の近くにいてくださいね」


「はい」


 ゆっくりとジィナに近づいて体の横に付き、鱗に覆われた体に触る。様子を見ながら優しく撫でると、広げていた翼を下ろした。

 その翼の根元を撫でてみると、気持ちいいのか「グルグル」と鳴いて体を擦り寄せてきた。


「ここが気持ちいいですか?」


 少し強めに擦るように撫でると気持ちよさそうに目を細めた。


「俺は何も危害を加えるようなことはしないです。もちろんロイさんにも。ただ少しお話をしてみたいだけなんです」


 手を止めずに話しかけると、ジィナは顔を海斗の方に向けてその瞳をジッと見つめた。


「何か俺の噂とか聞いてますか?ちょっと噂になっているみたいなんですけど」


(・・フン。まぁ噂は確かに聞いているけど、ワタシそうゆーの興味ないから。あと、そこじゃなくてもう少し後ろを撫でてくれる?)


 頭に響いた声は、海斗が思っていたより若く高い声だった。今まで会った中で1番若いだろう。


「あ、はい。この辺ですか?でも噂はやっぱりあるんですね」


(んー、あ、そこそこ。そうね、変わった子がいるとは聞いたわね。あと噂といえばノースヴェルダン付近の森が最近騒がしいみたいね。ドラクが言ってたわ)


「ドラクさん?」


(えぇ、同じワイバーンでイストゥマラの方の森で暮らしてるわ)


「そうですか。物騒ですね」


(そろそろあなたたち騎士団が動くんじゃない?次は背中をちょっと強めに撫でてくれる?)


「はい。じゃあゼノンさんに聞いてみようかな。何か知っているかもしれないですし」


(そうね。ところで、あなたはまだ誰とも契約してないみたいね?そろそろしてみたらどうかしら?)


「レベルが低くて霊力が足りなかったので。とにかく今はレベルを上げるために『対話』をたくさんしてます」


(ふーん、そう。まぁ高くはないわね。でも今なら妖精ならできると思うけど)


「本当ですか!?あとで『ミステ』で確認してみます」


(まぁ頑張って。ワタシはそろそろ戻るわ)


「ありがとうございました」


「終わったみたいだね。ジィナありがとう」


 ロイはジィナの体を最後にひと撫でして飛び立つのを見送った。


「うまくできたみたいですね。さて終礼の時間になります。行きましょうか」


「はい。ありがとうございました」


 終礼後、海斗は先ほどのジィナの話をゼノンに聞いてみた。


「ノースヴェルダンの森?」


「はい。ジィナさんがワイバーンの知り合いの方に聞いたそうなんですが、ノースヴェルダン付近の森が騒がしいと」


「聖獣たちの間でも噂になっていたか」


「じゃあやっぱり・・」


「あぁ、魔獣たちが荒れているようだ。住人にも被害が出ている。それについて現在情報を集めているところだ。もうすぐ『ムニン』が戻ってくる。『ムニン』の情報を精査して隊の編成、そして明日中に視察に出る」


「ゼノンさんが忙しそうだったのはこの為だったんですね」


「本当は2、3日後の予定だったんだが、被害が拡大しているみたいでな。急で悪いが、海斗にも視察に行ってもらう」


「えっ!?俺もですか!?」


「いい経験にもなるし、『魔獣の森』もまだ入ったことないだろ?ロイも行くから大丈夫だ」


「わかりました。準備しておきます」


 話が終わったところでロイが2人の元にやってきた。


「お疲れ様です団長。今から海斗くんのステータスの確認をしますが、団長も一緒にいらっしゃいますか?」


「そうだな。ピンズも黒の三角形トライアングルに変わったみたいだしな」


「あっ本当だ、いつのまに。気づかなかったです」


「確か昨日見たときはもう黒に変わってたと思いますよ」


「今度から寝る前に確認します」


「そんな気にすることじゃねぇが、自分の力がどのくらいかは把握しておけよ。いざという時に痛い目にあうからな」


「はい」


 ゼノンとロイと一緒に共同スペースにやってきた海斗は、『ミステ』にピンズをセットした。


名前:志麻海斗


年齢:18歳


種族:人間


性別:男


誕生日:2月14日


レベル:25


知力:42


体力:55


霊力:68


コミュニケーション力:118


「レベルがこんなに上がってる」


「ゲニウス様との『対話』もあったから一気に上がったんだろ。霊力も人並みには上がったな」


「これならそろそろ契約もできますね」


「本当ですか?ジィナさんにも言われました」


「そうだな。視察で森に入るからチャンスがあったら挑戦してみるといい」


「はい。この数値は上限はいくつなんですか?」


「測定できるのは999までだ。それ以上は計測できない。そこまでいく奴はなかなかいないがな」


「なるほど。ゼノンさんやロイさんのステータスは見せてもらうことはできますか?参考までに見てみたいです」


「あぁかまわないが、そんなにおもしろいもんじゃないぞ」


「団長のがおもしろくなかったら、俺のはどうなるんですか。団長のあとは嫌なので俺が先にしますね」


 そう言うとロイは自分のピンズを『ミステ』にセットした。

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