悠木の相談②
「あ、圭人」
図書室から教室へ戻る途中、藤沢と廊下でバッタリ出くわした。
「おう、瑠偉。もう四条には言ったのか?」
「うん、今」
会話の内容からして、きっとさっきのあの悠木の衝撃相談の事だろう。
「そうか。そんな訳だから、俺達も協力してやろうぜ、四条」
やはり、悠木の言葉は嘘でも冗談でもなかったらしい。
ついでに言えば、俺の耳も頭もおかしくはなかったらしい。
・・・・おかしいのは、コイツらだ。
俺は2人の顔をまともに見る事もできず、
「悪い、俺ちょっと急ぐから」
と、そのまま急いで教室へと戻った。
つーか、なんなんだ?
どういう事だよ、一体?
悠木が夏川を好きなら、それはそれでもう仕方ない。
俺だって、きっぱり諦める。・・・・すぐには、無理かもしれないけど。
でもっ!
なんだよ、あの藤沢の態度はっ!
あいつの夏川への想いって、その程度のもんだったのかっ?!
それとも、悠木への忖度ってやつなのかっ?!
バカじゃねぇのっ!
夏川の気持ちは、どうなるんだよっ!
何とか気持ちを切り替えて授業に集中しようとするも、モヤモヤとした気持ちが隙あらば集中力を攻撃してくる。
お陰で午後の授業のたった2コマだけで、俺はグッタリと疲れ果てていた。
【今日課題見に行く】
ピコンと、俺のスマホが悠木からのメッセージを受信する。
・・・・それとこれとは別だ、ってか?
メッセージを前に、俺は大きな溜め息を吐いた。
確かにな。
俺達受験生にとって、この時期の時間は1分1秒だって貴重な時間だ。
でも・・・・
暫く迷って、俺は悠木にメッセージを返信した。
【うん】
それとこれとは、別。
今俺は、俺のやるべきことをやる。
それに集中しようと。
でも、待てよ。
家に戻り、悠木を待ちつつ課題に取り組みながら、俺はふと思い出した。
『ああ見えて、あいつは意外と繊細なんだ』
俺が悠木に振られたと勘違いして動揺しまくってた時、藤沢は言ってなかったか?
確かに、悠木は繊細だと、俺だって思ってる。
じゃあ、今のこの状況って、一体なんなんだ?
悠木が夏川に告白をするって事は、自動的に俺は振られた事になるよな?
振った相手の家に、普通の精神状態で来られるような奴じゃ、ないぞ?
俺の知ってる、悠木瑠偉って奴は。
おまけに。
夏川への告白の相談を、よりによって俺にするって、どういうことだ?!
俺の知ってる悠木瑠偉なら、そんなこと、絶対にしないはずだ。
じゃあ・・・・この状況って、一体・・・・?
「しじょー?」
「ん?」
「全然進んでない」
「あ、ああ・・・・って、ええっ!お前、いつの間にっ?!」
いつの間にか、悠木が机を挟んだ俺の前に座っていた。
「・・・・メッセージ送った。ノックもした。しじょーも返事した」
「えっ!」
「・・・・大丈夫か?」
心配そうな顔で悠木は俺を見るが、正直言って俺は、悠木からのメッセージを見た事も、ノックの音を聞いた事も、それに対して返事をした事も、まるで覚えが無い。
「今日は、帰る。しじょーは、少し休んだ方がいい」
そう言うと、悠木はそのまま帰って行った。
俺、疲れてるのか・・・・?
その場に体を投げ出し、ぼーっと天井を見上げる。
せっかく来てくれたのに、悠木に悪い事したな。
ようやく、そんな当たり前の事を考えられるようになった時。
スマホから、コールの着信音が鳴りだした。
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